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竜王のいる異世界  作者: 土師 冴来
一章―異世界来訪編―
1/116

序章


1

―――


ぺたり、ぺたりとゆっくりとした裸足の足音が響く。

音を置き去りにしたような静寂の中で酷く響く足音を立てながら、白亜の宮殿を進むのは深い紫の瞳と足元まで届きそうな程に長く燃えるように波打つ豪奢な赤毛が映える、金の薄いドレスを纏う美女。

ひとつのドアの前で足音は止まり、ほっそりとした白磁の腕が豪華なドアノブに触れ、入室の許可など求めないままに僅かに力を入れて押し開く。


「妾の可愛い坊や?起きているかしら?」


艶のある声を掛けながら室内に滑るように入り、奥に鎮座するベッドへと視線をやる。


「母上、俺はもう坊やという歳では無いのだが…」


もぞりと掛布が動き、眠そうに顔を上げた青年が答えた。

母と呼んだ女性と同じ燃えるような赤毛と整った顔立ちは不機嫌に歪められている。

ごそごそとベッドから降り立ち、ゆっくりと伸びをする青年は歳の頃は20歳前後、スラリとした長い足と細身ながらも鍛えられたような長身をシンプルなシャツとズボンで包み、淡い紫色の双眸を母へと向けた。


「惰眠を貪るばかりの息子なんて、坊やで十分よ。」


ため息混じりに言う母に肩を竦めて返す青年。


「星竜王国の異界の門が開いたわ。落ちてきたのは4人、まだ子どものようね。当代の国王は度量のある人間だから問題はないとは思うけれど…気になるの。見てきて頂戴。」


とても悩ましい、とばかりに眉を寄せてわざとらしく虚空を見ながらさらりと告げられた言葉に、青年も同じく眉を寄せた。

母の言葉はこの世界の理を担う。

そして、彼女はそれに縛られるが故にこの宮殿からは容易に動くことは出来ない。

浅く息を吐いてお願いと言う名の命令に頷き、踵を返して大きなバルコニーのある窓へと向かう。

そのまま窓を開けて1歩踏み出してから母を振り返り、首を揺らす程度の一礼をして勢いよくバルコニーから飛び降りた。

女性はそれを止めるでもなく悠然と笑みを浮かべて見送り、そっと窓に歩み寄る。

ごぉ、と風ではない熱風が髪を舞いあげる中、バルコニーのはるか先を羽ばたくのは煌めく深紅の鱗と燃え盛る炎の鬣を持つ炎竜。その姿を見て、笑みを深めゆっくりと窓を閉めた。


「異界からの落し子なんて、300年ぶりぐらいかしら…?当代の竜王は、どう対処するのかしらね?」


くすくすと笑いながら誰に問うでもなく呟くと、足元の髪がゆらりと揺らめき、子犬ほどの大きさの1匹の赤い蜥蜴がぺたぺたと足音を鳴らして現れる。


――よき経験になればよいのだがな…――


女性より余程心配そうに言う蜥蜴に笑みのまま視線をやり、膝をついて抱き抱えながらそうね、と囁いた。




――――――――

初めての投稿になります、拙い作品ではありますが、どうぞよろしくお願いします。


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