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女の子が横に眠っていても一心不乱に眠りつづけ、朝まで目を覚まさないことってあるんですか?

新たな時空が運ばれてくるまであと4日。

3日目の朝が訪れる…

千葉城から死神との決戦に使用する武器を持ち出した俺達は一旦奈々のマンションに帰る。

移動手段として初めてバイクを使用したことや奈々の超記憶症候群という新たな能力を知るところとなり俺たちの過去に関して新たな発見もあった。


今日一日だけでいろんなことがあった。

疲れ果てたふたりは帰り着くなり風呂に入る、食事を作る、食べると言った超日常的な動作に没頭した。


久しぶりのライディングに加え後席に奈々を乗せていたこともあり緊張していたのか俺は夕食後仮眠のつもりで横になったベッドで朝まで寝入ってしまった。

その夜はこれといった夢を見ることもなくぐっすりと眠りにつけた。


深い眠りを貪った俺が次に目を覚ました時に目にしたものは…。

ベッドに横たわり冷ややかな目で俺を見る奈々だった。


「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す! お目覚めですか? 雅樹さん…」

「あ、おはよう奈々」


「雅樹さん? 随分ぐっすりとおやすみでしたね? 良い夢でも?」

「いや…夕べは夢を見ることもなくぐっすりよく眠れたよ。いろいろ在ったから疲れたのかな?」


「ふ~ん…そうですか…」

明らかに不機嫌な奈々。


「ちょっと仮眠のつもりだったんだけどそのまま寝ちゃったみたいだな。奈々はあれからどうしてたの?」

「…」

無言の奈々。

が、やはり明らかに気に入らない顔をしている。


「ん? どうした奈々?」

「奈々があれから何をしていたのか知りたいんですか? 雅樹さん?」


「あ、ああ」

「では教えて差し上げます。奈々はあの後、少し書き物をしてそれから雅樹さんといろいろ~お話をしようと思ってたんですけど? 気がついたら雅樹さんはおやすみになってました~」


「そっか、ごめんごめん」

「…」

また無言になる奈々。

無言でじーっと見つめ、一寸も目を逸らさない…。


「雅樹さん? 奈々はそう言うことよくわかりませんが…。普通、女の子が横に眠っていても一心不乱に眠りつづけ、朝まで目を覚まさないことってあるんですか? ん?」

いつもの如く小首を掲げて可愛く言うが…目は笑っていない…。


「…」

今度は俺が無言になる。

寝起きで頭が良く働かず、気に入らない顔をする奈々になんと言うべきか全く浮かばない…。

いわゆる朝から大ピンチだ…。


「それは奈々に魅力が無いからなんでしょうかね? 雅樹さん?」

「あ、いやそんなことは…」


「『そんなことは…』なんですか? ん?」

「そんなことはないけど…」


まずいパターンだ…。

「『そんなことはないけど…』なんですか?」

「いや、昨日はいろいろあって疲れた、みたいな?」


「奈々も一緒に行動していましたが?」

「だよね~って奈々はまだ飛び切り若いだろ? 比べられても…」


「雅樹さんはとっても紳士なんですか? 雅樹さんは女の子が横に眠っていても何もしないとても理性的な男性なのですか? 雅樹さんはどんな女性が無防備に身を任せて眠っていてもこのように指一本触れないのですか? ん? 例えばどんな女性であったら…夜も眠れなくなるのでしょうかね? ん? ん? ん?」

「…」


ん? を三連打しながら次第にその顔を近づけ…鋭い観察が始まる。

奈々の探究心から逃げ切れそうにない…。

たぶん奈々は夕べから理論武装し、目覚めた俺にぶつける気満々で…あまり眠らずに目覚めるのをジッと待っていたのではないだろうか…。 


「…」

上手い言葉が思いつかなず最悪なことに無言となる俺。

「なぜ…無言なのでしょう…」

奈々がますます不機嫌になる…。

眉が上がり目が昼下がりの猫の様に鋭くなっている…。


なぜ朝からこんな目に…。

しかしこのまま無言は最悪の事態、喉元ガブリっを引き起こしかねない。


「じゃ、じゃあ逆に奈々はどうして欲しかったの…かな?」

苦し紛れの一言。


「え、あ、え~っと…あの、奈々は…」

真っ赤になって言葉に詰まる奈々。

猫の目が段々と真昼から夕暮れに変わっていく…朝になったばかりだと言うのに…。


「雅樹さんのバカ…奈々に意地悪言って…」

そう言うと口元まで布団をかぶり胸元にすり寄る。


「雅樹さん…もうあまり時間がないから…ふたりの時間を大切にしたいの…」

小さな声でそう囁く。


「そうだよな…ごめん」

俺は奈々を胸に強く抱きしめた。

「うん…」

奈々が呻くようにうなずいた。


残された時間の中で死神の大鎌をかわし漆黒の津波に飛び込む手段を考え出さなければならない。


そして…愛おしい奈々と過ごす愛おしい時間を永遠に心に刻み込むのだ。

現実世界に帰ってしまえば意識野からは排除されてしまう異空間での記憶。

しかしセラの存在がふたりに微かな希望をもたらした。


セラは無意識の領域、つまり潜在化には異空間での記憶も刻まれていると言った表現をした。

彼は異空間での俺達の心のやり取りを察知していた。

それはすなわち異空間での記憶も無意識の領域に残っていると考えて大きな違いはないだろう。


異空間で過ごした俺達のかけがえのない記憶は無くなってしまうわけではないのだ。

愛する者への想いが完全に消滅するわけではないのだ。

俺はそこにわずかな希望を見ていた。


奈々を、奈々と過ごした時間を失いたくない。

愛する者を失いたくないのだ…。


異空間に新たな時が流し込まれるまであと4日…。

奈々と俺は残された時間をゆっくりとそして全力で生きていた。




 




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