後記
以上で23首、それぞれについて解説した。
現代短歌批評は、作者の生い立ちや状況など、バックボーンを意識して行うことが常道とされており、覆面歌人への評などは歌会のお遊びで行う程度のものだ。それとて、仲間内であれば歌人の正体を推察しながら読むことになる。歌評を行う者の悪癖として、新人の歌集を評するに当たっても、その背景や環境を多少なり調べてしまう。
これは短詩形において、可能な限り誤読を避けるためという理由もあるが、どれだけ言い繕っても、やはり詩を評する上では悪癖と言う他ないだろう。
今回は作家自身を全く知らないどころか、そもそも詠み人知らずで、調べる手立てもない状況での歌評となった。これは短歌に作者という不純物が入らない点で、大いに価値があったように思う。今後出版される全ての歌集は、歌人の名を削り取ってから書店に並べるべきではなかろうか。
ただ、作者の情報がない以上、歌評、詩評は評者の心の内を映してしまうものでもある。今回は23首を評者の解釈によって解説したため、作者の意図とは外れる箇所もあっただろう。もし作者が存命しており、何かの機会にこの歌評を読むことがあったとすれば、その点、予め詫びておきたい。
◆評者1




