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1話 説明してくれるらしい(異世界人品評会)

 所変わって今は城の中、謁見の間に居る。

 説明するためにはあの場所は相応しくないんだとか。

 クラスの殆どの連中は未だに混乱している。

 先程まで居たのは定番と言えば定番で、オルグレン(この国)の主な宗教である女神教の神殿だとか。神官服らしきものを着ていたのは見た目違わず神官だそうだ。四大神官とか八方大神官とか言うらしい。

 美形の男女は王女と王子だそうで。

 割と定番な配置だった。


 正面には煌びやかな玉座に深く腰を掛ける壮年の男性が居た。あれが国王だろう。その隣には王妃らしき人。

 僕達の左右には文官と武官がそれぞれに分かれて整列している。


「さて、皆まだ混乱しているだろうが落ち着いて余の話を聞いてくれ」

(こんなにも多くの勇者が来るとは。まあ良い、多少想定外ではあるが上手く働いてもらうとしよう)


 それからやけに長い説明が始まった。長すぎて要点しか聞いていなかったが。

 王子の名はアルフリート。王女の名はエリーゼ。

 国王夫妻には名前は無いらしい。というのもこの国では王位に就く際に、それまで使用していた名前を返上し『オルグレン国王』『オルグレン王妃』と国名に改めるのだという。


 大陸の形は菱形でその周囲を無数の島が覆っている。見せられた地図を見る限りではユーラシア大陸が幾つも入りそうな広大な大地だ。その大陸の中心を縦に割く様に巨大な山脈が連ねていて、東側が人族や獣人族の領域で西側が魔族と呼ばれるものの領域らしい。山脈はエルフ族だとか。


 今回僕達が呼ばれたのはその魔族に関してらしい。

 人族と魔族は過去に幾度も戦争を繰り返していたが数百年前に当時の王達とエルフ族の手によって終戦。以来関わり合いになる事が無いように不可侵条約を結び平和を保っていたそうだ。しかし最近になって魔族の動きが活発化し、各国で目撃例が増加。

 そして先日ついに人族の国が襲撃された。

 各国は本格的に魔族を警戒し、いつ起こるか分からない戦争に秘密裏に備え始めているらしい。

 そこでこの国は古くから継承されてきた召喚魔法陣を用いて、強大な力を持つとされる異世界人を呼び出す事にした。この人数は想定外だったらしいが。


「どうか皆様のお力をお貸しください」

(お願いします)


 王達よりも近い場所に居た王女が深く頭を下げる。


「分かった。困った人を助けるのは人として当然のことだからな。俺は君達に協力する。何よりそんな話を聞いてじっとしてなんかいられない。だから安心してくれ」

(今までだってそうしてきた。俺はあいつと違って人を見捨てる何て事はしない!)


 あいつ?過去になんかあったのか。元々やけに人助けに執着する奴だとは思ってはいたけど、そんなに必死になって目を逸らしたいものでもあるのかね。清水光輔だっけ?向こう見ずの正義漢とか言われてたよな。顔が良いから評判は悪くなかった筈。


 軽く思考を巡らせているうちに話は進んでいたらしく、この国に勇者として協力する形に落ち着いたらしい。クラスの奴らの目が未知の体験に輝いている。内心叫びまくってて煩い。俺の時代が来る?お前の時代なんかこないよ。

 そんなに嬉しいものなのかね。僕には理解できないや。いや、したくない、か。

 『知らなかった世界を知る』なんて、要らぬ苦労を背負い込むだけだろうに。


「協力するのは構わないけど、私たちに何かできる程の力ってないわよ?そこは考えてるの?」

(ったくこの馬鹿はすぐに暴走するんだから。私が手綱を握っていないと駄目ね)


「う゛」

(やばい何も考えてなかった)


「だ、大丈夫だよ光輔君!きっと何とかなるって!」

(光輔君に意見するなんて相変わらず邪魔な女だわ)


「何とかなるで済んだら脳味噌なんか要らないのよ」

(無責任な事言わないで欲しいわね)


「ひ、ひどい!そこまで言わなくたって」

(ああ憎たらしい!)


「おい。喧嘩してる場合じゃないんだぞ」

(何で二人は事あるごとに張り合うんだ?)


「お前が原因だろ?止めて来いよ」

(リア充爆ゼロ)


「あはは、脱線してるよー。さっき軽く強大な力がどうとか言ってたから、漫画とかでよくある魔法とかスキルとか私達も召喚された時に持ってるんじゃない?そんな都合良い話あったりしない?えっと、王女様?」

(リア充爆ゼロ)


「エリーゼとお呼び下さいませ。力に関してですが、それはこれから説明させて頂きます」

(コースケ様とおっしゃるのですね。なんて素敵な方なんでしょう)


 カードをここへ、と王女が文官へと指示を出すと程なくして銀色のカードが運ばれてきた。

 それぞれ一枚ずつ配られる。

 表面の感触はつるつるしていて手触りが良い。厚さは一ミリ程。掌にすっぽりと収まるサイズなので大きくはないが意外と重い。片面にはオルグレンの紋章が刻まれているから、こちらが表になるのだろう。


「これはこの世界でステータスカードと呼ばれるものです。」

(ナゼこのワタクシがこんな人族の子供(ガキドモ)に説明してヤらねばならんのダヨ)


 掌でカードを遊ばせていると説明が始まったようだ。

 説明しているのは僕達とそう変わらない年齢に見える少女だが、心聲(コエ)を聴く限りでは外見年齢と精神年齢が一致しないタイプの種族らしい。


「このカードに魔力を通すことで内部に刻まれた魔法陣が起動し魔法が発動します。発動した魔法は起動者の全身を瞬時に巡り、視界に情報を映し出します。基本的にはその情報が他人に知られることは有りません」

(鑑定水晶持ちや上位の鑑定スキル持ちには意味なんかネーけどナ)


 鑑定スキルね。上位と下位に分かれているらしいが対策が必要かもな。生き延びる為には情報程大切なものはそうは無い。妨害スキルもあるだろうが取得できるとは限らない。強大な力とやらに期待だな。


「まずは試して御覧になってください。文献によると過去の勇者様は例外なくユニークスキルと呼ばれる個人の為のスキルを所持していたそうです。それが必ずや皆様の力になるでしょう」

(俺としちゃあ無能が多い方が良いんだが、それを望むにはあまりにも人数が多すぎる。その内事故に見せかけて間引きしねぇとな。計画に差し障りが出るとマズい)


 おい王子。

 お前ちょくちょく物騒だな。国王の思惑とは関係無さそうだが野放しにするにはあまりにも過激思想が過ぎる。神殿からここに来るまでも何度か実行しかけていたし。計画とやらに関係しているのだろうが、何か焦っている節がある。

 いくら考えていても仕方がない事ではあるが、そもそも今でなくても良い事だ。後回しにしよう。


 今はステータスカードだ。

 それにしても、魔力を流す、か。素人相手に無茶苦茶だな。


 やるしかないんだが。

 こう、か? 



□ ■ □ ■ □


名:スズネ カザミヤ 性:男 称号『静聴者』


レベル:1


スキル:『武術』6:『気配察知』8:『気配遮断』8:『解析』10:『魔力操作』1


ユニークスキル:『刻銘』


加護:鬼神(アバレガミ)の祝福:偽神(カタリガミ)の祝福


■ □ ■ □ ■



 まさにファンタジー。

 レベルって、ゲームかよ。

 レベルの上限は分かっていないそうだ。最古の英雄譚によると、邪神を討伐した勇者はレベル5000を超えていたらしい。

 因みにステータスカードを開発したのはその勇者らしい。というか自称異世界勇者の叔父な気がする。思い返せばこのステータスカード両親も持っていたような……。いや、考えるのは止そう。藪蛇どころでは済まない。


 スキルについては、持っている技能に対応したスキルが現れるらしい。逆に何らかの方法でスキルを手に入れる事が出来れば対応した技能を会得できるそうだ。

 僕の取得スキルに関して視界に表示された説明では


 『武術』…剣術や槍術など複数のスキルの複合スキル。

 『気配察知』…読んで字の如く。スキルレベルが高いと範囲が㎞単位だったり、個人の特定が可能らしい。

 『気配遮断』…読んで字の如く。『気配察知』の対応スキルという側面が強いらしい。

 『解析』…効力は知識量に左右されるらしい。僕がこのスキルを取得したのは恐らく能力の影響だと考えられる。

 『魔力操作』…読んで字の如く。基本的には誰でも持っている類のスキルらしい。


 と、こんな感じだ。

 スキルレベルは1~5が下位6~10が上位にあたる。

 『心眼』なんてスキルもあるらしい。『視る』類の力なので反映されなかったようだが。


 ユニークスキル『刻銘』。

 これは『素材に力有る文字を刻む事で特異な性質を付与する』能力と表示された。

 ユニークスキルである以上細かい効力は自分で検証するしかない。


 称号は個人の特性。『静聴者』なんて表示される辺り僕の本質を表していると言える。


 そして加護。

 鬼神(アバレガミ)偽神(カタリガミ)

 脳裏に過ぎる二人の男女。

 幼い頃から偶に遊びに来る美人な姉さんとクールな兄さんが(そう)だと知った時の衝撃といったらなかった。

 当時はまだ両親以外に心聲(コエ)が聴こえない人には会ったことが無かったから、子供心に凄い人達だとは思っていたけれど。

 真面目に心臓が止まるかと思ったのは人生であの時だけだ。

 というか祝福ってあの()達何してくれてるんだ……。


 鬼神(アバレガミ)の祝福…鬼系種族に敬われる。

 偽神(カタリガミ)の祝福…自身を対象とした『鑑定』や『気配察知』などの知覚系能力・技能(スキル)を無効化する。


 カタリ兄さん。ありがとう、懸念事項が減ったよ。

 アバレ姉さん。敬われてどうしろというんだ。


「それでコースケ様。コースケ様はどのようなユニークスキルをお持ちなのですか?」

(きっと素晴らしいお力なのでしょう)


「えっと。『聖剣の導き手』だな」

(すごい勇者っぽい響きだ)


「まあ!」

(歴代の勇者様と同じユニークスキルだなんて!)


「なんと!」

(今王国の所有する聖剣は一つ。まさか()()の使い手が現れるとはな。都合が良い事だ。この小僧を軸に使っていくとしよう)


「おやおや」

(こいつは確実に殺さなきゃならねぇな)


「!へぇ…」

(アルフリートと相談しないとナ。方針変更になりソウだヨ)


 王国側が歓喜で沸く。

 『聖剣の導き手』というのは随分と歓迎されるスキルらしい。

 過去の勇者と同じ、実績のある力って事か。


 清水は王道勇者らしいな。

 人望が有って正義漢。恋愛事には鈍感で無自覚天然女タラシ。聖剣を持って、多分得意属性も光だろうな。政治的な陰謀に巻き込まれたり、仲間を攫われたり、元敵をパーティーに加えて敵陣に乗り込んだり、旅先で会った奴隷を無理矢理主人から開放して犯罪者になったり、と数々の苦難を乗り越えてハッピーエンド。



 うん。あいつには近づかないようにしよう。



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