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織姫と彦星  作者: 京衛武百十
3/10

彼女しかいない

部長を落とすのは、はっきり言ってチョロかった。潤んだ瞳で見上げて縋る感じで「好きです…!」って言ったら、


「はは…女の子にそんな風に言ってもらえたのは初めてだよ。ありがとう」


とか真っ赤になって、


「本当に僕なんかでいいの…?」


なんて言うから、


「はい、部長じゃなきゃダメなんです…!」


って念押ししたら、


「じゃあ、僕の方からもお願いしようかな。よろしく」


だって。


ふ…男なんてこの程度よね……


そうやってまんまと部長と付き合い始めたけど、実はそれからがヤバかった。


織姫の人を見る目があるっていうのを思い知らされる気がした。


「彦星さんは、素敵な女性だね」


とか、ぜんぜん嘘くさい感じしないのにすっと口にできるような男だったから。これが、下心が見え見えのチャラ男とかの口先だけの言葉だったら、私はきっと鼻で笑ってた。なのに、部長は本当に優しくて、私のことを気遣ってくれて、大切にしてくれた。


織姫は彼のことをそういう人だって見抜いたから好きになったんだって分かった。


ヤバいヤバいヤバいヤバい……!


織姫には内緒で部長と会ってると、何だか本気になってしまいそうだった。だけど私が好きなのは織姫…! 部長のことなんて本気になっちゃダメ……! 私はあくまで彼を織姫に近付けさせないようにする為にフリをしてるだけなんだから……!


自分にそう言い聞かせて必死に抑えてた。


普通ならここで部長と付き合っちゃえばいいじゃんって思うかもしれない。


でも違うの…! 私は織姫じゃないとダメなの……! 私は織姫が好き…! 彼女が私を見付けてくれたから私は今まで生きてられたの……!




私の両親は、いわゆる仮面夫婦。打算と妥協だけで一緒になって、世間体とか今の暮らしを捨てたくないとかという理由だけで夫婦ごっこを続けてた。だから、私に対する愛情なんてものもない。あくまで私は、両親が<まともな家庭を築けるまともな人間>だっていうのを世間にアピールする為の小道具でしかない。


それは、痛いほど分かってる。あの人達は子供にそんなこと分かる訳ないと思ってるかも知れないけど、子供だから分かる。


あ、この人、私のこと好きじゃないんだ。


って……


この人達に捨てられたら子供の私は生きていけない。だから精一杯媚を売った。いい子のふりをして、あの人達の自尊心を満たそうとした。


だけどそんなことをすればするほど、あの人達はそれに安心して私のことを見なくなった。放っておいても大丈夫だと思って、視線を向けることもしなくなった。


私は、ただの人形だった。


…でも…


でも、彼女だけは違ったの。彼女だけは私のことを見てくれた。私のことを大事にしてくれた。


だから私には、彼女しかいないの……!



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