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ここでそういう超現実的な突っ込み?

奈々と雅樹のしばしの休息。

異空間で二人がその体を休める場所とは?

「ん?どうした奈々?」

たった今まで逡巡していたこの街と奈々への想いを振り解く。


「もう!またぼうっとして!ロマンチックな言葉のひとつくらい女の子は期待するものですわ!」

奈々は頬を膨らめ怒った風に言うがその目に怒りの光は無い。


「ごめんごめん。俺って朴念仁でさ、女の子慣れ?特に奈々みたいに飛び切り可愛い女の子に慣れてないおじさんだからさ、柄にもなく緊張しちゃったみたい。」


「ふーん・・・ほんとかな?」

まじまじと俺の顔を見ながら言う何気ないその姿ですらこの世の者とは思えないほど可愛いんだって・・・。


ってか『飛び切り可愛い女の子ってとこは否定しないんだ?

やっぱりなんだかんだ言って自分がとんでもなく可愛いってことは自覚してんだな。


ってのは敢えて言わないでおこう・・・・。

余分な口を聞くとまた災難の元だ・・・・。

口は災いの元!

が、奈々の場合は沈黙も時として災いの元になるから気が抜けないのだが・・・。


「ほんとほんとーおじさんは嘘をつかないことでこの辺りでは有名なのだよ!」

で、無難にお茶らける・・・。

なんだかちょっと悲しくなっても来るのであった。


「・・・・・・。」

あら?無言?


「ん?何?奈々・・・。」


「おじさんは否定してあげるっ。それに・・・」

「それに?」


「雅樹さんは優しい人だって事も奈々は知ってます!」

「あ、ハイ。ありがとうございます・・・」


「でも・・・・ほんとに嘘つかない?」

「つかないつかない、奈々には特につかない!」


「ほんと?」

「ほんとほんと!」


「奈々、うれしい・・・」


っと・・・急にそう来るのね。

全く予測がつかなくて怖いは!

奈々とのやり取りはジェネレーションギャップ以上に読みにくいんだって!


しかし・・・おじさんは否定してあげるって・・・喜んでいいやら微妙だな。

まっ素直に喜んでおくか!


「雅樹さん、今夜はと言うか奈々にとっては今夜もなんですが、ここに泊まります!」

そう言うと奈々は目の前の大きなマンションの上層部を指差す。

この界隈でもかなり高級の部類に入るマンションだ。隣には俺の知人が通っていたジムがある。


「奈々はここで寝泊まりしてたんだ。すごいな高級マンションだ!」

「さっ行きましょう!」

そう言うとさっさと入り口に向かいセキュリティーコードを打ち込み難なく内部に入る。

どうしてすぐに開錠できたのかとの質問をする間もなくその先にあるエレベーターで最上階近くまで上昇。


「雅樹さんここで降ります。」

奈々に言われるままに移動する。


「ここが今夜泊まるお部屋です!」

と言うや否やまたもあっけなく暗証番号を入力し開錠する。


「あーホッとする!」

広めの玄関からリビングまで小走りに進んだ奈々は、部屋の明りを付けた後ソファーにちょこんと座る。


ゆっくり部屋を見渡す俺。

「ここって奈々のマンションなのか?すごいな・・・。」

ゆったりとした間取りにセンスの良い家具。しかし生活感のあまりないすっきりとしたレイアウト。


「奈々は自宅住まいでパパとママと暮らしています。そんな感じでしょ?」

「ま、まぁ奈々のイメージは育ちが良くて自宅住まいで家族に大事に大事に守られてるって感じだよな・・・。」

「もう、また奈々のこと子ども扱いする!」

ちょっとむくれた振りをするが怒ってはいないようだ。


「そう言うんじゃなくてさ、しっかり家族に守ってもらって大事に大事に育ったって印象?」

「奈々ってそう言うイメージなんだ。ふ~ん・・・。そうそうそれでね、ここは奈々のお家じゃなくっておねえちゃんのお家なんです。」


「なるほど、だからセキュリティーコードも知ってたのか。」

さっきまでの疑問が一気に解消する。


「そうです、奈々のお家とお姉ちゃんのマンションはそんなに離れていないんですけどおねえちゃんはここで暮らしているんです。それで奈々も好きな時にここに遊びに来てました。」

「良いね!お姉ちゃんと仲がいいんだね!」

「おねえちゃん大好きです!スポーツも勉強も出来て何でもできるんです!」

嬉しそうに大好きな姉の自慢をする。


「そっかー良いな仲良し姉妹って。奈々の姉さんだから当然美人だろうしね!」

っと・・・しまった。

うっかり『雅樹さん不埒っ!』って奈々お得意のフレーズを引っ張り出すような不埒ワードを言ってしまった・・・。


「お姉ちゃんはすごく美人ですよ!自慢の姉です!お姉ちゃんと一緒に歩くとみんな振り返るの!」

「そりゃそうだろ奈々だけだって十分みんな振り返る所にさらに美人お姉さんじゃみんな振り返るさ。」

・・・・良い意味で期待を裏切るリアクションにちょっと、いやすごくホッとした次の瞬間・・・。


「ん?・・・・雅樹さん?まさかお姉ちゃんのことを・・・お姉ちゃん奈々より7つ年上だから雅樹さんとは奈々より年齢も近いし・・・。」


おいおいどんな急展開だよって!毎度のことでもこれは全く予測がつかないぞ・・・。

「何を小声でぶつくさ言ってんだよ奈々?」

と、聞こえない風を装いまたも訪れる災難からの回避に全力を尽くす俺・・・。


「・・・雅樹さん?奈々とお姉ちゃんどっちが可愛い?」


すみません、私はあなたのお姉さんをまだ見たことがないのです・・・。

これだけ聡明な奈々が時々理性を感じさせないリアクションを繰り出すことへの理解が進まない・・・。


「馬鹿だな奈々の方が可愛いって!」

おい!お前はまだ姉さんの顔を見たことないだろと、心の中で自分に突っ込む。


「・・・嘘!って言うか雅樹さんまだお姉ちゃんのこと見たことないくせに!」

・・・それがわかっているのなら是非そういった質問はお姉様とお会いした後にしていただきたかったです・・・。

「あは?そうだったねまだ奈々のお姉さんのこと見たことなかったね!だがしかし!お姉さんを見るまでもなく俺にとってはこの世で奈々が一番可愛いのです!」

・・・奈々の場合このくらい言い切った方が良い方向に話が進むパターンが多い・・・。

どうだ!

「・・・それって異空間には奈々と雅樹さんしかいないからじゃなくて?」

ここでそういう超現実的な突っ込み?

まぁ・・・奈々らしいと言うか・・・。

では引き続き・・・。


「現時点でのこの空間における狭義な意味での表現ではなくこの場合、全宇宙を対象として論じていると認識していただき、その上で私にとってこの世で一番可愛いのは奈々であると解釈して頂けますと幸いであります。」

殊更ややこしく仰々しく言うことで・・・・煙に巻きたい・・・。


「・・・・・。」

無言だが気のせいか頬の筋肉が緩み表情が軟らかくなってきている。

って奈々張りの観察力になってきている自分に気が付く・・・。

「それはいつからそう思っているんですか?」


「はっ?・・・あっ!ずっと前からそのように認識しそれ以後普遍的恒久的に微塵の変化も劣化も変更もなくそのような確定的安定的な認識で折る所であります。それはもう悠久の彼方からと言っても良い程私にとってはず~っと前から・・・。」

って・・・何やってんだこのおっさんは・・・。


「プッ、雅樹さん可笑しい。わかりました・・・それだけ言って頂ければ奈々も納得せざるを得ません。!でもお姉ちゃんの写真は絶対見せません!」


「ハイ・・・」

でもそう言われると是が非でも見たくなるのが男心、と言う言葉はグッと飲み込み胃の奥へ落とし込んだ。


「雅樹さん?奈々はお食事の前にシャワーを浴びてきますからソファーでくつろいでいて下さいね。お姉ちゃんはお酒好きなので冷蔵のビールとかよかったら飲んでて下さい。」


「ありがとう奈々。そうさせてもらうよ。」

戦禍が去った後の束の間の休息。

戦士の気持ちが何となくわかる気がしてきた。


バスルームに向かう奈々を横目で見送りながら冷蔵庫に進む。そしてビールを取りだして遠慮なく飲む俺。


上手い!

考えてみたら久しぶりに口に物を入れた・・・。

その最高の一杯が俺を眠りに誘う・・・。

最高の誘惑。

甘美な眠りへの誘い。


窓の外ではわずかに残された電力を惜しげもなく消費して夜景が広がっていた・・・。





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