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奈々、あたしはあんたのことを覚えていない。 あんなにかけがえのない時間だったのにね・・・

なんかもう・・・ここまで序盤に感じ始めてきた(笑)

もうちょっと引っ張ろうかな・・・

でも完結は必ずします!

「リンダ先生?」

カフェリンダの一席で青いノートを読みふける京子がリンダを呼ぶ。


「京子ちゃんどうしたの?」

そう言いながらコーヒーを京子の傍らに置くリンダ。


「あ、すみません・・・」

「コーヒーで良かった?」


「大丈夫です。」

「奈々ちゃんはどっちかって言うと紅茶の方が好きみたい。たっぷりミルクとお砂糖入れたのがね」

そうおかしそうに言うリンダ


「そうなんですか。で、リンダ先生。先生はこのノートの書かれている事どう思いますか?」

「どう思うって、それはつまり・・・異空間の存在について?」


「そうです。確かにこのノートは私の字で書かれています。だけどどれもこれもにわかには信じがたい事ばかり・・・こんな世界のこと誰が信じますか? しかも奈々ちゃん? は、いまだにそこに取り残されている・・・」

不安を一気に吐き出すかのように京子が言う。


「そうね、不思議な話ね。普通こんな事信じられないしもしかしたら誰かにからかわれている? なんて思っちゃうわよね。」

京子を否定することなくリンダが言う。


「京子ちゃん、私は今私たちが認識している世界が全てで、私たちの捉えている、感覚していることが全てだとは考えていないの」


「どういう意味ですか?」

京子が訝しげな顔をして言う。


「どんな学問の領域でも新たな発見により過去の認識が覆される可能性を秘めているわ。科学の進歩によってかつての常識が訂正されたり否定されたりね。まだまだ発見されていない、認識さえされていない事実がないとは言い切れないわ。かつての常識が今の非常識って、良くある話じゃない?」

微笑みながら言うリンダ。


「確かにそれはそうですが・・・今私たちが異空間の存在を認識するのはこの青いノートに書かれた私? が書いた記録だけです。しかも私は異空間での記憶を全く失くしてしまっているし・・・。」


「そうね、客観視するには材料が不足しているのも事実だわ。だけど2冊の青いノートの存在・・・。これは現実だわ。コピーしたわけでもなく同一のノートが存在し途中からその記述が変わっている。こんなことは通常ありえない。だけど事実私たちの目の前にそのあり得ない状況が発生している。と、すれば私たちはこの事実をもとにあらゆる仮説を打ち立て、少ない材料から真実に迫るしかないわ」


「はぁ・・・」

力説するリンダとは対照的に釈然としない様子の京子。


「京子ちゃん、コーヒーを飲んでいる間に青いノートをスキャニングしてデータ化するわね。念のためカフェリンダに元々在ったノートも同様にスキャニングして比較もね! それからデータ化した記録を私たちだけじゃなくてカフェリンダに来るみんなにも見てもらって一緒に考えましょう。一刻も早く奈々ちゃんがここに帰って来られるように!」


そう言うとリンダは青いノートを持って店の奥へと消えていく。

一人残された京子は窓の外を眺めながらコーヒーをすする。


京子にとってこの街はあまり馴染みのある場所ではなかった。

この沿線の電車は利用することはあってもこの駅で降りることはまずない。

窓の外は京子にとっては初めての景色だ。

少なくとも意識下にある記憶では・・・。


しかし青いノートには詳細にこの街の情景が描写されている。

奈々との日々の会話、街での各種データの採取状況。

そして漆黒の津波の信じられない光景ややはりこれも極めて受け入れ難かったが死神の存在の描写。


死神の姿形は元より、自分はその死神と闘い勝利していると言うのだ。

死神の倒し方や漆黒の津波が現れる時期への観察と考察まで記録されている・・・。


全て自分が見聞きし感じたように記録が成されていたが当然記憶にはない。


そして特に仔細に記録されていたのが奈々とのやり取り。

つまり日記の様なものだ。


たわいない会話から、奈々の驚くべき洞察力についてまでも触れられている。

奈々に関する記述には愛が感じられるな、と他人事のように思う京子。


その部分の記録はいつでも『二人で過ごした時を共有したい』、『大切な時間を忘れたくない』という想いに溢れていた。

早い段階で記憶については触れられており、内的な時間の逆光や元の世界に帰った時に記憶が消失することにも及んでいた。

極めて感覚的な要素は多いものの今となっては現実空間で記憶が消失することについては自分自身が証明している様なものだ。


青いノートには、毎晩奈々が眠った後、その日の様子を書き記していた自身の描写も含まれていた。


そこに不思議と悲壮感はなかった。


京子と奈々がなぜこの異空間に来なければならなかったのか? 

と言った部分についても自身の見解が書かれていた。


異空間にほぼ同時期存在した二人の共通点についての記録であった。


この部分と内的時間の逆光と言う現象の認識から導き出した自身の見解を今、こうして記憶を失くした状態で分析した時、あの異空間に自分自身が存在したことへ必然性すら感じさせられる。


しかし現状の自分の存在が異空間での存在と、現実世界での存在とで二分されているという不安定な状況にあるという認識が、その必然性に確信を持たせない。


「奈々、あたしはあんたのことを覚えていない。 あんなにかけがえのない時間だったのにね・・・あたしはそれを今、記録としてしか感じられないよ・・・あたしはそれがとても悲しい」


そうポツリとつぶやくと涙が一滴流れる。

心の底から湧き出るつかみきれない感情が京子の目に涙を流させた。


青いノートの中で何度も訪れているカフェリンダをボーっと眺めながら京子は異空間でも感じたことの無い孤独を味わっていた。




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