一話
一話目は短いです。
蝉の耳障りな音が鳴る八月私は今日も公園に向かっていた。
公園に向かうとよれたスーツを着て、でも凄く他の大人よりも大人らしい雰囲気を醸す色っぽいおじさんが今日もいた。
「おじさん!」
私が喉を強く震わせて呼ぶといつものように、ニコニコとこちらを見て手を振った。
「やぁ、桜ちゃん。今日も元気だね。」
「おじさんこそ、この厚い夏によく、スーツを着ていられるね?」
おじさんは私がそういうと、ニコニコした顔は崩さず、でも肩をすくめて困った様子を演じた。
「仕事柄どうしてもね着てないと落ち着かないのさ」
とすかして言う言葉もおじさんが言うとかっこよく見えるから不思議である。
「今日ね?夏も真っ盛りなのにね?春頃に学校で作った桜の栞を取りに学校に行ってたの。季節外れにも程があるわよね?」
おじさんはいつも私に話をしてくれる。私の学校での不満も、時には面白く、時にはタメになる話に変えるお話の料理人なのだ。
「桜か~そうだね、今日はおじさんの初恋の話をしようか?君も中学生が近いし、そんな話をする子も増えて来たんじゃないかな?」
みんな、中学生が近づいてから確かにそんな話も多くなりました。なによりもおじさんの初恋と聞いて私は聞かずにはいられなかった。
「早く聞きたいわ!お願い聞かせて!?」
おじさんは自動販売機に向かって私にジュースを奢って、ベンチに深く腰かけゆっくりと喋り始めた。