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「奈々…愛してるよ」 UFO! 手を合わせて見つめるだけで♪

奈々の超記憶が過去のふたりの出会いを証明する。

千葉城の前でふたりで座り雅樹の少年時代の思い出話が語られる。

千葉城前でひとしきり、奈々につねられ不条理なお仕置きを受けた俺。

にもかかわらずますます奈々を愛おしく思える。

男なんて馬鹿でどうしようもない生き物だと痛感する。

こうまでされても『それでもこの子が好きだ』と思える自分にどこか酔っていたりするのである。


「奈々…愛してるよ」


過去に戻って愛を証明することを願った奈々に今の愛を証明する。

過去現在未来…全てにおいて愛を求めるのは不条理、と思う反面、その愛が深ければ深いほど至極自然な心の流れなのだろうと感じたからだ。

しかし奈々には言い逃れの果て…としか捉えられなかったようだ。

「知らないっ…」

そっぽを向いて拗ねる奈々。


「奈々? 過去も変わるんだって…。俺達が今こうして交わる中でさ」

「どう言うことですか?」

そっぽを向いていた奈々がこちらを向き話に食いついてくる。

探究心こそが奈々の原動力なのだ。


「ちょっとここに座って話をしようよ。俺達が初めて遭遇した『ふたり』にとって意味のある場所でもあるし」

「はい…。」


かろうじで『ふたり』にとって意味のある場所に反応した奈々が俺の求めに応じる。

千葉城前に座るふたり。


「千葉城や横須賀で、同じ時間と空間に居合わせたこと。これってほとんど奇跡に近いよな?」

俺は含みを持たせて言う。

「偶然…とも言えますが…」


「そう、偶然、偶然なんだよ。さっきまではね。普通そんな事わかる訳ないんだ、過去に同じ場所に同じ時間にいたことなんてさ。奈々の超記憶って言う能力がなければね。だけど俺達は奈々の記憶でそれを認識する事が出来た。それによって過去のなんでもない偶然が必然であったことを証明し、過去の出来事が単なる偶然ではなくなったのさ」

「…」


無言になり熟考する奈々。

「今、そばにいる大切な人とはそういう関係になるまでの過程で、どこかですれ違ったり違う形で関わっていたり、もしかしたら相手の働いている会社と自分の働いている会社とがすごく関連性が強かったり。でも日常的には全然認識できない関係の中、気づかないうちに同じ輪の端と端に居たりするのかもしれない。直接には出会わないにしてもね」


ややこしいことを言っているのは自分でもわかるので一旦区切る。


「それがある日突然特別な存在となる。その時に奈々みたいな特殊な能力があれば過去を振り返り『ああ、あそこでも実は同じ場所に居たんだね』とか『あのライブあなたもいたのね』とか認識することが出来る。けど普通は全く認識されることはない。ライブの件なんかは後でお互いを探り合う会話でわかることもあるかもしれないね」


「何が言いたいんですか雅樹さん? グラマー好きを隠すために色んなこと言っても奈々は騙せませんから!」


また…グラマーかよ…。

なぜそんなにこだわる。

ってか一度でも俺が『胸がおっきい子が好きだな~』なんて言ったか?

と言ってやりたかったが敢えて抗わない。


「奈々? 俺は別にそんな事気にしたことないんですけど…」

「嘘ばっかり!」


たちまち一蹴される…。

いつどこで俺への偏見? が形成されたのかとても知りたい…。

過去に遡って記憶を探り言い訳したい。

が、俺には奈々の様な超記憶能力はないのであきらめる。


「いやいや俺は別に奈々を騙すためにこんなこと言ってるんじゃないんだけどな…。つまり過去の認識すらされていない偶然の出会いが、必然へと繋がるファクターっていうか前触れだったんだって。出会うべくして出会ったことへのエビデンス(根拠)みたいな?」

「…」

無言で騙されないからとの表明をする奈々。


「そっか、じゃあこんなのではどう? 奈々はこんな話好きじゃないと思うけどUFOって見たことある?」

「UFO…ちっちゃな頃は怖くて‥あれ?‥なんで怖かったんだっけ‥?。でも今は見てみたいなって空を見上げてはいるんですけど…。奈々は絶対この広大な宇宙には私達だけではなくて他の生命体もいるって信じたいから…。雅樹さんはUFO見たことあるんですか?」


「あるよ!」

「本当に? 奈々そのお話聴きたい!」

やっとこっちを向いて話しを聞いてくれる体勢になった。


「奈々は超絶頭良いからこんな話し嫌いかと思った」

「全然! むしろ好きです! いろんなことを科学的に学んだり検証していくとどうしてもそこに行きつきます! 奈々は、科学と神秘の世界は薄皮一枚で隔たれているに過ぎないって思ってます。つまり現段階で科学で証明できないこともその先で私たちが関知していない真理や法則で存在しているのではないかとの思いです! だから奈々はそう言う話大好きです!」


よし…上手く行った。

では


「よかった、奈々に軽蔑されるかと思ってたよ」

「奈々が軽蔑するとしたらそこではありませんけど…」

おっとまずいまた矛先が悪い方向に…

その前に


「奈々、俺も奈々と一緒で子供の頃からずっと空を見て探していた。でも全然UFOなんて見ることが出来なかった。それが大人になったある日、突然願いが叶ったんだ!」

俺は奈々にその時の話をし始める。

奈々は食い入るように話しを聴く。


休日のその日、特に何もやることがなかった俺は自宅近くの空き地まで車で行ってサンルーフを開けてボーっと空を眺めていた。

風が強いこともあって空は雲一つない晴天だった。

子供の頃から空を眺めることが好きだった。


特に青空。

そして青空に浮かぶ雲。


曇り空は嫌いだった。

子供の頃の俺の記憶には鬱屈とした曇り空のイメージが支配的にあった。

どうしてそうなのかはわからないが、曇り空を避けるように青空を探した。


小学校4年生の時に母の知り合いのおじさんにカメラをもらってからは、ちょっとした写真家気取り。

その被写体の多くは青空と青空にぽっかり浮かぶ白い雲だった。


もちろんその頃からUFOは見たくて見たくて、見つけたら写真に撮るんだって意気込んでいた。

空を撮りつづけていたのも、もしかしたら潜在的にそんな欲求があったのかもしれない。


望遠レンズもないただピントを合わせてシャッターを切るだけのカメラでは例えUFOを見つけても捉えることは出来なかったであろうが少年は夢想していた。

いつかUFOを写真に撮ってみんなに自慢するんだと。

だが少年時代に切望したその願い事は叶えられることはなかった。


その日は突然やって来た。

少年時代あれだけ切望したのにもかかわらずその姿を見せることのなかったUFOは、サンルーフから空を眺める俺の視界に突然現れた。


しかしあれだけ切望していたにもかかわらず初め俺はコンビニの白いビニール袋が空に舞っているとしか認識できていなかったのである。

『コンビニのビニール袋…誰かが捨てたんだな。風が強いから空に舞って。どうしようもないなごみを外に捨てるなんて』などと憤った思いで空に舞う白い物体を眺めていた。


しばらく眺めていると異変に気が付いた。

『強風で空に舞い上がったビニール袋にしては…動きがおかしい…。風に抗って小刻みに忙しく動きすぎだろ…』

そう訝しく思った俺は車から飛び出し空を見上げる。

ビニール袋だと思っていた白い物体は、袋状の物ではなく明らかに白い球体であった。


その球体は風の流れに影響されることなく自由に、しかも信じられないスピードで小刻みに動いている。

その動きはまるで空に何か文字を書いているのではないかと思うほど恣意的な動きだった。

少年時代その遭遇を切望していた俺は、突然の事態に呆然とした。


『UFOだ…。あれはコンビニのビニール袋なんかじゃない! コンビニの袋だったらこんな風に風に逆らって動けるはずがない。良く見たら、白い球体! 白い…球体が信じられないくらいの速度で動き回っているんだ』

言葉を失い空を見続ける。

誰か隣にいてくれればこの事態を共有しきっととめどなく話し続けたであろうが俺は独りだった。


空を動き回る白い球体から目が離せずに呆然と見つめ続ける。

時間にして5~6分だったろうか。

もっと短かったのかもしれないが、瞬間的とも永遠とも感じられる時間だった。

いつまでも見続けていたいと思った次の瞬間、白い球体はやはり信じられない速度で一直線に南の空の方へ降下し山の彼方に消えて行った。


山と俺との距離を勘案すると小さな白い球体に見えていた物体の大きさが認識でき、さらに驚愕する。

遥か彼方の山の影に消えるまで全くその大きさを変えなかったその物体は俺が認識している大きさよりもはるかに巨大なはずだったからである。


ものすごい速度で一直線に南の山の影に消えて行った物体。

俺は興奮と緊張でしばらくその場を動けなかった。


「これが一回目にUFOを見た時の話し」

一旦話を区切る俺。

奈々は食い入るように聞いてくれている。

本当にこういう話が好きなんだね。


「白い球体、激しい動き、まるで空に文字を書くみたいってところが興味深かったです! それに移動能力と速度についても興味深いです…」

「単純に落下するって言う感じではなくてスーッとものすごい速さで移動した。空を移動する乗り物であんな動きとスピードで移動するのは見たことがない。それこそ観艦式で観たF35だってあんなスピード出てなかった!」


「雅樹さん? これが一回目ってことは二回目もあるの?」

奈々が興味を持って聴いてくれるのがうれしい。


「うん、二回目もあるんだ、聴いてくれる?」

「二回も! 早くお話聴かせて!」

そうせがまれてうれしさが増す。


千葉城の入口に座るふたりは、異空間の空を眺めながら過去に想いを馳せ今を実感していた。

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