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相手の気持を覗きながら恋なんてしないよ

神の息・人の息のキャラクター登場。こっちに出すことでこれらのキャラクターも動き出した!

完結は必ずするけど、キャラクターも増えて来たからもう少し引っ張ります!

京子ちゃん? 京子ちゃん! 大丈夫?」

リンダが心配気に京子の顔をうかがう。


「あ、ごめんなさい。大丈夫です、ちょっとボーっとしちゃって」

「こんな訳のわからないことがあればしかたがないわよね。はい、ノート」

そう言うと青いノートを京子に手渡す。


「でもこれはお店のじゃ・・・」

「それは京子ちゃんと奈々ちゃんのノートよ。二人の大切な思い出のノート。それはそうとやっぱり奈々ちゃん姿が見えない様なの。念のため私が知る限りだけど奈々ちゃんが立ち寄りそうな場所だとか知人に連絡してみたの」

「まだ異空間にいるってことですね・・・」

京子は遠くを見るような目でそう言う。


「奈々ちゃん大丈夫かしら・・・京子ちゃんのようなしっかりしている人が一緒なら安心なんだけど、あの子ちょっと鈍臭いとこがあるから・・・」

そんな風に奈々を心配するリンダの様子を見て、奈々が愛されていることを実感する京子だった。


カランコロン

来店を告げるベルの音が店内に響く。


「リンダさん? 奈々ちゃんは見つかりましたか?」

慌ただしく店内に入ってくる男女。


「リンダちゃん! 奈々ちゃんまだ見つからないの? でも、奈々ちゃんのことだからまたどこかで転んでるか、道に迷ってるんじゃないの?」

椿姫つばきひめ! リンダちゃんなんて失礼だよ!」

男がそうたしなめるが、


「あら、良いのよね~椿姫つばきちゃん! リンダちゃんつばきちゃんの仲だもんね!」

「そうだよお兄ちゃん! 椿姫つばきとリンダちゃんは仲良しなんだから! あれ? もしかしてお兄ちゃん焼きもち妬いてない? ん? でもこの場合椿姫つばきに焼きもち妬いているのか、リンダちゃんに妬いてるのかが問題だわ・・・」

そう言いながら真剣な面持ちになる女の子はまるで夏の太陽の様に煌めいていた。


椿姫つばきひめ! 今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ! 奈々ちゃんのことが心配でここに来たんでしょ?」

お兄ちゃんと呼ばれる男が再び窘める。


「あっ! そうだった! でもさぁいくら奈々ちゃんがおっとりしてて鈍臭くて世間ズレしてても半日? 姿が見えなくなったくらいで心配しすぎじゃない? 奈々ちゃん可愛いけどもう大人でしょ? っていうかお兄ちゃんなんて一日椿姫と会わなくても全然心配しないじゃん! 椿姫のことをもっとシ・ン・パ・イ・してよ!」


「だから! 今は奈々ちゃんのこと! 椿姫がちゃんとお家に帰っているのかは僕の部屋から明りがついているかどうかでも確認できるでしょ? お隣さんなんだからさ! それにリンダさんが心配するんだから、半日でも奈々ちゃんの姿が見えないことに特別な事情があるって考えようね?」

椿姫つばきはそんなに小さな女の子ではないが、男はまるで幼子の様に扱う。


「は~い」

ふてくされたように言う奈々。


「椿姫ちゃん、そうなのよ! セラ君の言うとおり特別なって言うかちょっと信じられない事情があるってわかったの! だからセラ君に真っ先に連絡してここに来てもらったのよ!」

セラと呼ばれる男は、真っ直ぐに京子に近づいて行く。


「初めまして、セラと言います。リンダさんから概要は聞いています。あなたが京子さんですか?」

京子のすぐそばまで来ると会釈をし、そう問いかけるセラ。


「あ、はい京子です」

そう言うと京子は立ち上がり軽く頭を下げた。


「京子ちゃん、奈々ちゃんのお友達のセラ君と椿姫つばきちゃんよ」

改めてリンダが二人の紹介する。


椿姫つばきで~す! よろしくお願いします! 京子ちゃんって呼んでいいですか?」

初対面にもかかわらず全く屈託のない椿姫。


「京子ちゃんで良いよ! よろしくね椿姫つばきちゃん? 椿姫つばきひめちゃん?」

京子が椿姫つばきの呼称に迷う。


「椿姫って書いて、『つばき』なんだけどお兄ちゃんには、『つばきひめ』って呼ぶことを義務付けています! 椿姫の言う事は絶対なのです~」

そうおどけて言う椿姫をセラがまた咎める。


「椿姫? 初めて会った方に失礼だよ!」

「いんだよセラ君。 あっ、セラ君で良い?」

京子がセラに問う。

「京子さんの好きに呼んでもらっていいですよ」

「じゃあセラ君、椿姫ちゃんよろしく」

椿姫の屈託のない明るさに京子も笑顔を見せる。


「京子ちゃん、セラ君にはだいたいの話はしているんだけどその青いノートのデータもセラ君に既に送っているわ。」

「リンダさん、だいたいの情報は既に把握しました。つまり、まだ概念化もされていない未知の空間に奈々ちゃんはいる。そして京子さんはその世界から戻ってきた。京子さんの記録から異空間? の性質ですとか死神? の存在もある程度把握できました。まだすべてを理解できたわけではありませんが結論から言うと京子さんが戻ってこられた以上奈々ちゃんにもまた戻る術は必ずあると言う事が現時点でのもっとも楽観的なものです。」


「そうね、対して漆黒の津波? そして死神? の存在が奈々ちゃんに危険を及ぼす可能性があるというのが悲観的な推測ね・・・」

リンダが語尾を弱めて言う。


「京子さん、その青いノートを僕に貸してもらえるかい?」

「え? ああどうぞ」

京子がセラにノートを手渡す。


「京子ちゃん、セラ君はちょっと特殊な能力を持っているの。サイコメトリーって聞いたことある?」

「サイコメトリー・・・透視能力? いわゆる・・・」

「超能力って奴ね!」

京子の言葉を待たずにリンダが言う。


「セラ君は物体に残る人や生き物の残留思念を読み取ることが出来るの。だからその青いノートからきっと京子ちゃんの失われた記憶や異空間での様子が把握できるはずよ!」

京子には、リンダが奈々の安否だけでなく異空間と言う未知の世界に対して科学者として刺激されているようにも感じられた。


「リンダさん、僕はサイコメトリーだとは考えていません。いわゆる超能力と言った特殊なものではなく僕の無意識の領域で行われている強度のロジカルシンキングの果てに導き出された極めて可能性の高い結論と定義付けています。つまりあらゆる可能性を加味しさまざまな仮説を立て論理的に推理した成果物です。もちろん物体からのイマジネーションも論理的推測の過程では重視していますが」

セラが事も無げにそう言うと。


「京子ちゃん、セラ君はあんなこと言っているけど私はかなり特殊な能力だと思っているわ。彼は無意識の領域に自由に入り込むことが出来るの。そしてその領域で様々な情報を得ているのではないかと私は推測しているわ」

「無意識の領域・・・で情報を得る・・・ユング・・・集合的無意識?」

京子は記憶をひねり出しながらリンダの言葉を理解しようとする。


「そうね、ユングの集合的無意識のことよ。人間の無意識の深層に存在する、個人の経験を越えた先天的な構造領域である無意識の層は極めて深くそして人類の極めて長い時間の経験の蓄積の結果構成されたもので、遺伝的に心に継承されていると定義されているわ。彼はその領域に自由に出入り出来る様なの」


「そんなことが可能なのですか? 」

驚愕する京子。


「私は専門外ではあるけれどもセラ君の精神活動についても注目していて、ここに来る他の仲間たちと検証しているの。セラ君の集合的無意識へのアプローチを観察した結果、集合的無意識は単に遺伝的、個人的に心に継承されるものではないと言う仮説に至ったわ。無意識の領域は全ての生き物、意思、思念に共通して存在する、つまり個で完結するのではなく全ての意識を持つ者が共有するスペースなのではないかと!」


「そんなことって・・・」

京子が絶句する。


「え~お兄ちゃん人の心の中に入り込めるってこと? 」

緊迫した雰囲気を椿姫が打ち破る。


「あは、椿姫ちゃんの表現わかりやすい! そんな感じでほぼ間違いないかな」

リンダが笑いながら言う。


「お兄ちゃんそんな変な力持ってたの! 今まで椿姫に内緒にして! あっ! もしかしてお兄ちゃん椿姫の心の中も覗いちゃったりしてたんじゃないの? 嫌っ! だから椿姫気持ちわかってて余裕な態度って言うか大人ぶってたのね! ひどい!」

なぜか胸のあたりを覆いながら椿姫が叫ぶ。


「椿姫?僕はそんな無粋なことはしないよ? 椿姫はたぶん・・・恋愛感情的なことを言ってるんだろうけど、仮にそうだとしたら僕は相手の気持を覗きながら恋なんてしないよ。そんな恋愛はちっとも面白くないし味気ないと思わない?」

「『そんな恋愛はちっとも面白くないし味気ないと思わない?』ってお兄ちゃん恋なんかしたことないくせに良く言うよ! 椿姫の気持もわからないボンクラのくせして! ってかそんなすごい力があるなら椿姫の心もじゃんじゃん覗いちゃって、ちゃんと椿姫をシ・ア・ワ・セ・にしたらどうなの? もうっ!」 

「ボンクラ・・・椿姫? それを言うなら朴念仁じゃないの?」

「そんなのどうだっていいもん!」

そう言いながら拗ねる椿姫。


「あはは。二人は仲良しなんだね! なんか見てるこっちも楽しくなっちゃうよ」

じゃれ合う二人を見て京子が声を出して笑う。


カフェリンダに来てからというも暗い表情であった京子が一気に明るさを取り戻した。

リンダもホッとしたように微笑む。


青いノートは、じっとしている。

周囲の様子を窺う様にテーブルの上で黙っている。

京子と奈々の想いを大切に大切に、しっかりと抱きながら。


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