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竜王のいる異世界  作者: 土師 冴来
一章―異世界来訪編―
15/116

1章

15

――――



「自信満々に笑うから自分のお金かと思ったら…」


先程のアウローラとのやり取りを思い出してむすっと口元を引き結ぶマリに、けらけうらと笑って小袋をお手玉のように弄びながら後で返すさ、と気楽に言うチェザーレ。


そのまま城の門を出て、目の前に広がる十字路の右、左、正面を順番に指しながら


「右に行けば貴族の屋敷がある貴族街だ。警邏の兵士も貴族の子飼いのが多い。んで、左に行けば冒険者ギルド、あとは宿屋と歓楽街だな。最後の正面はまぁこっからでも分かるか、商店が立ち並ぶ大通りだ。」


チェザーレの言葉につられて左右を見た後に、正面に目を向けたマリの視界いっぱいに広がる石畳の通りの左右には沢山のお店が立ち並び、元気な声で呼び込みをしていた。


「…すごい…!」


通りの真ん中は馬車がゆっくりと歩き、店の前には多くの人が楽しそうに買い物をしている。

見慣れたパンや、見慣れない道具、食品などがここからでもいくつも見える。


「さて、大体のものは城の連中が用意してくれるだろうから…まずは見て回ろうぜ。」


チェザーレの言葉に、キョトンとした後にはたっと気づくマリ。

昨日国王は「路銀と旅装を用意する」といっていた。

旅などしたことが無い身ではあるが、食料や調理器具などあった方がいいぐらいは分かる。

自分を気遣って外に連れ出してくれたのもまた事実なので素直にそれを受け取ることにした。


「護身用の武器、は俺の牙か爪でいいか…とりあえず魔法道具屋探しがてら歩いてみようぜ。」


さらりと聞きなれない言葉を聞いたような気もしたが、目の前の街並みを歩いてみるという好奇心に負けて頷くマリ。

ふと、チェザーレを見上げるといつもの綺麗な顔ではなく、くすんだ茶髪の地味な顔になっていた。


「…目の色は変えないんだね…」


「ん?ああ…目の色は精霊に愛された証だからな、余程のことが無いと変えないんだよ。ローウェンやアウローラは氷の精霊フラウとセルシウスに愛されてるからアイスブルー。アイリアは風の精霊シルフ。国王はちょっと変わってて森の精霊ドライアドの加護があるんだ。」


魔力も食うしな、と肩をすくめるチェザーレを見上げつつ、その理屈で行くと目の前の薄い紫の瞳は何になるのだろうと首を傾げるマリ。

それに気づきながらもはぐらかすように自然にマリの手を取り、歩き出す歩き出すチェザーレ。


「あ、ちょっ…!」


紫は星の加護。この星を見守る母なる星竜、ジルヴァーナから受け継いだこの世界で最も強い者に贈られる加護。

この事実は、マリはまだ知る必要は無いと判断した。





上機嫌にその紫の瞳を細めながら歩くチェザーレ。

彼の片手にははぐれないようにと繋いだマリの小さな手。

もう片手には大きな串焼きが握られ、香ばしい匂いを振りまいている。


「あの…ちょっ…ねえってば!」


後ろから聞こえる抗議と、引いていた手が引っ張られ、マリが足を止めたのだと気づいて振り返る。

片手に野菜の串焼きを握り、むすっとした顔でチェザーレを見上げるマリ。


「どうした?やっぱり肉がよかったか?」


「違うそうじゃない…本屋さんがあったの。これ食べたら見に行きたい。」


店の前まで溢れ出した本の山が見える店を串で指しながら言うマリに、いいぞ。と気軽に答えて大きな串焼きをぺろりと平らげるチェザーレ。

残った串は火の魔法で一瞬にして燃やし尽くす。

ぎょっとする周囲の人になどお構い無しのその姿に、握られた手を振りほどくたくなるマリ。


野菜の串焼きは見たこともない見た目の野菜だったが、食べてみるとピーマンのようなもの、玉ねぎのようなもの、ナスのようなものと、キノコだった。

シンプルに塩とバターで味付けしてあり、とても美味しかった。


もぐもぐと食べながらこの世界のお金について考えるマリ。

銅貨10枚が銀貨1枚、銀貨10枚が金貨1枚、金貨100枚が白金貨1枚という数え方らしく、パン1個が銅貨2枚、今の串焼きも1本銅貨2~4枚程だった。

庶民は精々銀貨までの金銭取り扱いで、金貨は商人や貴族など、白金貨に至っては国の取引等で用いられるもだという。

アウローラから渡された小袋には、ぎっしりと金貨が詰まっていた。

これでは買い物もろくに出来ないと、チェザーレがぼやいていたのだ。

大通りに入ってすぐにあった大きな雑貨屋でそれに気づいたチェザーレは、店主に交渉して金貨1枚を銀貨9枚と銅貨10枚に交換してもらっていた。代わりに小さな鳥の髪飾りを購入していたのを見ていたマリ。


そのまますぐ近くの串焼きを売る屋台で串焼きを買い、今に至る。

もぐもぐと口を動かしながら今までを振り返り、食べ終わった串をどうしようかと思案していれば、いつの間にか肩に顕現していたエンがぱくりと食べてしまった。


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