十三人の参加者
12話目です!
街での買い物を続けるカケルたち一行。
ユウタの言っていた参加者の謎が明らかに!?
ローマ人改め、紫いもと化した俺と一行は街の散策を続けていた。時折、ミラがお店の商品を手に取る一幕もあったが結局まだ何も買っていない。
「こうも沢山種類があると何がいいのかわからないわ!」
「そうだな...お?あそこに露店があるから見てみようぜ?」
「そうね!」
俺は店の脇で路上販売をしている男を見つけた。男は白装束の格好をしており、宗教関係者みたいな雰囲気であった。広げられた布の上には、ネックレスやブレスレットなどの装飾品が並べられていた。
「へえー、凄いわね!こんなに緻密な装飾品初めて見たわ!」
「そうなのか?」
ものづくりの国である日本で育った俺にとっては、雑貨屋で売ってそうだなくらいにしか思えない代物であったが、この世界では珍しいみたいだ。たしかに、これまで入ったお店でも装飾品は売られていたのだが、そのほとんどがシンプルなものばかりで細かい細工は施されていなかった。
「どれがわたしに似合いそう?」
「え?自分に聞いてる?」
「あんた以外に誰がいるのよ!?」
そう言われて振り返ってみると、さっきまでいたはずのエルフレッドとユウタがいなくなっていた。
(またエルフレッドいなくなっちゃったよ...とりあえず)
「これかな!」
そう言って、俺は模様が描かれたブレスレットを取ってミラに渡した。すると、たいそう気に入ったようで、すぐに購入し腕につけていた。
「どう?似合う?」
「お、おう、似合ってるぞ」
「そ、そう?ふふふ〜っん」
普段から人を褒めることに慣れていない俺は、かなり投げやりな返事をしてしまったが、そんなことはお構い無しと言った具合にミラはニヤニヤとしていた。
途中、簡単なものを食べ歩きしながら買い物を続けていると辺りが暗くなってきた。
「そろそろ宿に戻るか」
「そうね!」
俺たちは宿へと戻っていった。戻る途中に俺が服を売ったお店の前を通ると、早速お店の前に自分の服が売られていた。
店主は俺に気がつき、
「おー、兄ちゃん!さっきはありがとうな!早速売りに出したら、もう上に着るのが売れたよ!」
「そ、それはどうも...」
「これからも珍しい服があったら、このモンクレーまでよろしくな!」
俺は少し引きつった返事しかすることが出来なかった。そして、次に売る時は物々交換ではなくお金と交換しようと決意した。
□
宿に戻ってくるとエルフレッドとユウタは自室にいた。あまり服に興味が無いエルフレッドたちは、勝手に行動していたようだ。
「遅かったのう、てっきり迷子にでもなっておるかと思ったぞ」
「ま、迷子になんてなってないわ!」
「そうじゃな」
「ところでエルフレッドたちはどこにいってたの?」
「ちょっと寄らねばならぬ所があってのう、その後は食料を買っておったのじゃ」
そう言うエルフレッドの後ろには料理が並べられていた。
「これエルフレッドが作ったのか?」
「そうじゃ―。」
「僕も手伝ったで!」
「それはすごいじゃないか!」
「...今さっき出来たところじゃから、みんなで食べるのじゃ」
テーブルの上に並べられているのは、チャーハンのようなご飯ものと肉の炒め物、そしてなんと味噌汁である。きっとユウタがリクエストしたのだろう。
四人は席につくと、ユウタはお腹がすいていたのかいただきますと言って食事にがっついていた。俺も一口食べてみた。
「う...美味すぎる!何でこんなに美味しいの!?」
「過去に冒険者をやっておった頃に作り方を教わってのう」
「教えた人天才かよ!店出した方がいいよ!」
「そやつは店を出しておったぞ」
「今度連れてってよ!」
「そ、そうじゃな...」
俺の食いつき方ににエルフレッドは困惑した表情を見せていた。そんなやり取りを傍目に、ミラは静かに食事をしていた。ただ食事をしているだけなのに、なぜか気品のようなものを感じる。さすがお嬢様と言ったところだろうか。それに引き換えユウタは、フォークを握りながら使っていたりとお粗末な感じであった。
□
食事を終えた俺は自室に戻ってきていた。
「ねえ兄ちゃん、兄ちゃんはどうやってこの世界に来たん?」
ベットの上で飛び跳ねながらユウタが聞いてきた。なぜユウタが自分の部屋にいるかって?それは俺がエルフレッドに、同郷の人と同じ部屋がいいと頼んだからである。実際は、ミラと同じ部屋だと俺にとって刺激が強いからという理由であった。エルフレッドはしぶしぶ納得してくれたが、ミラは少し寂しそうな顔をしていた。
「自分でもよく分からないんだよなー、気づいたらって感じかな。ユウタは違うのか?」
「僕は車にぶつかっちゃってこの世界に来たんやで」
「え?ぶつかったって轢かれたってこと?」
「んー、たぶんそうやで」
「ずいぶんと軽い感じだな...」
「だって今は何ともないし、むしろ元気やからな」
「...まあいいや」
(つまりこの世界は死後の世界ってこと?それにしてはみんなどう見ても生きてるしな...)
「ちなみに前に言ってた参加者ってなんなの?」
「それは―。」
ユウタは兄ちゃんになら、と言って話してくれた。
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ユウタがこの世界にやって来たのは、約一年前のことらしい。車にぶつかり気がつくと、白い奇妙な空間にいたらしい。すると何も無いところから声が聞こえてきた。
「諸君らにはこれからとある戦いに参加してもらう。参加者は日本から集められた男女十三人。諸君らには参加者の証として首飾りが渡されており、首飾りの紋様ごとに異なった力が得られる。得られた能力を駆使し十三個の紋様を集めるのだ。全て集めた者には『願い』を一つ叶えてやろう。集め方に手段は問わん。一年経っても終わらなかった場合は―。まあよいか、期限は十年。それまでに決着がつかない場合、生きてる者は元の世界に戻されるだろう」
と説明を終えたと同時に、見知らぬ場所でユウタは目覚めたのである。周りには誰も居らず、手には首飾りが握られていた。
□
ユウタが目覚めたのはゴルゴナンという国だった。行くあてもなく、働く術も知らないユウタは食べ物を盗みながら路上で生活をしていた。そんな生活を続けていたある日、スラムの連中に目をつけられてしまい襲われる事件が発生した。その時、初めて力を使い難を逃れると、数日後スラムの人に仲間にならないかと誘われた。その後はスラムの連中と行動を共にし、色々あった末に今いるシルクベスタに行き着いた。
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「なるほど...つまり『参加者』ってのは、その戦いの参加者って事なのか...」
「そうやで、だから兄ちゃんも参加者だと思ったんよ」
俺は少し後悔していた。気軽に聞いたのに、とんでもない出来事に巻き込まれているなんて。
「じゃあ、ユウタは『願い』を叶えるために戦ってるのか...」
「んー、どうなんやろな。最初は生きていくのに必死やったし...戦う決心が付いて戦おうと思ったけど、兄ちゃんは関係ない相手やったしな...」
「これからどうするんだ?」
「オジサンにも言われたけど、僕じゃ人殺しなんて出来へんし期限切れを待つかな。だから僕も一緒に旅をさせてくれへんか!?」
「旅?とりあえず流れにまかせて逃げて来ただけなんだけどな...」
「じゃあ一緒に旅して僕みたいに戦いたくない『参加者』を探そうや!」
「お、おう...明日エルフレッドに聞いてみるよ」
「やった!」
そんなやり取りをして俺たちは眠りについた。
読んでいただきありがとうございます!
今後、いろいろな力を持った人物が登場してくる予定です!