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頂き物のニスの味がする箸を、二時間ばかり洗って居る
頂き物のニスの味がする箸を、二時間ばかり洗って居る
正気を取り戻した母親は、結局、警察に出頭することもなく、日常へと回帰しました。
クマもトラもいない、当たり前の日常。
しかし、そこには失った我が子もいませんでした。
それでも日々の暮らしを取り戻そうと、しばらくぶりに自炊をした彼女は、今まで使っていた箸が無いことに気付きます。
そう、箸はルンバに乗せたまま、何処かへ失くしてしまったのでした。
新しい箸を探して出て来たのは、お土産か贈り物か、貰ったまましまっていた箸。
それは大人用の箸で、本当なら、我が子が大きくなった時に使えるよう、大事にとっておいたものだったのです。
箸を洗っている内にそれを思い出した彼女は、そのまま、無心で洗い物を続けるのでした。




