新しい季節 -時の流れははやいもので-
更新お待たせしました。
今回から2章です。
「おおい、ソコの姐ちゃん、俺達とこれからイイコトしようぜ。」
「ちょっと、困ります。話してください。」
「そう言わずにさぁ、俺達がかわいがってあげるからいいじゃない。」
「辞めてください。」
「面倒だなぁ。お前に拒否権はないんだよ!だまってついてくればいいんだよ!」
ニュータウンの一角。花街通りに当たるところか。
この辺りには小さな飲み屋が多く軒を連ねており、
夜も更けてくると、こんな酔っぱらいのくだらないお調子者が時偶現れる。
店によっては、店舗の外にも椅子を出し、青空席を作って営業をしているところもあり、
この酔客の醜態を見ているものも多くいるのだが、
何 故 か、皆少し期待をした顔をして眺めているだけである。
ドンッ
酔っぱらいの一人が後ろから、蹴飛ばされたようだ。
「ああ?なんだ。。て。め。。え。。。は?」
声は段々と萎んでいく。
周囲からは期待の目線がそちらに集まる。
「ああ、スマン。路傍の石と思って、気にもしていなかった。」
黒いサングラスをかけており、その顔は隠れて見えないが、
長身、スラリとした手足、しかし、細すぎず、太すぎず、鍛えているであろう体つきと身のこなし。
仕立ての良さそうなピンストライプのセットアップに、これもまた仕立ての良い革靴。
ジャケットの上には、恐らく、魔獣のものであろう毛皮のコートを羽織、袖は通していない。
そんなイカニモな男の後ろには、
さらに背の高く、威圧感を放つ男と、狼人の男。
また、その後ろにも何人か、顔の厳しい連中が、揃いのスーツで酔っぱらい達を見下ろしていた。
「ひいつ」
自分達が何に相対しているか、理解が進んだ酔客達は、
酔いも一瞬で覚めたのであろう、脱兎のごとく逃げだそうとしたが、
しかし!回りこまれてしまった!
「おい、坊主たち。お前たちに嫌な思いをさせられたお嬢さんに詫びの一つもできないのかい?」
いつのまにか目の前に立っていた狼人にそう言われると、
彼らは間髪をいれず、美しいジャンピング土下座を見せた。
だが、
「なんで俺に謝ってんだ?謝る先がちげえだろ?」
「「「すみませんでした!もうしません!」」」
そうして彼らは深々と頭を下げ、一刻も早くこの場から離れようと、ダッシュでかけて行った。
今度はその場から立ち去ることは出来たものの、
恐怖で足がもつれタマタマ近くにあったゴミ箱にぶち当たって派手にこけたり、
何も無いところでお互いにもつれ合ってすっ転んでと、散々にして見えなくなっていった。
「お!今日もかっこいいね!若の頭!」
「いやー今日もいいものが見れたね!親父もういっぱい!」
「若頭!一杯飲んでいきなよ!あたしがおごるから!」
そんな声が、先ほどの喧騒を見ていただろう周りの店の客や店主達から、次から次にかけられる。
「お前らなぁ、もうちっとてめえらでなんとかしようって気にはならねえのか?」
「「「だって、若頭みれないじゃん。」」」
頭を抱える若頭と呼ばれる男。
ええ、言わずもがな、ワカですけどね。
ニュータウンは、この10年ちょっとの間で、目覚ましい発展を遂げた。
類まれなる領主の手腕によって、各種商業が創始され、また、飲食店の種類も多数増えた。
それにともない、職業従事者が増えたことにより、
人口も増え、今まで手付かずになっていた地域にも住居やビルが立っている。(大久保周辺や、西新宿方面)
犯罪件数に関していえば、人口に比較して他領と比較しても、驚くほど少なく、
これもまた、この地域に人口が集まってくる理由の一つにもなっているようだった。
「さって、帰るとするかね。」
「ええー、もう帰っちゃうのぉ?ゆっくりしていけばいいじゃないのさぁ。」
「ふふ、そんなこと言ってると、旦那さんが嫉妬するよ?」
「あら、私に旦那がいること知ってたのね。全く、内緒ですよ?若頭?」
「ああ、わかってるよ。」
「おっし、事務所かえっぞー。あ、おっちゃん串焼き一つクレ。」
串焼き屋の親父にもってけ!とパックごと渡され、
後ろに控えるものにぶん投げると、
スタスタと歩き始めた。
道道に出くわす商売人や、地場の人間は、気安く声をかけ、
外部の人間だろうモノ達は、その一団の風貌からだろう、
遠巻きに、目を合わせずに足早に去るのだった。
「そろそろ、暖かくなるかなー」
「ああ、またサクラの季節だな。」
「マティはほんとサクラ好きだよな。」
「ああ、あの儚さと、桜吹雪がな。」
「俺は、花見の方が好きだぜ。」
「お前は飲みたいだけだろう。」
「ちっげえし!」
そんなように打ち解けた話をしつつも、
マティウリスは片手でスリを捕まえていたし、
フェンリッヒは馬車に轢かれそうになっていた子猫を助けていた。
平和だ。
「「「「「見回り、ご苦労さまです。」」」」」
「あいよー。また、いつものショータイムに呼ばれたらしい。
困ったもんだよ。あいつら俺を舞台役者とでも間違ってんじゃないの?今度から出張料でも取るか?」
「ふふふ、いいではないですか、各店舗から一公演につきいくらか取っても、彼らは恐らく喜んで払いますよ?」
「ぐえ、辞めた。そしたら行かなきゃいけない義務感が、、」
「左様ですね。お茶お入れしますね。」
「ありがとう。ヌエ。」
事務所の組長室。
そこにある拵えのいい、革張りの執務椅子に腰掛けると、ヌエと冗談を交わす。
ふと視線を机に向けると、そこにはいくつかの案件がファイルに纏められて置かれていた。
西街区 開発計画
王宮区サウザントとの街道整備計画
東商業区 不適切店舗取締計画
ポートタウンとの提携計画
隣国 神聖リヴァティス国の動向
それぞれ、何枚もの用紙が挟まれ、所々に付箋が貼られているのが開くまでもなく見て取れる。
ちなみに青いファイルは父である領主から直接展開されている情報。
今で言う、上から3枚目までのファイルがそれに当たるもので、
緑のファイルに関しては、若葉組が独自に情報を入手しているものだ。
紙媒体のファイルで今は執務机に並んでいるが、
いつのまにやら開発された、pcのようなものも実はデスクの上に設置されている。
魔導工学を用いて作られており、どうやら件の『鋼鉄』謹製のものとの噂がある。
このpcは、一般にも広く普及しており、
中央の重要機関や、領主の館には勿論設置されているという事だが、
ここまでの性能を持つものを個人で有しているものは、ワカ一人であるというのが事実である。
「メールメール。。ああ、バンバのやつ、まだ、北の5領地連合に泣きを見てんのかよ。
と、これは、あ、まおこちゃんね。何々、あ、やべえ、明日試合なのか。見に行かなきゃ。
んで、おお、これは、我が親愛なる妹から、、、って!ちょっと!なんで母さまと二人で銀銀苑なんか!ずるい!」
メールくらいならどんなpcでもいいじゃないかという指摘は勿論だが、
このpcのメインユーザーは今や彼ではないので、そっとしておいてあげて欲しい。
「さて、今日もお仕事終わり。あー、もうすぐ新学年かー。
今年は学生最後の年だから楽しみたいな!」
新しい年が始まる。
新しい出会いがある。
新しい仕事が起る。
始まりの季節だ。
どこでも変わらない、季節の始まりがやってくる。
ここニュータウンにも同じように時はめぐる。
そんなこの街の人々は、領民は、口を揃えて言うのだ。
「うちの領主様 達 の治世は素晴らしいと。」
どういうことだと尋ねれば、皆またこういうのだ。
「うちの領主様は 『2枚看板だからね』 と」
「へえ、ここがニュータウンね。」
ここまで読んで頂きましてありがとうございます。
3歳時から、17歳までジャンプアップしました。
14年間彼が何をしてきて、どう変わっていったのか、
都度、話の中でできたらと思っています。
一応、この17歳からがメインストーリーかなと思っています。




