美味しい料理で胃袋をガッチリ握るの
奈々のこれまで見られなかった一面。
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キッチンで忙しく食事を作る奈々。
冷静になって考えてみるとやっぱりこの状況ってかなり信じられないくらい・・・ハッピーだよな?
こんなちょっとやそっとじゃお目にかかれない様な可愛い子と二人っきりで、しかもその子が俺のために料理してくれてる。
時々、いや・・・ちょいちょい、よくわからない事で怒られてる気がするけど、それだってどうなんだ?不幸って感じはしないぞ。
5分後の取り残された異空間にいるってことを除けば、俺は今かなりハッピーなんじゃないかなんて思いになってしまう。
いやいや、違うだろ?
この状況に甘んじててどうすんだ?
たとえ最上のハッピーを捨てる事になっても奈々をこの異空間から助けださなきゃならない。
これだけは、肝に命じておかなければ。
キッチンでは奈々が時折小首を傾げたり、微笑みを浮かべながら料理をしている。
俺はそんな奈々をボーっと眺めているだけでも生きている事に感謝できた。
「雅樹さん!出来ましたよ!早く食べて下さい!」
キッチンから奈々の声が弾ける。
奈々は手際よく料理をテーブルに並べる。
「雅樹さん早く座って。」
そう促され俺はテーブルにつく。
「どうぞ召し上がれ!奈々、一生懸命お料理しました。」
テーブルには彩の良いサラダとパスタが並べられデカンタに赤ワインまで用意されていた。
「奈々、すごいな!見栄えは言うまでもなくこんなに手早く料理しちゃうなんて!」
寸分のお世辞もなく本当に驚嘆の出来映え。
奈々のお姉さんのセンスの良い部屋と相まってまるで隠れ家的な小洒落たレストランに瞬間移動したみたいだ。
俺はその思いを奈々に伝える。
「雅樹さん大袈裟ですわ、奈々だってこれくらい出来ます。女の子ですから!」
それはよく知っている。しかも飛び切り可愛いいね。
「さあ早く食べて下さい!雅樹さんの大好きなニンニクたっぷりペペロンチーノと奈々特製ドレッシングのフレッシュサラダです。」
「いただきます!超腹ペコからこんなご馳走にありつけるとはやっぱりハッピーだ!」
そう言うと俺は料理に飛びついた。
「上手い!どれもこれも最高な味付け!ニンニクの効き具合といいドレッシングのスパイシーさといい全部俺好み!」
「本当!良かった、奈々頑張って作った甲斐がありました!」
俺は満面の笑顔になり、奈々もやはり笑顔を浮かべた。
「奈々は、よく料理するんだね?手慣れてるよ。料理って手順と要領の良し悪しで出来上がり違うよね。やっぱり奈々は頭良いからな。味付けも最高に上手いし!」
「喜んでもらえて良かったです!お料理はママに教えてもらったんです。女の子なんだから勉強だけでなくお料理もちゃんと出来ないとねって。女の子の魅力のひとつよって」
「それは言える!今時料理や家事は女性だけのものじゃないけどやっぱり料理が上手な女の子って魅力的だよね!家庭的って価値観に女性を縛りつけるべきでないってわかってはいてもさ。」
「ですよね、ママも言ってました。男の人はうつり気です〜ぐに心変わりしたり、ちょっと魅力的な女の子がいればよそ見をして、あわよくばなんてチョッカイ出すから、美味しい料理で胃袋をガッチリ握るのよ!そしたら、ちょっとやそっと可愛い女の子によそ見しても最後は絶対帰ってくるからって!」
グッ
奈々の言葉に思わず喉を詰まらせそうになる。
「大丈夫ですか?雅樹さん、ハイこれ。」
「ありがとう奈々。」そう辛うじて言い
手渡された飲み物をグッ飲み干す。
「これワインじゃないか。」
「ダメでしたか?」
「いや、美味しい。ありがとう奈々落ち着いたよ。」
そう言いながらさらに話しを続ける。
こんな何気ないリラックスした会話がうれしい。奈々のこともいろいろ知ることが出来るしね。
「それはそうと、素晴らしい教育方針のお母さんだね。」
奈々のママの弁に内心やや怯えていたのだが悟られない様に言う。
「ママは、パパの胃袋をガッチリ握っています。だから、基本的に自由人なパパですが・・・ママには絶対服従です。」
悪びれるでなく笑顔の奈々が言う。
「あ、は、は、やっぱりね。」
乾いた笑いの俺。
「それはそうとさ?さっき雅樹さんの大好きなニンニクたっぷりのペペロンチーノって言ってたけどそんな話したっけ俺?」
そうなのだ、俺は確かにニンニクたっぷりペペロンチーノが大好物で自分でもよく作って食べる。美味しいペペロンチーノの店なんか見つけるとブログにアップするくらい好きなんだが、奈々とそんな話しした記憶がないのだ。
「え?あ?あのしましたよ!やだ雅樹さん忘れてしまったの?」
なんだか慌てた様に言う奈々。
「え?そうだっけ?なんだかいろいろ難しい話しをしてその度に奈々に怒られた記憶はあるけどペペロンチーノの話しなんてしたか?ってかそんなほのぼのした話しする暇あったっけ?」
そう俺が言うと。
「ありました、ありました・・・え〜っとえ〜っと・・・そう!最初に一緒に入ったコンビニで雅樹さんペペロンチーノが大好きだって!」
「なんだかすごい間があいたな?奈々?今考えてないかそれ?」
「そんなことありません、ちゃんとあの時雅樹さん言ってました!もう細かいことは気にしないではい、ワインもっとたくさん召し上がって下さい。姉の自慢の赤ワインですから。」
そう言いながらワインを注いで俺に勧める奈々。
「いやいや、そんなに飲んだら酔っ払っちゃうって。」
「酔っ払っても良いですから飲んで飲んで〜。」
「なんか誤魔化されている様な・・・」
しつこく食い下がる俺に奈々が続けて言う。
「奈々は誤魔化してなんていません。せっかく作ったお料理が冷めちゃいますからどんどん食べて下さい!」
と、えらい剣幕で言う。
「ハイ、食べます。」
「美味しい?」
「大変美味しいです。」
「って奈々にすっかり胃袋を握られてる感じなんですけど!」
「やだ雅樹さんそんなこと言って!」
そう言うとふたりで一緒に笑うのだった。
柔らかな灯りが束の間のふたりの団欒を優しく照らす。




