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異世界転生したら・・・でした  作者: 稲田すずめ
第1章
9/19

初めての無断外泊

ラフィーの学校が休みだった日、彼女の母にお使いを頼まれた。

もちろん頼まれたのは俺じゃなくて、ラフィーだ。

「ショータも一緒に行くよ〜。」

正直なところ気が進まない。

具合が悪いんだよ〜。と必死に考え、サボりたいのがバレないようにした。

「カーディの街には、綺麗な若い子も沢山いるわよ。」

「お供させて頂きます。ご主人様〜〜」

このご主人様もエロうさぎの扱いにだいぶ慣れてきたようだ。



カーディの街は素敵な所だった。

古くからある落ち着いた街並、石畳の道、海が近いのかカモメの鳴く声がし、海の香りが風に運ばれてくる。

街の中心部には様々なお店が立ち並び、綺麗なお姉さんもそこそこいた。

ラフィーよりも素敵な子は居なかったけど。


「イテッ」

ラフィーにペチペチ叩かれた、どうやら照れているようだ。


頼まれた買い物は、調味料などが多く、数件のお店を回ったら、意外に早く全てが揃った。


「そうだ、まだ時間があるから、家とは反対方向だけど、カーディのお城に寄り道しましょう。」

「城壁が高く、とても素敵なお城よ。ショータもきっと気にいるわ。」

なぜか沢山のカモメが歩いている道をラフィーと並びピョンピョン歩いていく。

途中何度もカモメに突かれそうになり怖い思いをした。

ラフィーもようやく、カモメには子うさぎがご馳走に見えるらしいと気がついて抱き上げてくれた。

ようやく、周りを見渡す余裕ができる。

なるほど、確かにこれはすごい、実用的で高く丈夫な城壁に覆われたお城が見えてくる。


しばらく歩き続けてお城の城壁にたどり着く。

「素敵なお城でしょ?ビュー家の城主様がお住まいになっているのよ。」

ラフィーはうっとりとしているようだ。

近くから、見上げるとすごい迫力だ。このままファンタジーものの映画ロケ地になれそうだ。


その時、ガラガラガラッと音がして城門が開いた。

とても色っぽい馬に引かれて、綺麗な装飾が施された馬車がゆったりと通りすぎて行く。

ラフィーより早く俺の耳は異常に気がついた。

「ゴオオオオオーーー」

何処からか風を切り裂くような音が聞こえる。


「危ない!!伏せてラフィーーー」

状況がさっぱり分からないまま城門の隅に身を伏せる。


ピギャアアアアアアアア〜〜〜〜〜オオオオオ


何かが吠える。

空気がビリビリと震える。

城壁の一部が吹っ飛び、砕け散った岩がさっき通った馬車をバラバラにしている。

その得体の知れないものは、どうやら街の方へ移動して行ったようだ。


ラフィーーーーー

ラフィーへの念話で彼女の名を叫ぶ!!!

「------------」

あまりの出来事にラフィーの思考は真っ白だ。


何度も叫びながら、呼び掛けるが反応が無い。」


仕方ない。

ガブってラフィーの腕に噛み付く。

俺も多少はパニックになっていたのだろう。ちょっと力を入れて噛みすぎた。

口の中に鉄の味がする。


『!!!!」

ラフィー!!気が付いた。この場所はまずい、早く身を隠せる場所に移動しないと。


「ショータ!!!急にそんなこと言われても、どうしたらいいのか分からないよ。」


その時、

「うぅうう、誰か〜〜、居ないか。」

馬車の近くにうごめく人影が見えた。どうやら怪我をしているようだ。

迷うことなく、ラフィーが駆け寄って行く。

さっきまでオロオロして居たのに、怪我人を見つけて、迷うことなく飛び出すなんて!!

本当に良い女だな、ラフィーは!!

俺もぴょんぴょんと駆け寄る。


近ずくにつれ、馬車の惨状が明らかになる。

怪我をした人の奥さんか娘さんだろうか、大きな岩に馬車ごと潰され、原型がわからない。ただ布切れの具合から、女性だったんだろうとわかる。怪我をしている男性は足を挟まれて骨折しているようだ。

ラフィーは必死に瓦礫と馬車の破片をどかしているが、足を挟んでいる木材はとても動きそうになかった。

馬車を引っ張っていた色っぽい牝馬は、どうやら致命傷のようだ。

すまん、俺には君を助けられそうに無い。


いいえ、最後に貴方のような立派な牡馬に会えて幸せでした。


???今までラフィー以外と念話出来たことなかったのに、どうして?

私にもどうしてか判りません。もう目も見えないのに存在を感じるのです。

貴方が優秀な牡馬だと・・・

その一言を残して牝馬は亡くなってしまった。

でも、ハッキリと分かった。今まで何の意味も無いと思っていた「スキル」と「称号」の効果が有効化されている。

試してみるか、ラフィーが手こずっていた木材に1馬力の能力を使って押してみる。

小さいうさぎとは思えない力で動かすことが出来た。

自分でも信じられなくて軽く動揺する。


ようやく、城門の中から家来か使用人らしき人達が駆けつけようとしているのに気がついた。

ふっと、助かったような気がして力が抜ける。


クンクン、焦げ臭い。

何気なく振り向くと、カーディの街が真っ赤な炎と黒い煙を出して燃えていた。




燃える街をみて、ラフィーは気を失ってしまった。

そして、使用人達により、馬車の怪我人と共に城の中に運ばれた。


馬車の怪我人の傷は酷いようだが、命に別状は無いようだ。

同じ医者がラフィーも見てくれて、ずっと彼女に寄り添っているうさぎに驚いていたが、

「ラビットくん、君のお姫様は大丈夫だよ。小さな傷は手当てした。あとは、ショックで疲れているから、今日はこの城で休みたまえ。」


「おお、君この子を客室まで運んでくれるか、よろしく頼むよ。そうそうラビットくんも一緒にな。」

使用人がラフィーを運んでくれた。


素敵なお城のフカフカのベッドに二人きり。

とても素敵なシチュエーションなのに心が晴れない。


「ラフィー、君はいったい。」

俺もいつしか眠りについていた。







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