パスカルの賭け
神だとか宗教だとか色々出てきますが宗教の小説ではありません。科学の果てに超越した意思を見るという現象は最新の量子力学を研究する科学者たちも口にしています。怪しい宗教の小説ではないのでご安心下さい。今は西洋宗教が中心ですが宇宙の真理という観点からはむしろ仏教の方の捉え方に深みを感じています。今後東洋宗教や哲学、倫理学等にも触れながら空想科学小説として宇宙の真理に迫りつつ、ストーリーを進めていきます(^o^)
奈々が小首を傾げて言う。
「パスカルの賭けの事かな?」
「そうです、ブレーズ・パスカル!フランスの哲学者でもあり、自然哲学者でもあり物理学者、思想家、数学者、キリスト教神学者としても有名な方です。」
「人間は考える葦である!とかパスカルの三角形、パスカルの原理、パスカルの定理とかでも有名だよね?」
少しは奈々の博識に太刀打ちしようと俺の知り得るわずかな知識を懸命に披露する。
「そう!パスカルは、まだ10歳にもならない頃に、三角形の内角の和が二直角である事や、1からnまでの和が(1+n)n/2である事を自力で証明して見せたと言われている早熟の天才です!」
奈々の瞳が、活き活きと輝き出す。
その輝きは、奈々がこの早熟で早逝した天才の事が大好きなんだと言っている様だった。
好きというか、類は友を呼ぶというか、同質の者達が知らず知らず惹き合うみたいな類の感覚なんだろうな。奈々もまた確実に天才の類だ。
「人間は考える葦であるってのも今までの議論の流れから行くと興味深いな…。」
「そうですね、人間は孤独で弱いけど、考えることができることにその偉大さと尊厳がある!思考する存在としての人間を定義している点ですね。」
「意思、思念と来て思考。やはりどうもこの辺りに生きる目的みたいなものへの力を感じるな。」
感慨深げに言う俺に奈々が同意する。
「そうですね。パスカルはパンセの中で『すべての人間は幸福を求めている。これには例外がない。その手段がいかに異なっていようとも、みなこの目的に向かっている。意志は、この目的に向かってでなければ、一歩も前へ進まない。これはあらゆる人間の、みずから首をくくろうとする人に致るまでの、あらゆる行為の動機である』と言っています。意思が幸福を求めるという、正しい方向に進まなければ何事をも成せないと捉えている様ですね。」
「なるほどね、人間の意思が重要なんだな…。」
「話しが少し反れてしまいましたわ。パスカルはパンセの中でさらにこう言っています。『人生の目的は幸福であるが、人間が真に幸福になるには、死の問題を克服し、来世での幸せが保証されなければならないと確信する。』と!」
「つまり天国と地獄のある確率って事だね?」
奈々は返事をするかわりに、大きく瞬きをしながら頷いた。