不穏な事件
13話目です!
ユウタに衝撃的な事実を知らされたカケル。果たしてどうなっていくのか?
明かりもなく真っ暗になった街中を、何かから逃げるかのように駆け抜ける人物がいた。
「なんなんだよ、何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!イカれてやがる!」
男は何やら右手を抑えながら走っている。真っ暗なため分かりにくいが、顔面蒼白だ。その男のあとを、なにやら明かりがゆっくりと近づいている。
「ま、撒いたか?」
息も絶え絶えにうしろを振り返りそう呟いた。しかし、すぐに角の方から明かりが現れた。
「な、なんで俺の場所が分かるんだよ!」
そう言い、また走りだした。しかし、
「嘘だろ...」
男の目の前は行き止まりであった。そうこうしていると明かりがスグのところまで迫っていた。明かりの中心には1人の人物が佇んでいるが、逆光で顔が隠れていた。
「お、俺は本当に何も知らない!信じてくれよ!」
男は、明かりの方に向かってそう叫んだがどんどんとその距離は縮まっていき、数歩のところまで来ると追跡者は立ち止まり問いを投げかけた。
「もう一度だけ聞くが、貴様はカレーライスは好きか?」
「だから何度も言ってるが意味がわからないよ!」
「ふーむ...今回は当たりだと思ったのだが違ったか...」
「人違いだったならもう勘弁してくれよ...」
「最後に聞くが、その服はどこで買ったんだ?」
「こ、これか?これはこの街のモンクレーとかいうお店で買った服だが...まさか、そんなことを聞くためだけに俺のことを襲ったのか!?」
「なるほどなるほど...」
「聞いてるのかよ!?」
「...まったく騒がしいなあ。貴様はもう用済みだよ?」
「じゃ、じゃあ、もう行ってもいいのか?」
「?なにか勘違いしているようだね。貴様はここで消えてもらうよ?」
「な、なんでだよ!俺は何もしてねえよ!助けて――。」
「消えろ」
手を向けそう言った直後に、男に目掛けて火炎が襲いかかった。男はなす術なく燃え、程なくして黒焦げになり力尽きた。
「あぁ、また罪を重ねてしまいました...だが悲願のための尊い犠牲...正義のための犠牲...選ばれた私にしか出来ない使命...」
そう呟き男はニヤニヤと笑っていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふあーー...」
俺は大きな欠伸をしながらゆっくりと目を覚ました。辺りを見回したがユウタの姿が見当たらない。まさか、金目のモノを盗んで逃げたのか?という考えも一瞬過ぎったがどうやら無事のようだ。まあ、さすがにそんなことはしないか。
「あら、やっと起きたのね!」
声のする方を見ると、扉からミラが顔を覗かせていた。
「おお、ミラか。おはよう」
「おはようじゃないわよ!もうお昼前よ!あんたがぐうスカ気持ちよく寝てるから起こせなかったのよ!」
「もうそんな時間か...わるいわるい」
「フンッ」
わざわざ起こさないでいてくれたのは以外だ。怒るなら起こしてくれてよかったものだが...。
「ちなみにユウタはどこにいるんだ?」
「エルフレッドの部屋よ!」
「あー、エルフレッドと一緒なのね」
「違うわよ?エルフレッドは街で事件があったから見に行ってくるって言って出てっていったわ!」
「まじか、またエルフレッドいないのか...」
なんか嫌な予感がするが杞憂に終わるだろう。
□
ミラに何か食べなさいと言われて俺はエルフレッドの部屋で食事をとることにした。丁度お昼時だったため、ミラとユウタの3人で食べることとなった。
「ちなみに事件って何があったの?」
「なんか人が焼かれたって聞いたわよ!」
「え!?なにそれ、怖!てか食事中に聞いてすまなかった...。こっちだとそんな事件けっこうあるの?」
「まれにあるわね!ただ、焼かれ方がちょっと変だって話らしいけど...」
「焼かれ方が変てどういうこと?」
「形そのままで真っ黒焦げみたいなのよね...」
「ん??それって普通じゃないの?」
「普通じゃないわよ!火は魔法で使えるけど、ほとんどの魔法が威力を伴うからまっ黒焦げでバラバラじゃないのはおかしいのよ!」
「なるほどな、でも油でもかけて火をつけただけとかじゃないのか?」
「そんなやり方したら叫ばれるし、相手が相当油断してないと難しいわね...。つまり一瞬で炎に包まれたとしか考えられないわ!」
「なるほど...」
そんな食事中とは思えない話をしていたからか、ユウタの食がぜんぜん進んでいなかった。
「食事中にこんな話してごめんな、ユウタ。飯が進まないよな...」
「ええねん...ただ...まあ兄ちゃんたちのせいじゃないから気にせんといて」
「お、おう、すまんな」
どうやらユウタに気を使わせてしまったようだ。
□
俺たち3人が食事を終えるとエルフレッドが戻ってきた。
「おー、揃っておるようじゃのう」
「戻ったのね!現場はどうだったの!?」
「燃やされた人物は回収されておったが、周りはそのままじゃったぞ。建物の壁も黒焦げじゃったが、あの規模の炎を魔法で出したなら壁が壊れてないのは奇妙じゃのう...」
「火の魔法ってそんなに威力が強いの?」
「火の魔法に限らずじゃが...魔法は体に留めてある魔力を有形なものとして放出するものじゃから、時間とともに元の状態に戻ろうとするのじゃ。元の状態、つまり魔力として大気中に分散される時に爆発に似た現象が起こるのじゃ」
「なるほど...じゃあ魔法以外の方法で燃やされたってことか...」
「そういうことじゃな」
「火炎放射かよ..,」
「ちなみに、今日の夜は知り合いに頼まれて街の見回りをするのじゃがお主も来るか?」
「何を言っておりますの!?そんな危なっかしいこと出来ないよ!?」
「そうか...なら仕方ないのう、ミラと2人で行ってくるとするのじゃ」
「え!?ミラも付いて行くのか?」
「もちろんだわ!」
「マジかよ...」
2人でってことは、ユウタは一緒には行かないようだ。そりゃ当たり前か。それなら2人で大人しく留守番しているか...。
「さて、買い物は昨日行ったから今日は剣の鍛練をするかのう」
「剣の鍛練!?」
何だか嫌な予感がするが付き合うか。
こうして俺たち一行は部屋をあとにした。
次回は剣の訓練か!?