ファションモンスターとすっとぼけ
キリがいいので更新しちゃいます!
リービッヒに連れられてやって来た詰所で、カケルにまさかの展開が!?
(はぁー...)
俺は現在、詰所に向かって歩みを進めている。隣を歩くのは、お世辞ではなく美形で長身の男性である。銀色の甲冑を見事に着こなしている。名はリービッヒ・ストークス。もし俺が女性であったならば、胸がドキドキなシチュエーションなのしれないがそうではない。俺は、至って健全な男子大学生である。
と、そんなことはどうでもよくて、詰所とは騎士団の詰所のことらしい。
アルレディア王国はかなりの小国であるが、国の巡回兵の他に騎士団と呼ばれる組織が存在しているみたいだ。仕事内容は、違法冒険者の取り締まりや、出兵時の指揮など多岐にわたるようだ。今回のケースは前者の例に近いと思われる。
「貴殿はどこの国の出身なのか?」
リービッヒは何気なく聞いてきた。
(やべえ、一番困る質問きたよ...。ジャパンは論外として黄国?とでも言っておこうかな...)
「まあ、無理に喋らなくて結構だよ。その奇妙な衣装...いや、お召し物から察するにどこかの国の貴族でしょうからな」
(え?今、心の声が聞こえたよ?奇妙な衣装って...。たしかに自分が見ても奇妙だよ!てか、同じような格好の人全然見かけないと思ってたけど、この国のファッションじゃないのね...)
俺は、この場にいないエルフレッドを心の中で責めるのであった。
□
そんなやり取りをしていると、騎士団の詰所に到着した。騎士団の詰所という割にはあまり大きな建物ではなく、ちょっと大きな屋敷と言った具合であった。庭のような所に噴水があり、中央には八人の男女の像が円を描くように配置されていた。どうやら、約100年前の伝説の争いの人物たちを象ったものらしい。ちなみに、騎士団の人数もこれに倣い八人で構成されているとのことだ。予想以上に歴史が浅く、騎士の数が少ない、と思ったのはここだけの話である。
「では、こちらから入ってもらおうか」
そう言って入り口まで誘導してくれた。建物の内装はというと、屋敷風な外観とは異なりノスタルジックであった。例えるならば、警察署や市役所といった感じである。初めに聞いた時は、騎士が八人だけという話であったが、騎士見習いなる者達がそこに数多くいた。
「お疲れ様ですリービッヒ様」
「ありがとう。お務めご苦労様、テッド」
「はい!」
テッドと呼ばれた男は、リービッヒの労いの言葉に嬉しそうに返事をしていた。まるで、犬が擬人化したようだ。尻尾が生えてても何ら疑問がない感じだ。
「ところで、そちらに連れていらっしゃるのは...最近噂の冒険者狩り...ですか?それにしては、聞いてた話より線が細いし服装も―。」
「いや、冒険者狩りは既に死んだよ。こちらの御仁は、その冒険者狩りが殺された所の目撃者だ。なので詰所まで来てもらったのだ。くれぐれも無礼のないように」
「あ、すみませんでした!」
(もう、服装のこといじるのやめて...)
この服装が如何に変だと言うことを確認した後、とある一室へと案内された。
キプレス家の城にて衛兵に連れて行かれた部屋と少し似た小部屋だった。
「狭くて申し訳ないが、どうぞ座ってくれ」
「了解です」
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一方その頃、キプレス家の城内にある剣の修練場では、鼻息を荒くして剣を振るう女性がいた。
ミラ・キプレスである。今日はすこぶる機嫌が悪く、相手をしている模擬戦相手もタジタジという具合である。
「ミ、ミラ様、もう少し手加減をしてはくれないでしょうか?」
「うるさいわね!戦場でも同じこと言えるの!?」
「そ、それはそうですが...」
「じゃあ文句言わないでやり返してみなさいよ!」
何とも暴論である。そもそもミラは、生まれてこの方、戦場になんて出たことない筈である。
意見も模擬戦も一方的過ぎて、いじめっ子といじめられっ子の構図である。
(もう!なんで勝手に出かけちゃうのよ!せっかく久々にエルフレッドと模擬戦出来ると思ったのに!大体、誰なのよアイツ!)
「ムカつくーーー!」
叫び声と同時に繰り出された攻撃により、男の手にしていた模擬剣がキーンッと音を立てて宙を舞った。
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「ふむ、特におかしな点はないようだな」
「それはよかったです。あまりお役に立てなくてすみません」
「滅相もない、むしろ賊を殺して去っていった者の情報を提供してもらい感謝します」
なんとか事情聴取を終え、ホッとひと安心した。途中、火の玉を剣で真っ二つにしたという話をしたら、見たことないな...可能なのか?と少し懐疑的な視線を向けられたが何とか誤魔化せたはずだ。ちなみに、何となくエルフレッドの名前は伏せておいた。
「ところで、貴殿はどこの宿にご宿泊か?それとも、王族や貴族、大商人などの来賓であるか?」
「いやー、宿とかはとってないですね...」
と、ここで俺は名案を思いついた。キプレス家に何とか連絡をとり、エルフレッドに身分を証明してもらえばいいではないかと。
「あ、そうだキプレス家に連絡とってもらうことはてきないですか?そこに、エルフレッドという知り合いがいるのでお願いしたいです」
「なんと、キプレス家の来客でしたか。エルフレッドなる人物は耳にしたことがありませんが、すぐに遣いの者を向かわせます。それまでは詰所の方にいて頂くことになりますが、よろしいですか?」
「全然平気です、わざわざすみません」
(やっと何とかなりそうだ...まだこっちの世界に来て半日も経ってないのにな...)
俺は安堵し、使いが帰って来るまでの間、リービッヒと何気ない会話を続けたのであった。途中にテッドが乱入し、リービッヒ様の素晴らしさなるものを語りだした時は、リービッヒ共々苦笑いしか出来なかったのはここだけの話である。
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「失礼します!騎士リービッヒ・ストークスの遣いで参上致しました!お伺い致しますが、ミタニ・カケルなるお仁が来客としていらしていますでしょうか?エルフレッド様なるお方のお知り合いだとの事です!」
リービッヒの遣いは、キプレス家の当主である、セイブル・キプレスの前で跪き質問をした。
セイブルは、オールバックの強面な顔で遣いの者を睨み何かを考えているようだ。
少しの間の後、
「ミタニ・カケルなる人物の名は聞いた事がない。それどころかエルフレッドなる名前の使用人は当家では雇っておらん!」
「なんと!そうでいらっしゃいましたか!すぐに詰所の方に報告させて頂きます!貴重なお時間感謝致します!」
そう告げて一礼すると、足早に詰所の方に向かっていった。
「エルフレッド...とうとうこの時が来てしまったのか...」
セイブルは薄暗くなり始めた街並みを眺めながらそう呟くのであった。
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「ただ今戻りました!」
「ご苦労であった、それでキプレス家の方からは確認が取れたか?」
「それなのですが...当主のセイブル様はミタニ・カケルなる人物を知らないと申しておりました。さらに...エルフレッドなる人物もですが、使用人にそのような名前の人物はいないとのことでした!」
遣いの人物は衝撃的な事実を告げたのであった。俺は何が何だかサッパリ分からなかった。
「それは確かなのか?彼が嘘をついているようには思えなかったが...」
「嘘なんかついてないです!だって、この服もお金もエルフレッドから貰ったんですよ!知らないなんて...」
「服もお金も自分のものでは無いのか?それは聞いてなかったのだが」
「あ、いやこれには色々と事情が...」
「事情があるのはなんとなく分かるのだが、身分が証明できないとなると帰す訳には行かなくなってしまったようだ」
「そんな...一度会わせてもらえればきっと―。」
「それは私だけの判断では出来ないよ。なにせキプレス家は、王国内でも名高い名家。そうでなくても身分の分からぬ者を迂闊に会わすなど騎士として出来かねる」
「わ、分かってるよ」
(何がどうなってるんだよ...。当主のセイブルなる人物が、自分のことを知らないと言うのは、会っていないからだとして、エルフレッドを知らないとはどういう事だ?当主が使用人を把握してないとか?そんな馬鹿なことはないか。第一、城内に部屋まで持っていたほどだしな...考えれば考えるほど分からねー!)
「もう夜となってしまったようだ。もうこれ以上は詰所に置いておく道理もなくなってしまったため、とある場所にて一夜を過ごしてもらうことになるがよろしいか?」
「はい...」
そう生返事をして、俺はリービッヒとともに詰所を出て、ある目的地に向かい闇夜に消えていった。
読んでいただきありがとうございます!
話が進むにつれて面白くなるように頑張ります!