そうでないと奈々…壊れて雅樹さんの前からいなくなっちゃうんだから…
そろそろ場面展開して雅樹の最期の死闘に!
そのまえにちょっと甘々(笑)
奈々と俺にとって千葉城は特別な場所となった。
過去にここで同じ時間同じ場所に居たという事実だけでなくこの場所でのふたりの再会に、ある種必然性の様なものを感じ取ることが出来たからだ。
「ここ千葉城でって意味でもそうだけど、異空間に来なければふたりの過去の出会いってわからなかったんだよな。って言うかそもそも異空間に来なければふたりの距離はあれっきりで縮まりようがなかったしね」
「そうですね、ふたりにとって千葉城は特別な場所になりました。異空間…ここに来なければきっとふたりはすれ違ったままもう二度と出会うことはなかったのかもしれません…」
もしそうであったのなら…奈々がそんなことを仮定しながら話しているのが良くわかる
千葉城で奈々が超記憶能力を発揮しなければ過去のふたりの巡り合わせは認識されなかった。
ふたりの奇跡的な出会いが認識されることで、これまでの以上に互いへの想いが深まっていた。
時空が隔てていたふたりの距離が無くなったと言っても過言ではない。
およそ時ほど抗いがたい物はない。
命が生まれ、死に向かって生き、そして死んでいく。
時の流れの中で止められない自然の摂理。
時の隔たりにあっては肉体的にそれを超越することはほぼ不可能。
それに空間的な隔たりが加われば巡り合う確率はさらに低くなる。
そう考えると今現在、自分と巡り合い関わる人との出会いはとても尊い物となる。
ましては、愛し合うふたりにとってはなおさらである。
まさに奇跡の出会いなのだ。
「奈々はさ、なんで超記憶能力について黙ってたの?」
俺は気になっていた奈々の能力について聞く。
「だって…普通の女の子と違うから…」
「嫌われると思った…とか?」
「…」
しおらしく無言でうなずく奈々。
「だって嫌でしょ? 昔のことを克明に記憶していてそれをいちいち言われるって想像しただけでも…」
「…」
思わず今度は俺が無言になる…
が、決してうなずきはしない。
「どうして無言なんですか! こういう時って『そんなことないよ、何があっても奈々のことを愛しているよ』っとか言うんじゃないんですか!」
さっきまでのしおらしい態度が嘘のようにいきり立つ。
「いや…だってさ、そうでなくてもグラマーがどうとかこうとかいちいち怒るじゃん? 奈々って?」
いつもの俺なら奈々の言うとおりのセリフを繰り出すところだが…思わず本音を呟いてしまった。
「そ・れ・は・超記憶能力とは別問題です!」
「そっか~? ってそうだよな! 俺はグラマー好きとか一度も奈々の前で言ってないから記憶のしようがないもんな? だったらなぜなんだ…」
「それは…今はグラマーのことはいいんです! 雅樹さん奈々が超記憶だと嫌なんですか!」
「なんだよ奈々って時々誤魔化すよな~」
俺は不満を漏らす。
「奈々は誤魔化してなんかいませんから!」
「雅樹さんは、奈々が超記憶だと、き・ら・い・なんですか!」
「いやいや、さっきまでは嫌われると思ってたから黙ってた的にしおらしく可愛かったのになんで急に超攻撃的なんだっての!」
「い・ま・は・! そんな事どうでもいいの! 雅樹さんは何があっても奈々のことを好きじゃなきゃだめなの! 」
凧を揚げていた頃の幼い少女に戻った奈々が駄々をこねる。
「そんなの言うまでもないだろ? 俺は何があっても奈々が大好きだよ」
今までだったら『そう言うこといろんな女の子に言ってるんじゃないですか? 不埒っ』ってなる様なセリフを当たり前のように言う。
「もうっ…雅樹さんのばか…」
今度は急に大人しくなって胸に頬を寄せてくる。
まるで猫の目みたいな変わり様…。
「奈々は、雅樹さんが奈々のことを愛してるって実感できていれば安心なの…。だけどそうじゃないって少しでも感じたら…ギュウってつねって、ギィーって引っ掻いて…ガブリっですから! それで雅樹さんのそばで一晩中めそめそ泣いて寝かせませんから!」
「…」
3段攻撃…これは…いかにも痛そうで…嫌だ。しかも一晩中めそめそ泣かれて寝られないとか想像しただけでダメージを受ける酷い攻撃だ…。
総じて23時過ぎからの女の子との喧嘩は避けた方が無難だ。
このころから喧嘩すると結局頓着するのは深夜…
下手をすれば明け方…
眠らせてもらえない中、また眠ったらとんでもないことになってしまうことがわかってる中いつまで続くかわからない女の子の不満をこらえてこらえて、うなずき受容する…。
睡魔と『もういいだろ? それさっきも聞いて…謝ったじゃん?』的な想いを押し殺し、地獄の展開が過ぎ去るのをただひたすら待つ…。
まさに男にとっての地獄絵図…
23時過ぎの痴話喧嘩地獄…なのである。
「なんだよ…ちょっと前に、もうふたりの絆は疑いない的なこと言ってたくせに…」
素直に謝ってしまった方が無難とわかってはいる。
しかし悔し紛れに奈々に聞こえるか聞こえないかの小声で言う。
男らしくなくてもいい…。
男だってぼやきたい瞬間はあるさ。
「何か言いましたかぁ~。奈々聞こえてますけど?」
「いいえ? なにも?」
とぼけて回避。
「いつでも奈々のことを一番愛してるって感じさせて不安にさせないで…。そうでないと奈々…壊れて雅樹さんの前からいなくなっちゃうんだから…それでもいいの…?」
不安気な顔を作り見上げる奈々。
俺は言葉のかわりに、壊れてしまいそうなくらい強く奈々を抱きしめた。




