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プロローグ
「お母さん、まだ寝たくない」
「あらあら困った子ね。今日はたくさん遊んで疲れたでしょう? もうお休みなさい?」
「だって、まだ眠くないもん。起きてられるもん」
「お母さんこれから織物をしないといけなし、おねんねしてほしいなー」
「でも、寝られないもん。お母さんと一緒に起きてる」
「そうだ。いい子で寝られるなら、眠くなるまでお話をしてあげるわ」
「お話!」
「でも終わったらちゃんと寝るのよ?」
「うん! 約束する!」
「うふふ。そうね、約束よ? じゃあ、どのお話をしようかしらね。“戦士カイルとオークのお姫様”はどう?」
「“竜使いのリュート”が良い!」
「あらあら、あのお話、本当に気に入ったのね。わかったわ。今日は“竜使いのリュート”のお話をしましょうね」
「やったー!」
「それでは始まり始まり。昔々、ある森の中で1人の男の子が……」
これは後の世にそんな風に語り継がれるようになる、1人の少年の物語。
ある世界で、竜使いの勇者と呼ばれた彼と彼の仲間の物語。