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なんと、強面が起き上がり仲間になりたそうにこちらを見ている! - YES/NO -

こんにちは。

ちょっと今日は忙しいです。


「その方ら、覚悟はいいな」


マティウリスの眼光鋭き睥睨に、その場に居合わせたゴロツキたちは竦み上がり、


咄嗟の反応をすることが適わなかった。


いや、


咄嗟の反応をすることが出来たとしても、その後の結果は同じだったであろう。




「いや、マティさん、これはなんとも。」


「ワカよ。ヌルい仕置は小奴らを付け上がらせるだけ。やるときはキュッとな。」



そう言って二振りの剣を虚空に収めると、


もう一度あの目であたりを見回し、ふと吐息をつく。




今目の前で起こったことを語ろう。


俺の、目の前に現れた黒衣の麗人が、


二振りの剣を左右にかざして、気合一発。


紫電があたりを飛び跳ね、踊り、囲っていた男たちに襲いかかっていった。


後ろに控えていたリーダーらしき人間にも数瞬遅れて届いたそれは、


全くもって、防御も、回避も意味となさず、好きに暴れ回る、さながら妖精の悪戯のようだった。




とかかっこ良く言ってみたけど、


要するに、マティが電気ショックでバーンで終了ってことですね。


戦闘時間、1秒。




「あ、あれまだ動いてるよ?」


「む?」



後ろにいたリーダーらしき男が、あの電撃を喰らった後にもかかわらず、


ヨロヨロとだが、立ち上がってきた。



「ほう。人間用に2%まで出力を抑えていたが、立ち上がるものがおったか。これは興味深い。」



マティウリスさん、あれ2%ですか。


全力開放だとどうなっちゃうんでしょうか。



「お、、お前さんら、、どこの、、もんだ。。」


「僕はワカ。彼はマティ。どこのものでもない。僕は僕だし、彼は彼だよ。」


「ワカは我が主にして、主君。それ以上でもそれ以下でもない。」


「っく、、俺は、、こいつらを纏めていた、、オーガンってもんだ。。


 この一帯の荒くれどもを、、締めている。


 俺が、、こんなみっともねぇ姿、、晒しちまった、、って分かったら、、この辺の、、やつらはもっとのさばる。


 こんなに圧倒的に負けたおめえさん達だから、、頼む。恥も忍ぶ。無礼は、、、詫びる。


 どうか、俺らを、、、おめえさん達の、、下につけてもらえねぇだろうか。。」



痺れと、屈辱の両方に体を囚われたオーガンの、嘘とは取れないこの言葉に、


私とマティは顔を見合わせた。


「マティ、どう思う?僕としては自宅の周りの風紀が乱れるのは喜ばしくないんだけど。」


「ワカ。我も同意だ。あの住居には主だけでなく、お館様もいらっしゃる。」


「そう、じゃあ、ここは任せてもらっていいかな?」


「主よ。主の名は絶対である。例えそれが過ちのものであっても、それをサポートするのが我の仕事だ。」


「分かった。助かる。」



そう言って頷くと、オーガンに向き直り、顔を引き締めて語りかけた。


「オーガン。君は僕のマティに負けました。そして、僕の庇護下に入ることを望みました。間違いないですね?」


「ああ、坊っちゃん、いや、我らがボス。間違いない。この場にいねえ奴には後で俺から言っておく。


 この誓いは絶対だ。俺が破らせねえ。」



何人かが電撃から復帰していて、オーガンのこの言葉に目を開いていた。


不安と、焦燥と、少しの期待を孕んだその視線を一手に受け、私の次の言葉を待っている。



「理解した。オーガンとその一味を僕の配下に置こう。しかし、ただ庇護下に置くわけではない。


 僕の庇護下にあるという事で、悪さをするようでは元も子もない。


 僕の庇護下にある限り、僕の定めたルールに従ってもらうよ?いいね。」



そして、幾つかのルールをオーガンに告げた。


1,人攫いは辞める。ただし、迷子、孤児等、庇護者のいないものを見つけた時は僕のところまで連れてくること。


  相応の謝礼を出して、僕が面倒を見る。


2,無闇な戦い、決闘、闘争行為を行わない。


  この街の治安維持、他のグループのゴロツキとの諍い、等特例の際はその限りではないが、僕の承認が必要。


  しかし、緊急時はその限りではない。


3,清潔にすること。そのフザケタ異臭のする格好を改めること。

 

  支度金は追って僕から提供する。


4,言葉遣いもなんとかすること。


  これは、頑張ってもらう。


5,上下関係は絶対。組織構成員の序列、連絡体制、位置把握を明確にすること。


6,合法的なやり方で、お金を稼ぐこと。



取り急ぎ6個の条件を彼らに課した。


最後の条件の時に、方々から呻く声が聞こえたが、これは後でオーガンに理由を聞いてみよう。



「それでさ、オーガン。君らに拠点ってあるの?」


「へい。ワカ様。最初にお見かけされていたところの建物の5階と6階が俺らの拠点になってます。


 今いない奴らはだいたいそこで寝ているはずです。」


「オッケー。じゃあ行こうか。」


「へ?」


「カチコミ」


「ワカよ。その『かちこみ』とはなんぞや?」


「ええとね、殴りこみって意味かな。まぁ、実際に僕らが言って お話 したほうが早いかなって思って。」


「なるほど。さもありなん。オーガンよ、連れてまいれ。」


「へ、へい!マティの旦那。おら、てめえら、まだくたばってる奴ら担いで、寝床に戻るぞ。」


「「「へいっ!お頭!」」」





ぞろぞろと、人相の悪い男たちに連れられ、僕らはすき◯ビルの5階に向かった。


ヒソヒソと私達に向けて訝しむ目と口があったが、


その人相の悪い男たちは見るもボロボロ。


どういう事情なのかを詮索するような、ゴシップを求める目線がほとんどだった。



程なく彼らのねぐらへつく。


「なあ、オーガン。ねぐらとか寝床とかじゃなくて、今後は『事務所』って呼ぶようにしてね。


 そのほうが格好いいでしょ?」


「へえ、ワカ様。かしこまりやした。」


「じゃあ案内してよ。」




彼らの『事務所』にあがると、そこは


強烈な男臭さの蔓延るまさに雄の巣さながらであった。


窓はあり、カーテンもついていた形跡はあるものの、破れたものがそのまま歯切れのように張り付いており、


床には食べカス、飲みカス、武器、私物が散乱していた。


仕立ての良いものであったろうソファーも、いたるところにシミがつき、


揃いのローテーブルにはこれまたワンサカと食べ散らかした跡や、ナイフが突き刺さっている様子。




「これは、なんとまぁ。」



マティも同じ感想らしい。


私も一人暮らしが長かったため、出来るだけ負担を減らすために、


【出したらしまう。その日のうちに片付ける。】


を徹底していて、結果的に、部屋の中が散らかっているのは見過ごせない性格だ。



「オーガン。人を集めてくれ。」


「へい。ワカ様。」



上階から何かが砕ける音や、人の悲鳴が聞こえた気もするが、特に気にしないことにした。



全員が揃った5階の一室には、総勢22人の無法者や、荒くれ者。


ぱっと見た目は普通なのだが、下卑た目をしているものや、只々体の大きな物。


様々だが、皆、社会不適合の烙印を押されたであろう面々が揃っていた。



「お頭、なんだよこのちびと黒いのは?客か?」


あの場には居合わせず、ここで寝ていたであろう10人がみな揃ってオーガンの方へ目を向ける。


その発言に、周りの者達は、やれ口を塞いだり、


ナイフを取り出そうとした体を羽交い締めにしたりと、バタバタと自主的に大人しくさせていた。



「こちらにお越しいいただいたこのお坊ちゃんは、俺らの新しいボスとなるお方だ。


 ボス、お言葉を頂戴してよろしいでしょうか。」



オーガンが丁寧な言葉で俺を前に出す。


彼はお頭と呼ばれるだけあって、そこそこの常識と、教養を持っているらしい。


丁寧な言葉も様になっている。


前に出た僕に集まるゴロツキの視線。


後ろに控えるはマティウリス。


上に下に視線が忙しいが、うん、ここは僕の力も見せたほうがいいかな。



「ワカ。控えめにな。」



あはは。マティにはお見通しらしい。


「お前たち。僕はワカ。さっき君たちのお頭と君たちのお仲間から、ちょっかいを出されたから、返り討ちにしたら、


 僕の配下にしてくれって頼まれた。それを受けようと思ったから、一度挨拶に来た。


 文句のあるモンは前に出てくれ。」



威圧感の欠片もない3歳時にそんなことを言われ、


押さえられていたゴロツキの一部は、締め付けを振り切り、前に出た。


並びの後ろに立っているゴロツキどもは、悲壮な顔のモノ、浅慮を嗤うモノ様々だったが、


オーガンは、これから起こることに少し期待をしている顔をしていた。


いい傾向だ。


「6人か。分かった。殺しはしない。」



そう呟くと、私は魔法のイメージを始めた。


使うのは水魔法。


地球の高圧水による切断機。もっと出力を上げる。ダイヤモンドをカットするものよりも圧縮。


人差し指を伸ばし、二人の人間の間をめがけ、放つ。



はらりと落ちる、髪の毛。


両方の頬から一線の血筋。



それを意に介さず、


次の二人へ目を向けると、彼らの目にはまだ闘志が見えた。


次は炎魔法。


ファイアボールでは威圧にならないな。


調度良く二人が持っているナイフに向け、レーザーのように細く伸ばした蒼い炎を走らせる。


ゴトリという音共に、柄の先が無くなるナイフ。



これもさも当然とした顔で、最後の二人組に向かう。


使うは闇魔法。


僕の闇魔法といえば、あれだ。


「汝、我のもとに集わん。」


それっぽく詠唱をしてみた。今までは無言で魔力を放っていただけなので、


これをやることでよりそれっぽく見えるだろうという考えでの事だ。この詠唱に特に意味は無い。


短い詠唱の後、残る二人の間に魔法陣が現れる。


二人は驚き立ち退き、周りの人間も何事かと床を覗き込む。



「来たれよ。我が元に。ヌエ。」



名前を呼び終わると同時に、魔法陣から光が溢れる。


その輝きは、緑と青の放流に染まり、渦を巻いていく。


一瞬の閃光の後、魔力の白煙が揺らめく。


そこには、



膝を折り、私に傅く、スーツを纏い、美しい顔をした髪の長い、 男 がいた。



「よく来た。ヌエ。」


「はい。ワカ様。ご機嫌麗しゅう。」


「僕と君は初対面だと思ったけど、何故名前を?」


「お呼び頂いた時に、名を呼んでいただきました故、知識が一部リンクしております。」


「そうか。それは重畳。それで、ヌエ。君にはここの管理を任せたい。」


「はい。ワカ様の命であればなんなりと。」


「ヌエ。久しいな。」


「これは、マティウリス様。暫くにございます。」


「まだ猫かぶりか?」


「ふふふ、此れからに御座います故。」



そうしてひとしきりやり取りをして、その後ろに注意を戻すと、


誰も彼もが唖然とし、信じられないものを見ている様だった。



「ボス、いえ、ワカ様。今のは、、いったい」


「オーガン。今のは僕の召喚魔法。流石に僕もまだ3歳でしょ。ここに毎日来るわけにも行かないから、


 情報伝達の役目と、君たちの管理、教育を兼ねて、ヌエを呼んだんだ。


 彼は、元マティの部下。実力派折り紙つき。……わかるね?」



僕の一言で怯む一同。


それに応えるようににっこり笑うと、


「ヌエ、一言。」


「はい、ワカ様。


 ただいまご紹介に預かりました、ヌエと申します。みなさんの管理、教育を委任されましたので、


 今からビシバシしごいていくから。 覚悟 し て ね?」


最後にバチンとウィンクをすると、満足そうに微笑む。


ええ、そうですよ。この美人さんはゲイです。


This beautiful guy is Gay !


ひゅんと股間が寒くなったであろう彼らは、更に体を固くし、私に向けた視線を離すことは出来なかった。



「よし。じゃあ、明日は顔だすから、それまでにこの事務所、なんとかしておいてね。


 僕こんな空間耐えられないから。」


「はい。ワカ様。任せてくださいな。」



そう言って、僕らは帰途についた。


まだお昼前。


ルールーが来るのは11時を回った頃だから、余裕だね。


色々母さまにお願いと、報告しなきゃいけないことが出来たから、


レポート作らなきゃな。



そんなことを考えながら、マティの顕現化を解きつつ、一人で家に向かった。








はずだったのに。





なんで僕は麻袋の中にいるのでしょうか。





ここまで読んで頂きましてありがとうございます。


無双かとおもいきや、無双するほどのことでもなかったです。


そして、禁止されたはずなのに、もう召喚しちゃってます。


守れない約束はしないほうがいいと思います。



痛い目にあいますからね。

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