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織姫と彦星  作者: 京衛武百十
2/10

恋多き

だけど織姫は、恋多いと言うか、惚れっぽいって言うか、だいたいいつも誰かのことを『好き!』って言ってる女の子だった。


でも不思議と、外見的な好みというのはあまりないのかな。それよりは雰囲気と言うか、いかにも『優しそう』っていう印象の、割と地味なタイプが好みだったみたい。


担任の先生を好きになったり、上級生の男子を好きになったり、通学路で見かけるサラリーマンを好きになったり。


何だろう? 『外見より内面で選ぶ』っていうのは、まさに彼女みたいなのを言うのかもしれない。


共通するのは『優しそう』っていう印象だけで、見た目そのものにはそんなに共通点はない感じ。もちろん、ヤカラとかオラオラ系じゃないっていう意味では共通点はあるかもだけどね。


ただ、そうやって彼女が誰かのことを『好き』っていう度に、私はすごく寂しくて悲しくて胸が締め付けられる気がした。


『そんな人のことなんてどうでもいいじゃん。ひめちゃんの隣には私がいるじゃん…!』


って思ってた。


けれど、彼女が好きになる人にはいつも彼女とか奥さんとかがいて、結局は諦めるしかないのが分かってたから、そういう意味では安心もしてたかな。


『どうせ私のところに戻ってきてくれる』


みたいに思ってたかもしれない。


なのに、中学に上がって美術部に入ったら、そこの部長がすごく穏やかで優しい感じの人だった。見た目はともかくその立ち振る舞いがとても中学生とは思えないくらいに落ち着いてて、誰に対しても優しかった。


それを見た瞬間、私は嫌な予感がしてた。そしてその予感通りに、彼女はその部長のことを、熱っぽい目で見るようになってた。しかも部長の方も、彼女の描くイラストを、


「織姫の絵には何か不思議な力があるな」


とか言って絶賛してた。


彼女は昔から絵を描くのが上手で、でも絵画って言うよりはポップアート的なイラストが主で、それに対して部長は油絵の具を使った本格的な絵画だったのに、彼は、自分が描けないジャンルの絵に対してもリスペクトができる器の大きな人だった。


もう、完全に織姫のタイプじゃん……!


しかも最悪なことに、その時の部長には付き合ってる人がいなかった。今までは付き合ってる彼女がいたり奥さんがいたりしたから安心してたのに、とうとう、そうじゃないフリーの人が現れてしまった。


だから私は動いたの。彼女が部長と付き合えないように。


部活のなかった日に彼を人気のないところに呼び出して、


「部長…。好きです…。私と付き合ってください」


って……



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