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ふたりはひとつです…だから…もうふたりには消滅することすら意味を成しません

マリンピアのイルミネーションに包まれふたりの想いが重なる

最期の時に死神がふたりを無に帰したとしても

ふたりを分かつことはできない

無に帰すその瞬間までもふたりはひとつなのだから…

マリンピアのイルミネーションに包まれた俺と奈々はいつまでもその場を離れることが出来ないでいた。

奈々は異空間からの脱出に際して最悪の事態では共に死神に狩られることを望んだ…。

奈々が消滅する…

この俺も消滅する…


天使の様な奈々がこの世界から消滅することなど俺には全く想定できない。

俺は自分が消滅したとしても奈々の記憶、心の中で生き続けることが出来れば何も怖くはなかった。

死しても永遠に奈々の心の中で生き続ける…。


死を司る魔物と闘うには十分な動機だ。

しかし奈々が消滅するとなれば話は別だ。

絶対に失敗することは許されない。


俺が奈々より前に死神に狩られるようなことがあれば、奈々は死神から逃げることを止め消滅を選ぶと言うことだ…。

最悪、奈々だけでも破壊と再生の空間に押し込まなければならない。

その後であれば俺はどうにでも戦い、例え敗れたとしても奈々を失うことはない。


と、そこまで考えたところでふと、あることに気が付く…。

万が一奈々が俺より先に狩られたら…。


「奈々、最後の最後まで決してあきらめないでくれよ! 俺は絶対に奈々とふたりで現実世界に帰る。奈々が早まった選択をしたら全てがぶち壊しになってしまう事だってあるんだからな!」

俺は最悪の事態が生じた時の奈々の判断に怯える。


「…」

奈々は無言でうなずく。

奈々が理解してくれたことを確認したうえで俺は奈々に想いを放つ。


「奈々…俺は今、奈々の心に触れた…」

「え…?」

奈々が俺を見上げる。


「奈々…万が一奈々が俺より先に死神に狩られるようなことがあれば…俺も奈々と同じだ…やはり死神に狩られることを選ぶ…。奈々が消滅した世界にいる意味など、今の俺にはない…」

「雅樹…さん…」


「だがもし、俺が先に狩られたとしても奈々はあきらめないでくれ…。消滅した俺のことを奈々が覚えていてくれさえすれば、奈々の心の中で生き続けることが出来るのであれば俺は何も怖くないんだ。だから奈々! 俺に何があってもあきらめないで欲しい…」

奈々の両肩をしっかりと掴み俺の想いを伝える。


「雅樹さん、だめよ…。雅樹さんがいなくなれば奈々もいなくなる。奈々も雅樹さんと同じ。雅樹さんがいなくなった世界に存在する意味がないの」

しっかりと俺の目を見つめる奈々。


「雅樹さんと奈々は同じ道をたどる。同じ選択をする。雅樹さんがいれば奈々もいる。雅樹さんがいなくなれば奈々もいなくなる…」

「…」

今度は俺が言葉を失い無言になる。


「奈々はうれしい…雅樹さんも奈々と同じように想ってくれていた…。もう結果なんてどうでもいいの。もしふたり一緒に消滅したとしてもその瞬間ふたりの想いは完全に重なっている…。これ以上の何を望むの? なにも恐れることはない。輪廻転生を繰り返し生きることの最終的な目的は…きっと『ひとつになること』なんです‥。。奈々と雅樹さんは今、完全に一致しています。ふたりはひとつです…だから…もうふたりには消滅することすら意味を成しません」

「奈々…」

ふたりはどちらともなく互いを抱き寄せその存在をしっかりと確かめ合った。


抱き寄せた奈々の身体は、すっかり冷え切っている。


「奈々…だいぶ冷えてきた家へ帰ろう」

「はい…」

ふたりの心中には静かだが、寒さなど感じないほどに熱い想いが燃え盛っていた。


ピッタリと身体を寄せ合い家路に向かう。

残り少ない時間を惜しむかのようにゆっくりと微睡むように歩を進めるふたり…。


雅樹がイルミネーションに照らされたポスターに目を向ける。

『千葉市郷土博物館_2階常設展示「武器と武具」千葉常胤生誕900年記念企画展示「房総の刀剣―千葉に伝えられた平安から江戸の名刀」』


郷土博物館…。千葉城にある博物館か…。

足を止めポスターに食い入る雅樹。

「雅樹さん? どうしたの?」


不意に足を止めた俺に奈々が問う。

「奈々? 明日は博物館でデートだ!」

「えっ? 博物館って…この郷土博物館のこと?」


「左様でございます奈々姫様! 千葉城でデートにござります…」

俺は仰々しく言うと奈々姫に向かって頭を下げる。

「やだ雅樹さん、江戸時代の人みたい」

奈々が笑顔になる。


この笑顔を永遠に見つめていたい。

『このまま時が止まってしまえばいいのに…』

淋しげにそう言った奈々の願いが俺の胸に響く。


あの時飲み込んでしまった本当の自分の想い…。

『このまま時が止まってしまえばいい…』

やはり俺も奈々と同じ願いを胸に秘めていた。


「でも楽しみっ! 千葉城って小さな時に遠足で行きました。久しぶりだな…」

「そうか、俺は行ったことないんだよな奈々案内してくれよな」

「はいっ! 楽しみ」

さっきまで重かった奈々いや、二人の足取りが心なしか軽くなる。


死神と戦うための武器を手に入れなければな。

初めに死神と戦った時は奈々から手渡された鉄パイプを武器にした。

しかし男にはその気になれる道具が必要なのさ。


おあつらい向けに刀剣の展示。

もし特別展示でこれというものがなくても2階の常設展示場にも刀剣の展示があると言う。

ここで戦うための武器を手に入れる。


千葉城であればここからそう遠くもない…が歩いていくにはちょっと距離がある。

もちろん電車でなら本千葉駅で降りて歩いて行くと言う方法もあるが…。

京子ちゃんにとってのシボレーコルペットの様な相棒を俺も見つける必要があるな…。


ふとマリンピアの先に目を向ける。

TUTAYAの前にヘルメットを2つ携えたオフローダーが停まっている。

DT…?大きさから言って125CCか?


それほどやれた感じがしないところを見るとDT125Xか?

よし、ひとまず明日はこいつを相棒にしよう。

2ストローク水冷単気筒のエンジンは22PSながら不満を感じさせない加速を見せてくれる。


バイク好きの俺の弟が初めにチョイスしたバイク。

弟の運転するDT125Rの後ろに乗って走りまわっていたのが昨日のように感じられる。


その後俺も中型免許を取り自分の相棒を手に入れた。

死神との決戦には、どうしてもその当時の相棒を従えたい。

あれから随分時が経ってしまった。

当時の相棒に巡り合える可能性は極めて低いが、なぜだか俺は巡り合える気がしている。

明日は武器と相棒を探しに奈々とツーリングだ。


「雅樹さんどうしたの?」

バイクに注視する俺に奈々が気が付く。

「なんでもないよ。明日は楽しくなりそうだ」

「ねっ! 奈々楽しみ」


ほどなくマンションの部屋にたどり着くふたり。

きれい好きな奈々に続き風呂に入ることを強いられる俺。

この手のことで奈々に逆らっても通るはずもなく俺も入浴。


「雅樹さん、奈々は少しやりたいことがありますから先にお休みください」

ゆったりとした部屋着に着替えた奈々。


「どうした? 何か手伝えることあれば?」

「ううん…青いノートをもう少し読んで…それから…」

「それから…? そうか…じゃあ俺は先に休むよ」

そう言うと奈々の頭に手をやる。


「うん…おやすみなさい」

「ところで奈々? 奈々はどこの部屋で寝てるの?」

夕べは別に寝室があると言っていたが、どうもそれとおぼしきスペースが見当たらなかったのだ。


「え? あ、ううん大丈夫…。雅樹さんは心配しないで早く休んで。奈々は夕べも一番安全で一番心が落ち着く場所でちゃんと眠りましたから…今夜もそこで休みますっ。えへっ」

「えへって? そっか…わかった。じゃあ先に休むよ。お休み奈々」

「おやすみなさい雅樹さん」


なんだかちょっぴり淋しさを感じながら夕べと同じベッドに潜り込む。


明日は忙しい一日になるな…。

千葉城に行きまずは武器を手に入れる。

道中で相棒も探す。

そして奴らとの決戦だ…。

明日のことや来たるべき死神との決戦について想いをはべらせているとなかなか眠りにつけなかった。


しかしそんなことを考えているうちにだんだんと奈々のことが頭に浮かんでくる。

明日は奈々とちょっとデート気分も味わえるか…

イルミネーション…きれいだった…な…

などと考えているうちにやっと睡魔が訪れ、俺は眠りについたようだ。

寝室を静寂が支配する。


しばらくすると

カチャ…

寝室のドアがゆっくりと開く。

音も立てずに寝室のベッドに近づく人影。


暗闇にもぼんやりと光を放つような奈々がベッドにそうっと潜り込む。

奈々は雅樹にぴたりと身を寄せ肩に顎を乗せると目を閉じる。


大きなベッドがふたりを包み込んでいる。

ふたりの安らかなひと時を何にも邪魔させないぞと包み込んでいた。



 


















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