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俺は願う この天使と共に在らんことを

千葉城を後にし奈々の穴のマンションに向かうふたり。

雅樹の脳裏によぎる奈々への想いと死神との決戦への決意。


千葉城からマンションへバイクを走らせる。

飛び石の様に停車する車列を軽やかに交わしながら敢えてそれなりの速度で走る。

後ろに乗る奈々は思った以上にうまくバランスを取りその結果違和感なくローリングすることが出来る。


割と鈍臭い奈々にしては良いセンスだ。

お互いを信用しなければ思い切って車体を傾けることはできない。

しかし過剰に信用しきってしまう事も危険だ。

限界域を超えて車体を傾ければ言うまでもなく転倒する。


互いが互いを信用しながらもけん制し合う。

バイクでのランデブーはちょっとした緊張感を程よく維持することが必要なのだ。

もちろん緊張しっ放しでは続かない。


何事も緩急が必要なのだ。

その本質は人生においてのそれと重なる。

車でのドライブでは決して在りえないリスクと一体感のランデブー。


走行中の一体感。

緊張感から解き放たれた時に生まれる一体感。

その一体感は乗り手とバイクの間にも生まれる。


周囲を囲われた車では決して感じられないスピードへの背徳の陶酔感。

むき出しの銀馬に跨り肌身に直に感じられる猛烈な風圧とエンジン音。

全てをはぎ取ろうとまとわりつき命までをも奪おうと虎視眈々と狙う。


ただただ死へのリスクを高めるだけの自殺行為にも似たライディング。

道路に潜む死神の誘惑に抗いながら突き進む。

もしかしたらバイク自体がライダーを死へ誘いスピードに駆らせる死神なのではないかと頭によぎる。


スピードへの誘惑。

スピードへの麻薬にも似た陶酔感。

死と隣り合わせる背徳の媚薬。


アクセルを開けろ


もっと

もっとだ


そんなもんじゃ俺は満足しない

おまえはそれで満足なのかい?


誰よりも速く

もっと速く


魂さえも追い越して

もっと速く


もっと速く

ここまでおいで…


死の囁きをエンジン音で掻き消し精神を鼓舞する。


俺は死神との戦いの相棒に、この死神を選ぶ。

毒を持って毒を制す。


もうすぐその日はやって来るのだ。

死神を軽く手なずけて奴らを叩き消す。

そうでなければこちらが掻き消されるのだ。


俺の背中にいる天使を失うわけにはいかない。

そのためなら死神にも魂を売るさ。

死神と契約し死神を撃つ。


俺と奈々

奈々と俺

どちらか一方でも欠ければ、すなわち存在する意義がないとの結論が導き出された。


悲痛な、それでいて至福の選択。


ふたりは無になろうとも既に一体。

異体同心となったのである。


既にふたりには無に帰すことすら意味をなさない。

奈々の言葉が俺を奮い立たせ、同時に怯えさせる。

結論がどうであれ俺は奈々を失いたくないのだ。


どうしても

どうしても叶えたい

願い事


俺は願う

この背中の天使と共に在らんことを。


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