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襲撃と魔法と冷却器

五話目です!

市場へと向かったエルフレッドとカケル。

初めての異世界の食事は、果たしてお口に合うのか?

街の市場は、ギルド出てすぐの所に位置していた。ちょっとした商店街のようになっており、出店が多くありかなり活気が感じられた。ちょうどお昼時を過ぎだ頃だからか、屋台には売れ残ったであろう食べ物が並べられていた。どのお店も串焼きに近いようなものが、必ずと言っていいほど売られており、それ以外はお店ごとに異なる、といった具合であった。

ちなみにエルフレッド曰く、この国の特産品はヴァルチャーと呼ばれる牛のような生き物の肉だそうだ。城から街に来る途中にも、牧場のような場所に飼育されているのを見かけた。おそらく、串焼きのほとんどがその肉を焼いたものなのだろう。

そんな中、俺はスープのようなものを売っているお店が気になり、購入することにした。

ところで、お金に関してはあらかじめエルフレッドから受け取っていた。単位などはよく分からないが銀色の硬貨のようなものが渡され、とりあえずこれを出しておけば市場で買えないものはないと言われた。


「すみません、これとこれを下さい」

「あいよ、二つで25ビオスだよ」

「そいじゃあ、これで」


スッとポケットから50円玉を出してしまった。


「おいおい、にぃちゃんよ、そんなお金見たことないぞ?」

「うわぁお!こっちでした!」


そう言って銀貨を手渡した。完全に何も考えずに50円玉を出してしまった。もちろんのことだが、日本円は扱ってもらえなかった。

すると店主が、「まいど、お釣りだ」と言って大量の硬貨を手渡してきた。


「...」


とりあえず、何も入っていない左ポケットに入れておいたが、歩く度にポケットでジャラジャラ音が鳴っている。

食べ物を受け取りエルフレッドにお釣りを返そうとしたが、元いた場所にはいなかった。周りを見渡すと何やら雑貨屋のようなお店で店主らしき人と話をしているのが見えた。カケルは、雑貨屋に近づくと、


「ちょっと一人で食べてるわ」

「あんまり遠くには行くんじゃないぞ」

「へいへいー」


子供かよ、と心の中でツッコミを入れつつ、適当な返事を返して食べ飲みできる場所を探しに行った。





串焼きだけであれば歩きながら食べようかとも考えたが、片手には汁物があるのでしぶしぶ座れそうな場所を探していた。しかし、市場の中にはあまり座れそうな場所がなかったので路地裏に入ってみることにした。

路地裏に入ると、人通りが全くなくなり、なんとも言い難いどんよりとした雰囲気が漂っていた。もしかしたら、裏路地にあまりいい思い出がないからそう感じてしまうのかもしれない。そう思いながらも進んでいくと、建物の入口の横にちょうど座れそうな段差があった。


(よし、あそこに座って食べるか)


座ると早速、串焼きにかぶりつく。なんと、焼いてから時間が経っているにも関わらず非常に柔らかくて美味しいのである。さすがほとんどのお店に並んでいるほどの特産品である。スープはと言うと...塩辛かった。まあ、元々期待していなかったため串焼きが美味しかっただけで大満足である。

そうやって舌鼓していると、来た道の方から冒険者風の格好をした三人組がやって来た。三人ともお揃いの覆面のようなものを被っているのが何とも不気味である。

すると三人組が近づいて来て声を掛けてきた。


「お前の持っている魔法アイテムを寄越してもらおうか?抵抗しなければ命だけは見逃してやるよ...ヒッヒッヒッ」


(えーー?きょ、強制イベント発生!?たしかに変な格好してるからってそりゃないよ...。しかも魔法アイテムって何!?)


「あ、あの人違いじゃないでしょうか...?魔法アイテムなんて―。」

「口答えせずに早く渡せや!」


そう言うと手に持った杖を足元に向けて


「フレア!」


と唱えた。すると、杖の先端に刻まれた魔法陣が赤く光り、


「ボッ」


野球ボール程の大きさの火球が足元に着弾した。


「アチッ!」


何が起こったのか、俺は全く理解出来なかった。いきなり火の玉が飛んできたのである。しかも呪文の様なものを唱えていた。エルフレッドが魔法陣がどうたらとか言っていたので、薄々魔法の存在は危惧していたが、まさかこんなにも早く目の当たりにするとは思っていなかった。しかも、威嚇とはいえ悪意を持って向けられたそれは、恐怖しか与えなかった。

何も出来ずに尻餅を着いたままでいると、魔法を放ってきた男が近づいてきた。

俺は、殺されると思ったが、


「もらっていくぞ!」


そう言うと賊は、俺の身ぐるみを剥が...さなかった。何故か愛用していた眼鏡だけを奪い取った。


(え?ちょ、見えないんだけど!まさか、視力から奪っていくという極悪非道!?)


そんな悲痛な心の叫びをしていると、


「これで、俺もあの方に一歩近づいたぞ...クックックッ...」


そう言い残すと、去っていく後ろ姿がぼんやりと見えた。それに続くように、結局一言も言葉を発さなかった二人も付いていった様だ。

するとその時、三人の行く手を阻むかのように一人の男?が家の上から降り立ってきた。そして、着地の時に足をくじいたのかそのまま転んだ。すぐさま立ち上がると長剣のようなものを彼らに向けていた。身長は170cmほどで全身を覆うようなマントに身を包んでいた。身長から言ってきっと男であろう。

すると賊が、


「なんだてめぇ、舐めたまねしてると奴隷送りにするぞ!」


しかし、その脅しに対して乱入者は何も答えなかった。

すると、痺れを切らした賊が一斉に襲いかかった。


「フレア!フレア!」

ボン!ボン!


先ほどよりも大きく殺意のこもった火球が一直線に向かっていく。しかし、ここで乱入者は思わぬ行動に出た。なんと、向かってくるサッカーボールほどの大きさの火球を、手にしている長剣で切り裂いたのである。しかも一瞬にして二つともである。


(すげぇ、どこの達人だよ)


と思っていたが、もう片方の手にも長剣が握られているのがぼんやりと見られた。


(なるほど、二本の剣で素早く火球を切ったのか!)


などと呑気に納得していたが、その異常性に全く気づいていなかった。そもそも、人は飛んでくる火の玉を剣で切ることが出来るのだろうか?いや、無理である。

魔法を放った賊も、火球が切られたことが信じられなかったようで、たじろいでいた。

すると、乱入者は凄まじいスピードで賊との間合いを詰めると、その両手に携えた長剣をまるで踊るかのように繰り出した。


ヒュン、ヒュン、ヒュン―。


ものの数秒の間に三人の賊は、喉を掻き切られて断末魔の叫びをあげることすら許されず、ほぼ同時にその場に倒れた。その凄まじい戦いぶりは、二本の長剣で戦う姿も相まって、まるでギルド入口横の石像の男の様であった。乱入者は三人を切り伏せるとその場を去っていった。


(た、助かったのか?)


すると遠くの方から、ガシャンガシャンという金属の擦れる音とともに数人の足音が近づいてきた。

とりあえず、眼鏡を強奪され視界が酷くボヤけているため、倒れている賊からメガネの回収を試みた。


(ガサガサ...あった!)


すぐさま眼鏡を掛けると、目の前に、全身を銀色の甲冑で身を包み込んだ黒髪の長身の男性が剣を向けていた。


「お主何をしている!」


長身の男性の後方には三人の巡回兵らしき人が槍を構えていた。

それもそうだろう。傍から見たら死体の所持品をあさっているハイエナのようである。もしかしたら賊を殺したのも自分かとも思われているかもしれない。冷静に考えたら非常にマズイ。

長身の男性は死体の方を一瞥すると、


「これもお主がやったのか...?いや、そうでは無さそうか」


何か思うところがあったのか、殺しに関しては誤解されずにすんだようだ。


「しかし、お主の身なりを見るにお金に困ってるようには見えないのだが、一体何があったか説明してもらおうか」

「え?あ、えーっと...」

(こんな状況初めてだし、どうやって説明すればいいんだよ...。てか金銭目当てで死体あさりしてると思われてるよ...)


「えっと、そこの段差で食事をとっていたら―。」


俺はこの状況に至ったの経緯を説明した。ちなみに、余計に不審がられないようギルドカードを今日発行したなどの情報は伏せておいた。

賊を殺したのが、通りすがりのギルド入口横の石像の男という話をしたら、


「ダントル様の幻を見るとは相当追い込まれていたんだな...」


と可愛そうな人を見るかのような目で慰めてきた。石像の男はダントルという名前みたいだ。面倒だったので特に否定はしなかった。最初はキツイ性格のやつかと思っていたが意外とイイヤツなのかもしれないと俺は思った。とてもチョロい男である。

一通り説明が終わると、


「後の処理は任せるぞ!」

「「承知しました、リービッヒ様!」」


リービッヒと呼ばれた長身の男性は、三人に指示をした。ちなみに、心の中で冷却器かよとツッコんだのは言うまでもあるまい。


「とりあえず貴殿には、詳しい話を聞かねばならぬゆえ詰所まで付いて来てもらおうか」

「あ、わかりました...」


そう言って二人で詰所に向かって行った。


(おいおい、連行されちゃうよ...こんなに騒ぎになってるのにエルフレッドは何してるんだよ!)


ちょっとした騒ぎになったにも関わらず、とうとうエルフレッドは姿を表さなかった。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ物語が進展していませんが、これから動いていく...つもりです!

長い目で見ていただければ嬉しいです!

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6話目は明日のお昼頃に投稿します!

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