もう奈々から離れないで
うーんだいぶ煮詰まってきた・・・。ながーい電車でのシーンに終止符をうって外で奈々と雅樹を動かそう!そろそろ他の登場人物も欲しいな・・・。
あまりの剣幕に何も言えなくなる俺。
既に奈々の耳には俺の言葉は正確に届いていない・・・・。
「奈々、俺は奈々と離れても大丈夫とかそういうこと言ってるんじゃなくて、例えこの身を無間地獄に落とそうとも奈々だけには幸せになって欲しいって気持ちで言ったんだよ。」
誤解を解こうと必死になる俺。
「いいえ、奈々は雅樹さんのそばにいて雅樹さんを守ります。だから雅樹さんも奈々のそばにいて奈々を守って下さい。雅樹さんが地獄に落ちたのなら奈々も頑張って地獄に行きます。だからもう奈々から離れないで下さい。」
いきなりの急展開、超弩級のストレートな表現にたじろぐ。頑張って地獄に行くって・・・そんなの頑張らなくていいから。
しかし・・・『もう奈々から離れないで』って・・・。
これまで何度か感じたことのある違和感のある表現だ。
まるで、以前俺が奈々のそばにいた?みたいな。
「奈々?俺は奈々から離れたりしないよ。だから頑張って地獄に行くなんて考えなくても大丈夫だよ。でも・・・奈々はどんな悪い事して地獄に来るつもり?」
「・・・・・。」
きゅっと口を結んで考え込む奈々。
「奈々にはやっぱり地獄に落ちるような悪い事なんてできないよ。さっき自分でも言ってたじゃないか。『奈々は性格上、地獄に行くような悪行は出来ない。』ってさ。」
「出来ます!・・・ポイ捨てとか、立ち読みとか、歩きスマホとか・・・。」
「オイオイ、そんなんで地獄に落ちちゃうんだったら人類ほとんど地獄落ちで、地獄大混乱だわ!」
「だめ・・ですか・・・。」
「てか奈々はそれすらも出来ないだろ?」
「しません・・・。」
しゅんとする奈々。
「大丈夫!俺は地獄に落ちないように不埒な事も言わず清貧に生きていくから・・・。大丈夫、女性なんかには目もくれず修行僧のような人生を送るから。本当に心配しなくても大丈夫だから。」
「なんか・・・それもどうかなって・・・。と言うか嘘っぽいし・・・。」
奈々が訝しげに俺の方を見る。
「いやいや、奈々心配するなって!」
「・・・雅樹さん、嘘ついたらダメなんですよ・・・・。なんか殊更言われるとどうも嘘っぽくて。」
「わかったわかった、極自然に地獄に落ちないように頑張りま~す。」
「ハイ!」
やっと奈々の機嫌がが戻りホッとする俺。
これで落ち着いてシートに座り身も心もリラックスできる。
電車は俺にとって目的地に向かうための乗り物であり休息の場でもある。
職場へ向かうまでの間、仕事から家に帰るまでの間、この間での気持ちの入れ替えをする空間でもある。
死神から逃れて電車に乗ってからずっと奈々と議論してた気がする。
刺激的だが・・・疲れた。
ん?肩に軽い重みを感じる・・・。
「奈々?」
奈々が俺の肩に軽くもたれかかって微睡んでいる。
奈々も疲れたよな・・・。
目的地に着くまで俺も少し休もう。
電車は確実に目的地まで運んでくれる。
ふと窓の外に目をやる。
高架の左手に見える空がオレンジ色に染まリ始めている。
もうそんな時間か。
もうすぐ夜が来る。
一日を人間の生死で例えるならば、夜は死。
そして死を経て夜明けを迎え再び蘇る。
奈々と一緒なら静寂の夜も恐れることはない。
完全なる孤独と静寂は、リアルな死との境が希薄すぎる。
そんなことを考えているうちにいつしか俺も微睡みに誘われていた。




