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勇気の定義  作者: ハルカ
二章
14/14

8話

大変遅くなり誠に申し訳ございません!

あの子産まれた時は素直に嬉しかった。

 テレビの特集で映されてる赤ちゃんなんて何一つ可愛い者とは思えなかったけどそれが我が子ともなると話は変わるらしい。

 女の子ですよ、と言う看護師さんの声を聞いたときのほっとした感情は今でも私の心に残ってる。

 出産に大した苦労があったわけではなかった。素直に産まれたし、帝王切開なんて大仰なこともなかった。

 だけど、ただ普通に産まれることも我が子ならそれだけでドラマになることを私は体に残る痛みと疲労で確かに感じていた。

 あの人は、仕事から離れられなくて来れなかったけど電話で伝えた時は凄く喜んでいた。

 次の日にたくさんの花と、育児道具を持ってきてくれた。

 こそっと私の好きな煙草を二箱持たせてくれたのも今では懐かしい。

 名前は最初から決めていた。旦那には黙っていた。伝えると反対されそうだったから。

 けど、今でも彼女は私の尊敬する人だから、あの人のようになって欲しかったから私はこの子に「桜」と名付けた。

 旦那には案の定反対されたけど、離婚を盾に脅したら渋々黙っていった。

 初めて桜が立ったときは、旦那と二人抱き合って喜んだ。

 「桜!おいで!頑張って!」

 旦那は立ったばかりの桜に無茶なことを言っていたが私は桜が立ったことだけで満足していて旦那の無茶ぶりを止めることすらしなかった。

 毎日がただひたすらに幸せだった。こんなに幸せで良いのかと思うほどに幸せだった。

 でも、幸せは長くは続かない物だった。

 桜が7歳になった時ぐらいだろうか、旦那の様子がおかしくなっていくのを私は感じていた。

 桜の言葉を、挙動をどこか懐かしむような目で見ていた。

 旦那が誰を思い浮かべているのかはすぐに想像がついた。

 決して彼女に見た目が似ている訳ではなかったけど、桜は私が思ったように成長していった。

 真っ直ぐで純粋で、強くて優しい。そんな子に育っていってくれた。

 その、桜の行動が仕草がきっと彼にあの人を思い出させるのだろう。

 私達夫婦のなかは、確実に悪くなっていった。旦那は帰るのが遅くなり、浮気の兆候が見られるようになった。

 桜は大事な時期に差し掛かっていた。小学校での生活を幸せな物にしてあげたかった。

 だから、あの人と別れる訳にはいかなかった。

 旦那の態度が日に日に大きくなっていった。機嫌は常に悪く、酒を良く飲むようになった。

 仕事で失敗したと、旦那の同僚から聞いた。幸いクビにはならなかったけど確実に出世ルートから外れたらしい。

 「どうするの?桜もこれから大事な時期なのに!進学もあるのよ!?一番お金がかかる時期なのよ!」

 そんなどこにでもある、些細な喧嘩だった。けど、一度燃えた火は少しずつ大きくなっている。

 昨日、遂に堪忍袋の尾が切れた。旦那はついに外で女を作ってきた。

 孕ませたらしい。私は許せなかった。桜を蔑ろにしたこいつが許せなかった。

 「桜のこと考えてんの!」こう聞けば言い訳しか帰ってこない。やれ、お前が悪いだの、桜を育てるのに疲れただの、そんな言葉しか帰ってこなかった。

 旦那は、「どうしてあいつを作ったんだか…」静かに言い放った。その一言だけは許すことが出来なかった。

 左手は止まることはなかった。灰皿を持ち振りおろした。旦那のこめかみにしっかりと当たった。

 私は続けて灰皿を投げつけたがそれは外れ灰皿が割れる音が響いた。

 「この男なんか死んだら良いんだ!」

 その時気づいた。桜が帰って来ていた。見られた。桜に見られた。

 旦那を看病しようとしている桜を払いのけて旦那は二階にあがった。

 桜の目が私を責めていた。「何で、こんなことをしてるの?」そう問いかけられていた。

 「あ、あのね?桜?」桜は私のそんな言葉を無視して、一目散に家から出ていった。

 どうしてこうなるの?桜を追いかけようにも体が動かなかった。

 桜にもう一度あの目で見られたくなかった。

 私は、目から溢れる涙を拭きもせずその場に倒れこんだ。

 

 

 

 

8月の後半になればまたペースが戻るかと思いますので引き続き読んでください。

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