うさぎの世界で・・に出会う
家畜になった後も俺の転生は続いていく・・・・・・
哺乳類に転生する事が多くなった気がしたが、魚や鳥への転生もあった。
シーラカンスとなり深海を泳ぎ、ウグイスでは托卵されホトトギスのひなを育て、シロフクロウとなり主人の身代りとなり。そしてある時は、マガンの群れと旅をし、生け贄として死んだガチョウにもなった。
スキル「耐圧」「さえずり」「隠密行動」「身代り」「献身」
称号「生きた化石」「さえずり」「托卵おとこ」「生け贄」
そしてある時、俺はうさぎになった。
ぴょンぴょン跳ねて、耳が長くて可愛いうさぎである。
自分の姿を見ることは出来ないが、可愛い子うさぎのような気がする。
たぶん。
土の中にある巣で一緒に生まれた兄妹も可愛い、もっふもふのフワフワである。
喜びをかみしめ母うさぎの乳房に吸い付いた。
称号「授〇プレイ」
相変わらず変な称号だ。
でも他の哺乳類になった時は、こんな称号無かったのになぜ今ごろ??
いままで数多くの思い出したくもない称号を手に入れてきたけど、これは酷い。
こんなゲスな称号を考えたのは一体誰なんだろう。
でも俺、今は子うさぎだし、関係ないじゃんと結論づけて再びミルクにむさぼりつく。
そんな幸せな日々だった。
その日、父うさぎは出かけていなかった。
いつもならば、もう帰ってきているのに。
突然一緒に寝ていた母うさぎがビクッとした。
耳と鼻を動かし警戒している。
変な音と臭いがする。
ワンワンワンワンわんわんわあんわんわんんんんんん・・・。
振動が近づいてくる。
一瞬のためらいも無く、すぐさまみんなが土の中のトンネルを走り出す。
必死で母うさぎの後を追う、複雑な分岐を通り抜ける、なんども右に左に曲がりぬける、そして一気に出口から飛び出した。
その瞬間、自分は罠に引っかかった……
また転生する。
・
・・
・・・
・・・・
くんくん
美味しそうな香りで気がついた。
グツグツ何かを煮込む音と、トントントンっとリズム良く何かを刻んでいる音がする。
おなかがぐーっとなった。
誰かがご飯の準備をしているようだ。
温かいものを食べられるなんてひさしぶりだなぁ。
ーーー目を開くと、もの凄く高い天井が見える。
周りは木の壁で囲われていた。
さて、起き上がろう。
ゴソゴソ
死んで転生したと思っていたが、子うさぎのままだった。
しまった!と思ったかもう遅い。
トントンというリズムが途切れ女性が顔を出す。
目が合ってしまった。
ニコッと微笑む女性。
「ラフィー、ちょっと台所まで来て~~」
トコトコトコ
「はい、何ですかお母さま。」
少女らしき声がする。
「ラフィー、そこの箱に子うさぎが一羽まだ残っていたの。」
「一緒にラビットのシチューにするから、外のお父さんの所まで持っていって。」
「今なら、剥いだ毛皮の処理をしていると思うから、一緒にお肉にしてもらって。」
助かったと思ったのもつかの間の死刑宣告。
ラフィーと呼ばれた少女に捕らえられ、木箱から出される。
家はあまり裕福そうではない民家だった。
それより、ラフィーと呼ばれた少女。
金色の瞳、くりっとした睫、長く輝くサラサラとしたブロンドの髪、その姿はまるで映画に出てくるお姫様のよう。
好きな人にはたまらないかも知れないが、盛り上がりの少ない胸がちょっと残念な感じだ。
そんなちょっと邪な考えはばれなかったと思うが、彼女の瞳に写る自分の姿を見たら金縛りにあったように動けなくなってしまった。
「あら、この子大人しいのねぇ。」
俺を手に持って楽しそうに廊下を通り抜けていく。
きっと今日のごちそうが増えたことが嬉しいのだろう。
戸を開け庭に出る。
日差しも明るいし、風がそよぐ気持ちのいい天気だった。
そして、庭の片隅の台の上では、父母や兄妹が血にまみれた毛皮と肉と臓物になっていた。