ってそう言うこと言うなら奈々は悲しいです!
奈々と雅樹の過去での遭遇!
超偶然は二度続く
二度あることは三度ある?
奈々のつねり攻撃炸裂!
超記憶はこれからも雅樹を悩ませるだろう。
目当ての刀剣を手に入れた俺は博物館を後にする。
5振りの刀剣…1本当たり1.5kgだとしても奈々の小太刀を含めて9kgは結構重い。
大きめのリックにかろうじで差し込み落とさないように慎重に歩く。
「雅樹さん?」
博物館を出たところで俺の名を呼ぶ奈々。
「どうした奈々?」
「軍港巡りって行ったことあります?」
なぜか目も合さないでそう質問する奈々。
つないでいた手を離しどういうわけか俺の二の腕を掴む。
なんだかちょっと…様子が変?
「もちろんだよ! 米軍艦も見られたりするし結構エキサイティングだよね! 俺が行ったのは寒い時期だったから海風で凍えそうだったけどそれを忘れるくらい面白かったよ! 奈々も行ったことあるの?」
俺は奈々との共通の趣向がわかったことに気を許しベラベラと警戒なく話す。
「…」
無言で俺の顔を見上げる奈々。
…しまった。
何の警戒もなく話をしたが、どうも奈々の観察が始まっている…。
「どう…した? 奈々?」
恐る恐る言う。
しかし何の咎もないのだが…
「雅樹さん奈々も軍港巡り行ったことあります! パパとママと…。 楽しいですよね! 寒かったりしたらみんなで身を寄せ合ってみたり…」
笑顔でそう言う奈々。
俺の勘ぐりすぎか…。
「そうそう! 寄り添うと風の冷たさもちょっと違ってくるもんね!」
「…」
無言の奈々…。
「ん? どうした奈々?」
そう言いながら奈々の方を見る。
奈々の目が…冷たい光を帯び、二の腕を掴んでいた手が親指と人差し指の二本になっている。
俺は…奈々のトラップにかかったのかな…もしかして?
「ですよね~風が冷たくても寄り添っていれば寒くないですよね…。雅樹…さん…」
「あっ…やっぱり寒いものは寒いかな…」
何となく嫌な予感がして弱否定する…。
「軍港巡り~どなたと行ったんですか~ま・さ・き・さ・ん! ん?」
ん? って言う時の小首を傾げて上目使いな感じは…形容しがたいくらい可愛いのだが…例の如く目が…目が笑っていない。
「あ、いや…ママとかな? ハハッ…」
虚しく笑う。
時、既に遅し…。
やはり奈々のトラップにまんまとかかってしまった私…
「…」
奈々が無言になり瞳を閉じる。
「奈々? なに? どういう事、目を閉じて? 超記憶? 超記憶なの? そんな偶然そうはある訳ないでしょ? ある訳ないって! 奈々ってば!」
しどろもどろになり、そしてどういうわけかややお姉っぽい物言いで、奈々の超記憶再生を阻止にかかる俺。
しかし儚い抵抗は徒労に終わった。
「雅樹さん? 随分お若いお母様ですね? この方はお母様ではないですね? ん?」
「ってまた奈々もいたのかよ? そんなわけないだろ? どんな奇遇だよ?」
狼狽える俺。
「正直奈々も驚いているのですが、残念ながら雅樹さんが軍港巡りに行ったその日、奈々も両親と軍港巡りに来ていたようです」
「…」
無言になる俺。
「雅樹さん…こ・の・か・た・は・どなたですか?」
「いや…よく覚えていません…」
奈々から目を背け、ややいじけた感じで返答する…。
ギュッ
と、きっと音がしたと思うくらい二の腕をつねられる。
「痛い痛い! 奈々っ痛いってば!」
「とぼけないで正直に白状しなさいっ! って言うか奈々は学友とかパパとママと一緒なのにどうして雅樹さんはいつもいつも女性と一緒なのですか? もうっ! 不埒っ!」
奈々は攻撃の手を緩めない。
つまり俺の二の腕は奈々の可愛い手でつねられ続けている。
「わかったわかった白状するからもうつねるのやめよう! ねっ? 暴力反対!」
「白状するのなら一旦解除します」
そう言ってつねること自体は一旦やめるが二の腕の指はそのまま。
いつでもつねり攻撃が再開できる状況にある。
「自衛隊って言うか自衛隊の学校に入校しようかどうか迷っている女の子に付き合って軍港巡りに来ただけだよ! 俺も自衛隊の装備品好きだって、その子は知ってたからさ。その子も奈々と一緒で機能美に優れた自衛隊の装備品に魅了されてた女の子でさ、でもいざ大学校に合格したら迷いが出てきて、それで軍港巡りに一緒に来たわけ! そ・れ・だ・け・で・すっ」
奈々のお株を奪いことさら強調して言う。
甚だ男らしくない俺だった。
「グラマーですが…」
また良くわからない奈々のこだわりが始まった…。
「いやいやグラマーって、そうだったっけ? 俺はそんなことよく覚えてないよ! ってかなんで奈々はそこにやけに強くこだわる? そっちの方が聴きたいは!」
やけくそになってぶつける。
「それは雅樹さんが一番よくご存じでしょう? ご自分の胸に聞いて下さい…」
どうやら風向きが悪くなりそうなのでそれ以上の追求を止め話しを変える。
「だからお付き合いしてるとかそんなんじゃなくて、単純に俺が護衛艦とか好きなの知ってたから付き合わされただけだって!」
「雅樹さん…残念ながら奈々にどんな嘘を言っても無駄です…。ではなぜあのように仲睦まじく寄り添い、その女性は雅樹さんの肩に小首を傾げ! あんなにも潤んだ目で! 軍艦も観ずに! 雅樹さんの胸に視線を落としているのですか!」
超記憶…。また厄介な能力を携えたお姫様だ…。
ある意味宇宙を司る神か?
嘘が利かないじゃないか!
「そ、それは…悩んでたんだよ! だからそんな時は誰かの胸を借りたいものなんだろ? 俺でなくても誰でもよかったんだよ? ってか昔のこと言われてもどうしようもないって!」
「『昔のこと言われてもどうしようもないって』ってそう言うこと言うなら奈々は悲しいです! もうつねりますから!」
「イテテテっ! わかったごめん、俺が悪かったからもうやめよう!」
「何が悪かったんですかっ! 」
奈々は攻撃の手を緩めず俺はつねられ続けている。
「奈々の気持ちも理解せず『昔のこと言われてもどしようもない』って言ってごめんなさい~」
我ながら…ひどく情けない…。
一体こんなんで死神との戦いに勝てるのだろうかと懐疑するくらいに…。
「過去に戻ってそこに居る奈々に愛してるって言って!」
滅茶苦茶なことを言い始める。
「子供の奈々にそんなこと言ったら犯罪だろ! 奈々のパパにブン殴られて警察行きだは! ってかそもそも過去に戻って言えるかっ!」
「そんな風に居直って~」
「居直ってるんじゃないって! 無理なもんは無理~」
千葉城下に俺の叫び声が…こだまする…。




