導きの儀 -目覚めの時-
こんにちは。
調子が良いのでもう一話投稿してみます。
主人公のキャラがブレッブレですが、
ご容赦ください。
語り口調の時は一人称が「私」
本音が出ているときは「俺」
ということで差別化しています。
「ようこそ。ニュータウン神殿へ。本日はどういったご用件でしょうか。」
豪奢な割に軽そうなドアを開いた先には、
うん、どこの市役所だよ。
整然としたカウンター。
忙しくも音もなく仕事をしている職員達。
待機スペースには横一列に椅子が置かれ、
まばらに人が座って自分の順番が来るのを待っている。
総合受付と思われる一角には、
これまた地球よろしく、他の職員とは顔面偏差値が少々異なるお姉さまが佇まれており、
にこやかにかつスピーディーにお客様を捌いていらっしゃります。
あー、
異世界感ねぇなぁ。。
なんて事を密かに思っていた私です。
「こんにちは。私、エリシア・ニュータウン・アヤムと申します。本日は、息子ワクスタインの導きの儀に際して参りました。」
母さまがそう告げると、受付のお姉さまはふと表情を強張らせ、目線を手元に落とし、
手元にあった魔石に手を当て、どこかに何か確認しているように見えた。
ほー、通信用の魔石もあるのね。
本当に魔石って万能ですこと。
「確認が取れました。失礼致しました領主婦人様。今、係りの者がお迎えに上がりますので、今しばらくこちらにてお待ち下さい。」
え、
またドッキリワード。
今お姉さまが領主婦人とか言ったよね。
言ったよね?
え、母さまって領主婦人なの?
いやいや、俺、父親見たこと無いぜ?
妾腹とかそんなんとか?
こりゃ参った。
あとでちゃんと聞かなきゃ。てっきり未亡人かと思ってたわ。
「ええ、ありがとう。」
「母さま、父上って」
「おまたせ致しましたエリシア様。私、こちらの副神殿長を努めさせていただいております、
グレゴール・エル・シンシアと申します。本日は晴れの日に良いお天気で大変お目出度く存じます。」
「はい、いつもお勤めご苦労さまです。本日はお世話に成りますね。」
「ええ、こちらこそ。こちらがご子息様でいらっしゃいますね。ああ、領主様にそっくりなお御髪の色と漆黒の目。
きっと素晴らしい結果になると確信しておりますぞ!」
このスーツを着ているおっさんはここのNo.2なわけね。
歯の浮くような甘言は、まぁご機嫌取りですよね。わかります。
上司が本部の役付きさんと会食した時にもこんな事言ってたなー。
そんときは俺はドライバーで行ったんだよな。
帰り道に本部の役員さんからお疲れ様って言われて、ちょっと嬉しかったんだよね。
やっぱり上の人から言われる感謝って心救われる。
「ではこちらへどうぞ。奥様。」
奥にある階段に通され、2階の一室へ。
扉を一つ入ると、そこは応接セットが設えられた部屋だった。
正面には大きく絵画がかけられ、どこか宗教画的なイメージを醸し出している。
左手には次の間へ続くようなドアがあり、そこはどこか厳かな雰囲気が漂っていた。
「奥様はこちらでお待ち下さい。お坊ちゃまは、こちらのドアへどうぞ。」
忽然と現れた秘書風の美人さんに誘われ、私は件のドアの間へ入っていく。
中は明かりが一切なく、
恐らく部屋の真ん中に、薄ぼんやりと光る椅子が2脚向かい合わせで置かれていた。
「こちらの席にてお座りになられてお待ち下さい。じきに始まります。」
片側の椅子に促され、ドアの向こうから漏れる光を頼りに席へ着く。
秘書さんがドアを閉めると、そこは本当に光る椅子しか見えない空間となった。
この椅子何で出来てるのかなあ。
これも魔石とかかなぁ。
等と興味の谷で呆けていると、
突然、向かい側の椅子の光が強くなり始めた。
目を開けられぬほど光が強くなったその時、
その椅子には見たこともない程美しい顔をした、銀髪、紅眼の お と こが座っていた。
「我を呼ぶものは何奴だ。……貴様か小僧?」
「あーえっと、はい。」
「ふん、このような小僧に呼ばれるとは、我も魔界の年貢の納め時か。
して、貴様の名はなんと申す?」
「あ、えっと、」
待て待て。なんでスキル見るだけの機会なのに、気位の高そうな美男子が召喚されちゃってるわけ?
しかも魔界の年貢のーとか言っちゃってたよね。言ったよね。
っていうことはこの美男子は魔族確定じゃないですか。
えーえーどういうことっすか。
おう、俺、冷静になれ。
こういう時には前世知識。魔族と話すときは、、あ、なんか先に名乗っちゃいけない気がする。
「お兄さん、名前を聞くときは自分から名乗るのが筋じゃないでしょうか?」
一瞬の沈黙。美男子の顔が一瞬歪み、ニヤリと笑う。
「ふん、中々聡い小僧だ。あのまま名前を申しておったら、そのまま隷属契約をしてやったものよ。
まあよい。天魔7柱が一人、マティウリスだ。
さて、小僧よ。我がこうして顕現したと言うことは、呼ばれたからに他ならぬ。
他の生物がおらぬこの状況を見るに、小僧に呼ばれたということが事実であろう。
言うなれば、小僧。お前が我が主となる。契約のためにも、改めて、名を賜らん。」
「うん、僕の名前は ワクスタイン。ワクスタイン・ニュータウン・アヤムだよ。
よろしくね。マティウリス。」
その瞬間、俺の座っている椅子が碧く輝き、魔法陣のような文様を床に書き始めた。
同じく、マティウリスが座っていた椅子からは翠の色をした同じような文様が広がり、
その魔法陣は、重なりあい、交じり合い、床から持ち上がり、また、一つとなって広がり、
その色を金色に変え、遂には二人を包むように弾けた。
「これは、契約の椅子か。なるほど。悪い気分ではない。
小僧。……よく見れば存外な魔力量を持っているな。む、こ、、これは。途方も無い魔力量だ。我が主と仰ぐに相応しい。
技能は、、、なんと!このような存在に我は呼ばれたのか。恐れ多い。
このマティウリス、誠心誠意我が主へ遣えさせていただこう。」
何だ何だこの展開!
一人でくっちゃべって、一人で納得して、一人で俺を主と呼んでいる。
「ねぇマティウリス。僕ってそんなにすごいの?」
「ああ、我が主。主は神の加護を2つも冠しておる。他にも、普通の人族には通常1つあればよい技能というものが、
主には4つもあってな。使いどころは選ぶやもしれんが、潜在能力は底知れぬ者よ。
主よ。ステータスと念じてみよ。」
え、俺もうそれ試したことあるんだけどな。
物心ついたその日に(産まれたその日に)メニューとかアイテムボックスとか
異世界テンプレは一通り試してみたんだよ。
自動翻訳とか全く無かったし、産まれたその日から最強とか憧れてたけど、
うんともすんともうまく行かなかったから、そういうものだと思ってたんだけど。
「ステータス」
ワクスタイン・ニュータウン・アヤム
age 03
level 01
skill
サウズ神の加護
女神ノスリアの加護
自動地図
料理 level 5
心眼
疾風脚
???
???
---
Contract
天魔-強欲のマティウリス
え、出るやんけ。
落ち着け。俺。
HPとかMPとかINTとかの項目はないけど、レベルとかスキルとかありますやん。
何故今更出る。
あれか、契約したら見れるようになるってか?
ていうか、加護まじで2つあった!
他のスキルは、
自動地図
料理 level 5
心眼
疾風脚
の4つ。
自動地図。なんかわかる。俺昔から一度行ったところは忘れない質だったんだよね。
料理。これもまあわかる。伊達にガキの頃から自炊してなかったもんな。
心眼。これがよくわからない。
『心眼』:あらゆる物を正しく見通す力。スキル『鑑定』の上位互換。
あれ、今なんか突然アナウンスが流れて、目の前に文章が出た。
これか。心眼の効果ってやつか?
じゃあ試しに、
疾風脚ってなんぞやー
『疾風脚』:獣より早く駆け、その速さにより姿をくらます事もできる足捌きの技能。
わー、ビンゴ。
疾風脚も便利だな。どれくらい早いかわからないけど、隠密性まで備わっちゃってるよ。
『疾風脚』の通常時最高速度は300km/h
あ、心眼さん補足ありがとうございます。
300って、すごいな。新幹線並みか。
気をつけないと人轢き殺しちゃいそうだ。
「主よ。見ることは出来たか?」
「うん、マティウリス。なんだか突然色々出来るようになって混乱してるけど。」
「ふはは。主よ。誰しも己が力の目覚めの時はそのようなものよ。
ところで、我が頭の中に言霊が降りてのう、ちと待たれよ」
すると、彼は目をつぶり、その両の手を前にかざすと、何かを呟き始めた。
かざした両の手から銀色の光が漏れだし、その光はワカの腕にも集まり始める。
二人を繋ぐ銀の光は、やがてその腕に纏わりつくようにその形を留めると、
穏やかに光を失い、そこには揃いの銀の腕輪が填まっていた。
「これは、何?」
「主よ。これは『契約の環』と言うらしい。どうやら、個人認識のための機能や、無限空間の技能が得られるものらしいぞ。」
わーお。
来ました。アイテムボックス。
本当に一度にごそっとイベントだね。
今までがプロローグだったんだね。
コンコン
唐突にノック音が聞こえる。
マティウスに今までの私の人生を前世含め、転生者であることを語ったところ、
余計に畏敬の念を抱かせてしまい、どうしようかとあたふたしていたところだったが、
ある意味助かった。
そうだ。忘れていた。
もうどれくらい時間が立っているのだろうか。
「はい。どうしましたか?」
ガタンッとドアの向こうから音がする。
「ワクスタイン様、導きの儀は終わられましたでしょうか。」
ちょっと狼狽えた声だ。やばい。大分待たせてしまったのだろう。
「ええ、終わりましたよ。今そちらへ出ます。」
ドアを開けると、
母さまと、副神殿長と、秘書さんと、
あと3人いた!
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
拙い文章ですが、今後共よろしくお願いいたします。
さて、作者は実は日本におりません。
時差のある生活をしております。
あー、生卵食べたい。