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蟻と人間

奈々を浜辺美波さんのイメージで読むと100万倍楽しめます!浜辺美波さん可愛いよね!

是非コント下さい!ご希望の方小説に登場人物として登場させていただきます(^o^)ご希望ある方コメしてね!登場人物少ないけど登場していただく余地山ほどありますからね!

ヤフーブログでも掲載してます(^o^)

奈々の瞳を見ながら俺はふと物思いに耽った。

俺と奈々がいるこの空間はきっと無作為に湧いて出てきた様なものではない。


何らかの意図と必然性の元、何かの意思で存在しているに違いない。

奈々との議論は言葉の持つ力から始まって大いなる者の意思、意思の持つ力にまで発展している。


これらの議論の中からこの異質な空間、5分後の世界が蓄積され破壊される異空間の存在証明と意義、というか必然性を導き出すヒントになればと考えていたが・・・。


そもそも答えなんか出るのだろうか・・・・。


踏みつぶされた蟻ん子はきっと自分の身に何が起きたかわからないままその生涯を終えるのだろう。

自分を押しつぶした存在を認識することもなく消えていく・・・。


俺たちが挑んでいる謎もその類なのではないか?

蟻と人間、人間と大いなる意思。


この世の中でそれぞれに存在しながらも相互に有機的な関わりなど認識される事なんて有りはしない。

足元を行く蟻に目は行くし腕やチョコレートに蟻が這おうものならパッパと振り払い時には何のためらいもなく殺してしまう。


この世界に普遍的に存在し全てを見回す大いなる存在にとっても人間なんてそんな程度の存在なのではないか?


蟻が人間を理解できない様に人間もまた大いなる存在を理解することなど出来ないのではないか?

しかし大いなる存在は人を自分に似せて創ったとも言う。


いや・・・その認識自体も人間が創った寓話に過ぎないのかもしれない・・・・。

となるといよいよこの異空間の理解やましてや脱出方法なんて見つからないのではないか・・・。


そんなことを逡巡しながら、俺は時間の止まった空間にただただ奈々だけを意識しながら存在した。


「雅樹さん?雅樹さんったら!奈々の話聴いてますか?どうしたんですか急に虚ろな目をして?」


奈々の声にハッと我に返る。

どうやら俺は知らず知らずの内に内的な思考に入ってしまっていたようだ・・・。


「ごめんごめん、おじさんちょっと疲れちゃったみたい?奈々の話はすごく興味深いものばっかりだけど、さっきちょっとすごい勢いで睨まれちゃって怒られちゃって疑われちゃったりしたのがストレスで現実逃避しちゃったのかなぁ。」

場を和ますためにお茶らけたつもりが、ややお姉っぽくなってしまった。


「もう!ちゃんと奈々の話を聴いて!ストレスって・・・奈々のせい?奈々が雅樹さんのことを嘘ついてないか観察したせいなの?」


オイオイ、その観察って表現!俺は蟻ん子か!

なんてな気持ちになりつつも、またもや俺の顔にこれでもかってくらい近づいて来る心配気な奈々の瞳を見てしまえば抗う事など出来ない。


「雅樹さん?」

俺の名を呟く奈々の艶やかな唇に視線が釘付けになる。

この子は一体どれだけ魅力的な子なんだ。


溢れる知性、豊かな、時に豊かすぎる感性、そして今は俺一人だが恐らく世の男のほとんど全員が虜になるであろう可憐な姿。


つぶらな瞳、スッと通ってはいるが上品な大きさの鼻、艶やかな唇・・・。

そしてそれだけじゃない。


この異常な世界でほぼたった一人で生き抜く精神力と行動力、洞察力!

見た目からは想像ができないくらいタフな存在だ。


5分後の世界に取り残されて漆黒の津波と死神から逃れ現実世界に戻る方法を懸命に探っていたが、もしかして俺は今生まれてから一番幸せな状況にあるんじゃないか?

敢えてこの状況から逃げる方法を考えるなんて行為自体が愚かなことなんじゃないか?などと考えてしまう。


「雅樹さんってば!もう!どうしちゃったの?じっと奈々のことなんか見て!」

この状況で奈々に見入ってしまったことにおじさんとしても少し恥じらう。


「ごめん、奈々があんまり・・・」

おっと、まずいまずいここでこのまま予定調和の如く『奈々があんまり可愛いから見とれちゃったよ(笑)』なんて言おうもんなら(ほんとのことだけど)『雅樹さん・・・いろんな女の子にそんなこと言ってるんでしょ!』なんてまたすごい勢いで怒り出すぞ!前回の二の轍を踏むとこだった。危ない危ない・・・。


「奈々があんまりなんですか?」

心配そうに奈々が言う。


「いや、奈々があんまり・・・」

急に言葉を転回できず窮する俺。


「だから奈々があんまり?どうしたんですか?」

切り返せない・・・こうなったら。


「やっぱりいいよ・・・奈々にまた怒られるから・・・。」

追い詰められた俺はおよそ奈々よりはるか年が上のおっさんが言うべきでないセリフを吐き急場をしのごうと喘ぐが奈々が追及の手を緩めるわけがないこともまた分かっていた。


「奈々が雅樹さんを怒る?奈々はそんな事しません!」

ってオイオイ今まで何度もすごい勢いで怒ってるって!意識下にないのか?だったらおじさんちょっと、いや凄く怖いぞ・・・。サイコホラーかっての!


「雅樹さん!奈々がどうしたんですか!言って下さい!奈々があんまり可愛くないとか、奈々があんまり嫌な子だとか、奈々があんまり好きじゃないとかですか?」


あんまり嫌な子って・・・奈々もかなり混乱しちゃってるな。

いちいちまじめで一生懸命な子だからな。


「違う違う!」

「じゃあなんですか!はっきり言って下さい。」

奈々が更にグイグイと迫りながら俺に言う。


「じゃあ怒らない?」

「奈々は絶対に怒りません!」

じっと俺の目を見て奈々が言い切る。


「他の子にもそんなこと言ってるんですか!って怒らない?」

「絶対怒りません!」


「じゃあ言う・・・」

自分でもちょっと気持ちが悪いおっさんだなと反省はしている。


「奈々があんまり可愛いからちょっと見とれちゃったんだよ。ごめんなちゃんと話聴いて無くって。」

どうだ、おっさんの哀愁を絡めながらの哀れな謝罪!


「・・・・・・。」

じっと俺の目を見つめ無言の奈々。

恐らく、いや確実に今、奈々は俺を観測している・・・。


「雅樹さん本当に色んな女の子にそんなこと言っていないんですよね・・・?」

抑揚のない声で奈々が俺に言う。


「はい、決してそんなことはありません。」

「本当に?たまには言ったりしましたよね?」

奈々が俺を懐柔に入る。

「いえ、そんなことはありません。」

その手には乗らず完全に否定する。


「ずっと前から奈々の事を可愛いって思ってた?」

???まただ?また奈々が妙な言い回しをする。

「ずっと前から?」

その違和感に、たまらず俺は聞き返す。


「そう、ずっと前から。」

奈々は相変わらず抑揚のない感じで繰り返す。

ちょっと、かなり怖かったので・・・。


「そう!ずっと前から・・・。」

と反抗することなく返す俺。


「本当にずっと前から?」

「本当にずっと前から!」


「本当にずっと前から奈々の事をどう思っていたの?」

「ん?」

またも妙なニュアンス。戸惑う俺に。


「本当にずっと前から奈々の事をどう思っていたの!」

語彙を強めて言う奈々の反応にハタと今俺が奈々に言うべきことに気が付く!


「本当にずっと前から奈々の事が可愛いなと思っていました!」

「・・・・・。」

無言の奈々。


しかし次の瞬間奈々は俺が思いもよらなかった行動に出た。


「うれしい・・・。」

そうつぶやくと俺に背を向け泣き出す奈々。

しばしの間があった後、俺の方を振り返り泣き顔に何とも言えない艶やかな笑みを浮かべながら奈々が言う。

「雅樹さんはずっと前から奈々の事を可愛いと思ってくれていたんですね・・・うれしい・・・。こんな日が来るなんて・・・。」


まただ。ちょっと前にもこんなシチュエーションがあった。奈々と俺との間には何か大きなズレがある。

どうにも釈然としないがこの点について前に奈々に問いかけた時は「教えない!」の一点張りだった。


「奈々、俺たちは・・・。」と言いかけて俺は言葉を飲み込んだ。幸い奈々には気が付かれていなかったようだ。これだけ清明な奈々がはっきりと言葉に現さないには何か特別な事情があるはず。

それはこれからの奈々とのかかわりの中で徐々に紐解いていく必要があることなのではないかと考えたからだ。


「奈々、ごめん、泣かせるつもりなんてなかったよ・・。」

俺は飲み込んだ言葉に変わる言葉を奈々に伝える。


「雅樹さん?謝らないで、奈々はうれし泣きです。」

そう言うと奈々は顔一杯に笑顔を作る。


「奈々は今幸せです。雅樹さんがこの空間から元の世界に帰りたいと思っているから奈々はその方法を一生懸命考えますけど・・・。奈々は今が一番幸せです。」

奈々が健気に笑顔を作って言う。

さっき俺も同じことを考えていたことはここでは敢えて飲み込んだ。


「奈々?こんなおっさんに可愛いって言われて泣いてちゃだめだ。奈々は本当にこの世の者とは思えないくらい可愛く魅力的な子だよ?元の世界ならもっと若くてイケメンが奈々の事をほっとかないぞ!毎日毎日すれ違う男すれ違う男から数えきれないくらい可愛いって称賛されるって!こんな過去の世界でおっさんに可愛いって言われて幸せなんて言ってちゃだめだ!」

俺は半ば本気で奈々に言う。そう言いながも俺は自分の中での奈々の存在がもう引き返せないくらい大きくなってきていることにも気が付いていた。だからこそ奈々にどうしても伝えたかったのだ。


「雅樹さん?これは奈々だけじゃなくて女の子はみんなそうなんだけど、好きじゃない人に可愛いなんて言われてもちっともうれしくなんてないよ?女の子は好きな人が可愛いって言ってくれるのが一番の幸せでそれ以外の人から言われたってちっとも幸せなんかじゃないの。」

そう言い切る奈々の顔をじっと見つめる俺にハッとした顔を見せる奈々。


「奈々変なこと言っちゃった。もう!雅樹さんが変なことばっかり言うから!奈々は考えます。一生懸命雅樹さんのために考えます。その結果一番幸せな今が無くなってしまったとしても。」

思いつめた表情で言う奈々に俺は言葉を失くしてしまう。


「雅樹さん、寄り道しちゃった!天国と地獄の確率のお話を続けましょう!」

無理やり笑顔を作る奈々に、これ以上負担をかけることは今は避けよう。俺には理解できない何かがあることは確実に感じ取りはしたが・・・。


「そうだね奈々!寄り道してしまってごめん。話を続けよう。」

何もなかったかのように俺も言う。


そして二人の間に再び思索の波が優しくさざめきだした。





 

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