5話④
鬱展開続きで申し訳ないです。
「格好悪い話だったろう?」
ニコニコと笑うおじさんの顔見て私はなんだか無性に堪えきれない思いをぶちまけたくなったけども、それをお腹に力を入れてぐっと堪え、おじさんに質問を投げ掛ける。
「私は昔のおじさんは間違ってたとは思わない。」
この一言にいつもニコニコ顔のおじさんが、冷たさを感じさせるほど迷いのない目で「間違いだらけさ」と呟きいた。
「何が!何が間違いなの!?好きな人を手に入れたいという感情の何が間違いなの!友達を裏切ったから?そんなの本当に好きな人の前では些細な事よ!人を愛する気持ちまで否定することのほうが間違ってるわ!」
考えることもなく、言葉が口からスルスルと抜け出ていった。
「どんなに、その思いが強くとも、どんなに僕が彼女を愛してたとしても彼を、柳君を裏切った事実は消えないしそれで彼女を手にいれたとしても間違った方法で手にいれた物なんて誰も幸せにならないのさ。」
私が見たことのないおじさんだった。いつも醸す素敵な色気も、ニコニコとした顔も全て消えてただ迷いのない目でそう私を諭した。
「おじさんなんかだいっ嫌い!」
私は走った。おじさんに見られないように。泣く姿を見られないように。ただひたすらに、がむしゃらに走った。おじさんから逃げるために。
家に帰ると誰もいなかった。
私はベッドにはいり布団の中に頭をすっぽりと入れ、泣きじゃくった。
悔しかった。いつも格好良いおじさんにあんな過去があったことが。
おじさんが自分の恋を否定したことが。自分の恋まで否定されてると思って悔しくてたまらなくなる。
でも、大好きなおじさんにだいっ嫌いなんて言ったことが何よりも辛くて仕方がなかった。
「うっわあぁぁぁ」
「ああぁおじさんのばかぁ」
そんな言葉ばかり涙といっしょに漏れ出ていった。