奈々こそが俺の現実(リアル)
タイトル替えたらアクセスが激減した?何でだろう?誰かわかるかたいたら教えて下さい。
あと、小説中で描かれている地方都市はどこでしょう?クイズ〜!
わかった方はコメント下さいね。
奈々と連れ立って歩く日が来るなど現実空間では思いもよらない事態であったが、ここは俺の仕事場もある馴染みのエリアだ。
奈々の言うカフェリンダに時々コーヒーを飲みに行っていたのも本当だ。
このエリアは都心までも比較的近いわゆる臨海副都心のベッドタウン的な街。
イメージは若い都市だが、御多分に洩れず高齢化は進んでおり、高度経済成長期に相次いで建設された巨大団地はその老朽化と共に空き部屋を増している。
中には、ほとんど一棟丸々外国人が住んでいる箇所もある。
高架駅周辺には、彼ら外国人が故郷の品々を購入する独特の雰囲気と匂いの立ち込めた店や、大小様々の小売店、若者向けの小洒落たバーなどが立ち並んでいる。
それらの店舗には俺もしばしば訪れたものだ。
奈々もこのエリアに居たんだな、と思うとなんだか不思議な気持ちになる。
現ではすれ違ったとしても互いを認識することも無く、また決っして交わることのなかった二人がこうして異空間で巡り会う。
性別も世代も境遇も違う。
つまり生息水域が全く違うのだ。
生息水域が違う生物が、共生することは決っして無いのだ。
全ての事象は、偶発的に生じるのではなく、必然を伴って生じる、と考えていたがこの出会いの必然性については正直疑問を感じている。
それ程二人の間のそもそもの距離は遠いのだ。
ほんの近くを行き来していたにも関わらず。
奈々はこの街で仲間達と共に過ごしていたのだろう。
やはり同じく多くの時間をこのエリアで費やしていた俺とは全く無関係に。
繋いだ手から奈々の温もりが伝わって来る。
指先までも完璧に美しい。
同じエリアにこんなにも美しく愛くるしい女性がいたんだな。
感慨に耽けつつもその事実が、俺の人生に全く関係が無かった事に一抹の淋しさを覚える。
ともあれ奈々は今、俺の隣にしっかりと存在している。
無事元の空間に二人で、もしくは奈々だけでも帰るその日まで俺はこの手を離さない。
たとえ奈々の嫌う地獄に落ちようとも!
無言で歩く二つの影。
しかしそこに冷たさは微塵も無く、まるで一つの大きな温もりがふわふわと漂っているようであった。
「雅樹さんっ」
奈々の俺を呼ぶ声が、ぼんやりと夢想する意識を現実に引き戻す。
異空間に在って唯一、奈々こそが俺の現実。
俺の存在意義の全てだ!




