遅く起きた朝 -事務所の今後の展望-
朝起きると、そこは知らない天井、、ってな事はなく、
俺は自室のベットで少し遅目の起床をした。
昨日は良く働いた。
ちょっと疲れたけど、ノーダメージだしな。
「母さまは?」
「自室でまだ休んでいるぞ。3箇所を貫かれたんだ。
回復魔法は飲ませたが、肉体の超回復が起こっているはずだからな。体はまだつらかろうて。」
「そうか。ありがとう。」
母さまの無事がわかり、肩が少し軽くなった気がする。
どうやら俺は気づかないうちに大分緊張をしていたようだ。
それはそうか。一応初の実戦だったしな。
まぁ、我ながらよくやったもんだ。
アンチ魔法バリアを突き破って魔法で勝つなんて、地球人にしたって到底ありえないことだしな。
「そうだ、バンバはどうなった?」
「そのあたりは私からお話します。ワカ様。」
「頼むヌエ。」
どうやらあの後、憲兵が来たらしい。
その時にはうちの組の連中は撤退していたので問題なし。
その場に残ってくれていた轟竜さんのとりなしで、戦乙女の面々も特に無し。
バンバの連中が道の上にまとめて置かれていたので、そこから事情聴取を行っているらしい。
バンバ自身は氷漬けからは出して縛っておいたから、
そちらも命に別状はなく、ただただ、何かにおびえているそうだ。
うちの組の連中は、大掛かりな対外戦を期待していたようで、その部分では残念がっているようだが、
俺のド派手な魔法を見ることが出来たっていう事で、違う意味でホクホクらしい。
わからん。
カチャ
「ワカちゃん」
「母さま、もう具合はいいのですか?」
「ええ、少し体がダルイだけよ。
あの、、昨日は、本当にありがとうね。おかげで助かったわ。」
「いえ、ぼくもタマタマ詰めていたので対処が出来ただけです。運が良かったのです。
今後は、お互いに、連絡してから行動するようにしましょうね?薔薇姫様?」
「ワカちゃん、、それは言いっこ無しよ。」
苦い顔をみせる母さま。
これぐらいイジっておかないと、もったいないじゃないか!
「それはそうと、母さまならもっとやれると思ったのですが。伊達に薔薇姫と呼ばれていないでしょ?」
「ええ、そうなんだけど、ルールーが私のために犠牲になったと思ったら、体が動かなくなってしまったのよ。
きっと、大切な人を失う恐怖だったのかしら。
それを含め、ワカちゃんが現れた時には、本当に天使様がいらっしゃったのかと思ったわ。」
ニコニコと笑みを浮かべ、静かに俺に抱きつく母さま。
俺はポンポンと母さまの頭を撫で、無理はしないでと呟く。
お互い様でしょと聞こえた気もするが、胸に温かい雫がかかった気がして、何も言えなかった。
暫くして、ルールーも部屋から出てきた。
ルールーは客間に寝かせていたのだが、見たところ顔にも赤みが指しているし問題ないようだ。
彼女にも黒蝶と二つ名いじりをしてちょっと楽しんだ。
ルーからはそこそこ重いゲンコツを貰ったのはご愛嬌だな。
「さて、母さま、ルー。ちょっと気がかりがあるんじゃない?」
「「え?何かな」しら?」
「魔導二輪置きっ放しできちゃったでしょ?」
「「あ、、そうね。。」」
見るからにうなだれる二人。そんなに大好きなんだね。
俺も成長したら欲しいけどさ。
「大丈夫、回収しておいたから。下の駐車場のうちのスペースに2台とも留めてあるよ。
ルーのやつはコケてたから、傷ついてるかもしれないけど、後で確認しておいてね。」
それを伝えると、二人から熱い、熱い抱擁を頂き、母さまからはキスの嵐が飛んできた。
やっぱりバイク乗りの脳内はわからん。
「じゃあ、ぼくはちょっと事務所に顔出してくるね。」
「ええ、夕飯までには帰るのよ?」
「わかってるよ母さま。」
日常に戻った会話を交わし、僕はマティウリスと、ヌエと連れ立って、事務所へと向かった。
街の中は本当にいつもと変わらない日常が流れていて、
温かい日差しが降っていた。
並んで歩きながら、事務所の入り口へとつくと、
いつの間にかそこには、立派な 『若葉組』という看板が掛かっていた。
本当にいつの間にだよ。
昨日遅くまでドンパチやってたのに、色々準備がいいな。
驚くのはまだ早かった。
事務所の中には既に、応接セット、絨毯、事務机が数台、パーテーション等、ちゃんとした事務所に様変わりしており、
手に箒と塵取りを持った組員がせっせと床を掃き清め、
手に雑巾を持った組員は、これまたせっせとガラスやテーブルを拭いていた。
俺が事務所に現れたのを見かけると、
「ご苦労さまです。ワカ様」
と挨拶まで徹底しているところは、きっとヌエの強力な教育の賜物なんだろう。
促されて、奥に進むと、
「組長室」と書かれた部屋が作られていて、どうやら俺の部屋らしい。
今のところは他の部屋との差は無いけれど、
好きにイジってくださいと、ヌエからお言葉を頂戴した。
3歳時の組長って、どうなのさ。
上の階はどうやら宿舎として活用するらしく、ワンフロワ更に貸し切り、合計3フロアをうちの組が使う事になったそうだ。
採算とか大丈夫?と聞いてみると、このビルは、組員の誰かの実家の持ちビルらしく、空いているところを二束三文で使っているらしい。
そりゃあ、問題無いわな。
「ところで、昨日の今日だけど、仕事見つかりそう?」
「ええ、今日の午前中に、皆で手分けをして、顔の効くところに『けいびいん』の派遣を受けないかと打診をしてみました。
用心棒みたいなものだという説明で皆納得していただけ、
今のところ、3つの商会と、2つの飲食店、二人の個人から依頼を受けた状況です。」
「表仕事は、これでとりあえずの仕事は出来るかな。人の割り振りは決めた?」
「はい。基本的には今回は夫々の顔を繋いだ人間が専属でつく形になります。
もちろん、24時間警備を依頼されているところもございますので、そこへは二人、ないし三人のローテーションになるかと。
また、専属警備の方についても、緊急時のバックアップ要員は既に設定しておりまして、連絡手段等も決まっています。」
「わかった。それと、給料体系はどうしようか。」
「はい。その点ですが、今回契約を取ってきた7人に関しては、手当をつけようと思います。
それを加味し、役職付きはオーガンしかおりませんので、彼以外は一律にて支払おうと思っています。」
「それで行こうか。次は、、オーガンはどういう仕事を振ろうか。」
「基本的には私の補佐につけます。私も暫くは、アチラコチラに飛び回らなければならないと思いますので、
それを補助してもらう人間は必要です。幸い、彼は現場指揮の素養は高いので、問題ないかと。」
「彼はここの要だね。もっと大きな人間になってもらわなきゃね。」
「はい。ワカ様の片腕になりうる人材に育て上げますよ。」
「それは結構。もう少し表仕事が軌道に乗ったら、採用もしてみようか。表仕事部分だけに関わる一般社員のような人。」
「そうですね。それも必要でしょう。今は事務仕事も私が行っていますので、その部分を引き継いでいくようなイメージですね。」
「うんうん。じゃあ、裏のほうは?」
「ふふ。昨日のあれが既に裏では目下の大ニュースになっているようですよ。
薔薇姫敗れる! バンバ朽ちる ! 薔薇姫を助ける黒衣の王子現る!っていう感じらしいです。
全く、もって、いい傾向ですがね。
既に、いくつかのルートから、武力提供の打診がありましたが、全て断っています。
武力関係はこの方向でよろしいですね?」
「ああ、うちの武力は他所には貸さない。うちの力はあくまでも、守るための手段だ。ヌエも、皆にそこを徹底させて欲しい。」
「理解しております。それと、忍者部隊の方にも、仕事の依頼が入っていますが、、いかが致しましょうか。」
「そういえば、忍者って、うちの直轄じゃないでしょ?直轄に雇えないの?そこにいるみたいだけど?」
「え?」
壁の中からヌルんと現れた8人の集団。
先頭の一人は顔を出していたが、後のものは今日も顔を隠していた。
その場に全員が跪くと、
「ワカ様、我らを召し抱えていただけるのでしょうか。」
「うん。昨日からずっと世話になりっぱなしだよ。君たちがどこかに所属していないんだったら、
俺のもとで働いて欲しい。どうかな?」
「は。私はもとより若葉組の人間ですが、この者たちも召し抱えていただけるのであればそれはまた嬉しく存じます。」
「了解。これからも頼むね。」
「は。畏まりました。」
いうと、彼らは床に沈んでいき、また居なくなった。あれは魔法なのかな?
「ってなわけで、構成員4人追加ね。お、これでヌエ含めたらちょうど30人だね。」
「ええ、左様ですね。忍びの者には、基本は平時の情報収集。氏名依頼の際は、それに沿った人数配置で参りましょう。」
「ちなみにさ、警備部門って多く見ても15人で足りるじゃない?あと数名は仕事どうするの?」
「はい、残りの者には、一人にはここの管理を、一人にはワカ様の周辺護衛を。後の6名の内、3名は市井の巡回です。
最後の3名ですが、例の3名です。いかがいたしますか?」
「ああ、あいつらか。うん、あいつらにも市井周りをさせよう。まず顔を売らせないと。」
「畏まりました。様子をみて、また配置替えも検討します。」
「おっし。これでざっくり大丈夫かな?」
「はい。ワカ様。ところでお茶でもいかがですか?」
いただこうかな。と伝えると、ものの数秒で事務所の管理を任されているだろう組員がやってきた。
こいつあ、、、
執事だ!
なんで、こんな人が組員やってんねん!
ってくらい、完璧な所作。おっそろしい。
そしてお茶も美味しい。
きっと、今後は調度品とかもこの人が管理するようになるんだろうな。
この人に任せておいたら、方向性さえ伝えておけば間違いないだろう。
マティがコソッと、この執事さん只者じゃないって言ってきた。
うわー、そんな人が留守を守ってくれるなんて、素敵やん。
コンコン
どうぞー
「失礼致します。ワカ様にお客様がお見えです。」
ふえつ?なんで俺がここにいるの知ってるの?
「え、俺を名指し?」
「はい。領主様がお見えでございます。」
父上参上でした。
こんばんは。
ここまで読んで頂きましてありがとうございます。
優秀な部下がいると、話が早くていいですね。
私もヌエが欲しいです。
マティは戦闘にならないと今のところ空気ですね。
すいません。
早く大人にさせたーい!




