五話②視点変更
僕が初恋を自覚した、体育祭以降彼女は今までいたグループを追放されていた。
当時それほどまでに、柳君は疎まれていた。ひどく、嫌われ差別されていたんだ。
でも彼女は、周りの批評なんか気にしないで彼を助けた。
その姿は今でも美しい物だと言えるよ。
だが、そんな強くて美しい彼女も一人の人間だ。今まで柳君だけだったのが彼女にも被害が及ぶようになった。
だが、それでも僕と柳君は彼女と一緒にいた。柳君が助けられてからというものその三人でいることが多くなった。
あれは、ホームルームの日だった。
僕と彼女は途中まで家が一緒だったから彼女と一緒に帰ることが多かったけど、その日のホームルームの時に学級委員が仕事を言い渡された。
そのときの学級委員が柳君と彼女だった。
僕はその日は部活があるからどうせ時間帯が被るだろうと思っていつものようにグラウンドを走っていた。
部活が終わり教室に入ると、そこで目を疑う光景が僕を襲った。
柳君が殴られていたんだ。最初は訳が分からなかった。
数人がかりの男に囲まれ柳君がただひたすらに殴られていた。
僕はそれを見て逃げ出した。
自分が殴られるのが怖かったんだ。
僕は自分のために柳君を見捨てた。
それだけならまだ良かった。
女子トイレの前で彼女が複数の女子に取り押さえられていた。
暴言を浴びせられ髪を切られ、彼女の頭に飾っていた桜のピンも無惨に壊された。
そのとき僕の頭にはきっと悪魔が住んでいたんだと思う。僕の中の悪魔は柳君を見捨て、彼女を助けたんだ。
今にして思えば怖かったんだ。
もしあの二人が付き合ったら?もし、ここで彼女を助けたら?
僕は僕自身のつまらない利益のために友達と初恋の人をそれぞれ裏切った。
でも、それで得られたのは柳君と彼女の秘密だった。
彼女を助けたとき、彼女は僕にお礼を言わずすぐさま教室に向かった。
献身的に柳君を助けようとする彼女の様子を見て二人が付き合っていることを僕は悟った。
友達を裏切ってまで望んだ物は何一つとして得ることなく僕の初恋は無慈悲に散ることになった。