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ヴァーチャル歌評 『人は右、車は左』  作者: 住之江京
◆評者1

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菜の花や(字足らず)


 菜の花や(字足らず)



 完全にナメているようにも見えるが、流れからして、この「菜の花や」は、「菜の花や月は東に日は西に」(与謝蕪村)からの本歌取りなのだろう。月と太陽はひとつ前の歌にもあるが、こちらは夕暮れの空に貼り付いた点と点を結び、菜の花を中心とする、無限よりは狭い範囲を切り取られた一枚の絵となる。意図的に字足らずとしているからには、「これだけで十分」ということなのだろうが、一体どういうことなのか。菜の花の周りの景色は、読者が想像しなければならない。それも、与えられた情報だけで確定する景色を。

 黄色い菜の花が西日に赤く染まっている風景。しかし、舞台は一面の花畑ではなく、人と車の在る、町の中だろう。人工の光に溢れた街中が夕陽程度で赤く染まることはないから、この赤はきっと、人の血だ。車が人を撥ねた交通事故。何故夕陽で事故が起きたのかといえば――夕暮れ刻。辺りが暗くなるのに加え、古い信号機は西日が差すと、どの色が光っているのか、わからなくなることがある。だから、事故現場はそんな小さな町の交差点。

 血に染まった交差点と、慌てふためく人や車を、血飛沫を浴びた菜の花が眺めている。

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