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織姫と彦星  作者: 京衛武百十
6/10

自然消滅

織姫との関係がこれ以上になることはないと思い知った私は、ただただ今の距離感を保つことを望んだ。


普通に挨拶して、普通に話し掛けて、普通に遊びに行って。それで十分だと自分に言い聞かせようとした。


もちろん、部長との交際も続けてる。こっちも、徹底して<清い交際>だ。キスどころか手を繋いだこともない。部長自身がかなり草食系寄りの人らしくて、手を出してこようとしなかった。そういうところがまた、逆に惹かれそうになってしまう。


男なんて不潔でガサツでデリカシーの欠片もなくて乱暴でスケベで女の子を道具のようにしか思ってないと、私は感じてた。


でも、部長は違うの。私をちゃんと人間として扱ってくれるの。私の話に耳を傾けてくれて、気遣ってくれて、大事にしてくれてるのが分かるの。


なんでよ…どうしてそんなに優しいんだよ…もっと普通の男みたいにしてよ……そしたらもっと割り切れるのに……!


だけど、部長がそういう人だから織姫も好きになったんだって分かる。織姫の男性を見る目は確かなんだ。人を人として扱える人を見ぬくんだ。


でも、それならどうして、私とも友達でいてくれるんだろう……?


私、こんなに最低なやつなのに……


そういうことを考えてしまって、頭がぐちゃぐちゃになる。


一人で自分の部屋のベッドに寝てると、情けなくてこのままどこまでもズブズブと沈んでいきそうな気分になる。


痛い…苦しい……


だから私は、そういうこともなるべく考えないようにした。考えないようにして、気にしないようにして、ロボットみたいにやることを決めてそれだけをするようにした。織姫の前で<友達>として振る舞って、先輩の前で可愛らしい<彼女>として振る舞った。


これでいい。これでいいの。


私は、天の川の向こう岸から彼女を見詰めて想って、そしてたまにちょっとだけ近付けることを何よりの幸せと考えてればいいの。


それ以上は望んじゃいけない。


それ以上を望んだら、きっと、何もかもが壊れてしまう……


そうやって危ういバランスで成り立ってるぬるま湯のような毎日に浸って、私はただ過ぎていく時間を感じてた。


これでいい。これでいいのと自分自身に言い聞かせながら。




やがて先輩は高校に進学して、当然、学校には来なくなった。


私はそのことを、ある意味ではホッとしてた。少なくとも織姫と先輩が顔を合わすことも無くなってたから。


先輩の通ってる高校は私達の中学とは全く真逆の方向で、しかも少し遠いし。


そしてそのことは、私の、先輩の彼女を演じるという義務感をも少しずつ緩めていったんだと思う。


だから、私達が高校に進学する頃には、自然消滅という形で、先輩との関係も解消されていたのだった。



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