わたしが教えてア・ゲ・ル
リーン
上品な鐘の音が部屋に響く。
どうやら、もう帰ってくるらしい。
下界とは時間の進む速さが違うから、忙しかったり、暇を持て余すって事は無いけど、
せめてスマホ位は使えるようになって欲しいなぁなんて考えながら、セットとメイクを整える。
うん、バッチリ
さて、行きますか
あれ?姿が見えないなぁ。
「キャっ」
危なかったぁ。
アメーバ男を潰してお気に入りのサンダルを汚すところだった。
ゆったりとした動作で足を組み、いすに腰掛ける。
「あら、お帰りなさい、転生楽しんできましたかぁ?」
優しく耳が無くても判るように、アメーバ男の魂に語りかける。
「うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき、うそつき。」
どうも単調な生活で思考も単純になってしまったようだ。
「一体何をそんなに怒っているのかしら?」
実はレポートに目を通して知っているけど、本人の口から言わせよう。
「ミスの償いで、異世界転生したんだ。」
「チート能力で、ハーレムうはうはにしてくれるんじゃないのか。」
「そんな事で怒っていたの、可愛い子ね。」
「あなたの転生した田んぼでは、可愛いアメーバちゃんが一杯居てハーレム状態、繁殖活動(細胞分裂)だって出来たんだから、何も間違って無いでしょ?」
{!???!!?!?!・・・!」
今ごろ自分がアメーバになっていることに気がついたみたい。
「それに、私、異世界転生なんて一言も言っていないわよ。」
「地獄行きか、転生か選びなさいと言っただけ。」
「!!!!!」
ようやく罪を償うのは自分で、転生が罰だと分かったようだ。やれやれです。
「もう、イヤだ・・・」
「こんな転生なんてやめたいよ。」
泣いちゃった……ほんとバカな男、これじゃ悪魔に簡単に騙されるし、働かせられる訳だよね…
「残念だけど、それは契約により叶えられないの、ちゃんと説明したはずよ。」
「さぁ次の転生を行い、その罪を償うがいいわ。」
祈りを捧げると、サンダルのすぐ先にある干からびかけたアメーバが光に包まれる。
そのまま転生させても良かったけど、意欲が無くなっても困る。
組んでいた足をゆっくり組み換えてあげた。
彼の魂が喜びで震えているのが判る。
そう言えば、スキルとガイドの事を教えてあげるつもりだったのに、転生させちゃったなぁと思い出したけど、転生の光はもう消えかけていた。
まぁ、今度会う時にでも説明すればいいわよね。
もっともそれまでには、数千万の転生と果てしない時間を過ごしているだろうけど。
さてと、これでお仕事終了~~。
そろそろ急がないとガブリエルとのお茶の約束に遅れてしまう。
すでに準備は万端、お気に入りの手提げバッグを手に取り、下界へと飛び降りた。