プロローグ - 新宿の夜 -
初投稿になります。
ご指摘箇所ございましたら、何でも教えて下さい!
「お客様、そろそろお時間となりますが、ご延長の方は如何がされますか?」
「あ、いえ、結構です。お会計おねがいしますね。」
「えー、もう帰っちゃうんですかぁ? もうワンセットいいじゃないですかぁ~、、」
「ごめんね、明日早いからそろそろ帰らないと。」
「そうなんですねぇ。。じゃぁまたヒナに会いに来てくださいね♡」
「そうだね。また今度ね。それじゃあ、お願いできますか?」
「畏まりました。ありがとうございます。」
豪奢な調度品と見える店内は、やや薄暗く、煩くない程度に抑えられた音楽が響く。
それなりに座り心地のいいスツールに趣味の良いローテーブルがおいてあり、
隣の席との間隔も狭くなく、隣の話し声でこちらの会話が聞こえないということもない。
用意されている酒も種類こそ多くはないが、抑えどころを抑えていて妥協点であろう。
キャストの質でいうと、開店から3ヶ月たった今でも、
美人系、かわいい系、キレイ系と人気3系統と、お色気担当や笑い担当などキャラ立ちしている子が多く、
社員による、よく出来た教育と褒められる程であろう……
等とざっと店舗評価をしていると、
先程の黒服さんが帰ってきて、伝票を渡してくる。
うん、ちゃんと腰を曲げて両手で差し出してくるところも評価対象だ。
「えーと、2セットで、ドリンク2杯出して、指名が1セット分、、、TAXが20%だから、、、」
よし、計算も間違ってない。
「じゃあ、これで。」
そっと現金を釣り銭の無いように挟み、そのまま席を立つ。
「お客様、お忘れ物はございませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
おお、これは素晴らしい。小さな気遣いだけれども、酔っぱらいは総じて忘れ物が多い生き物だ。
「お客様おかえりです。」
「「「ありがとうございました。」」」
「またきてねぇ~」
しっかりとした玄関前までの見送りを受け、外に出る。
時間はまだ22:30。さあもう1軒となるべく時間だろうが、そうもいかない。
徐ろに内ポケットから旧世代のパカパカケータイを取り出し、
登録してある番号にダイアルする。
「この時間、、まだ会議中かな?」
少し長くコール音が続く。
彼との決まりの中で、10回鳴らしても出なければ切ることになっているが、既に8回目。
またかけ直すかと、逡巡を始めた時に、
「おう、ワカ。終わったか?」
野太い声で電話の向こうから声がした。
「はい、おやっさん。いい店でしたので、次は一緒に行きましょうよ。」
俺は出た店から離れるようにネオン街を駅の方面とは逆に向かう。
「はっは、おめえにそう言わせるってことはそこそこの店ってことだな。面白い。
ケツ持ちの吉野組にはそう言っとくぜ。
それでよう、ワk「おやっさん、緑ビルの裏路地に頼む」おお?どうし……」
ツーツーツー
本来ならばそんな不敬なことはしない。
おやっさんにはだいぶお世話になったのだ。感謝してもしきれない。
ただ、この状況は些かよろしくない。
「おう、兄ちゃん、さっきHeartに居たよな?」
「ちーと聞きたいことがあるねん、ご同行いただいでもよろしいか?」
2人組の眉目厳しいお兄様たちにいつの間にやら、進行方向を塞がれておりました。
ほんとーにありがとうございます。
「ええ、楽しく遊ばせてもらいましたけど、何か私問題あることをしてしまいましたか?」
とりあえず情報収集だ。こいつらはどこの「組」の奴らだ?何が目的だ?
「ええんや兄ちゃん。とりあえず一緒にいこか?な?」
まずい。即連行パターン。何か地雷を踏んだらしい。
逃走本能からか、チラと後ろを振り返るも、同じようにニヤけた厳しいお兄さまが一人。。
一般人相手に3人編成って、これはまた大事だな。
とか何とか妙に達観したことを考えていると、
「おう、兄ちゃん、黙ってへんでさっさと行くで。」
さっきから妙な関西弁を喋っている一番下っ端臭いお兄さんが俺の腕を掴みに来る。
「そう簡単に、行きますかいっての」
ひょいっとその腕を躱し、バック走一番。
後ろのお兄さんが呆けている隙に、その先の小路に入る。
この先を右に曲がって、神社の裏手に出て、大通りに抜けて、人混みに紛れてしまえば俺の勝ちだ。
小路の先を曲がり、馴染みのおでんやのいい匂いがが鼻に香る。
寒くなってきたこの時期には恨めしい匂いの誘いだ。
っと、その隣に新しく出来たのがムショ上がりのお兄さんがついこの間始めた洋食屋。
おっかない顔面にも関わらず、作るオムライスは繊細で、またこれも旨い。
神社の裏に出る角にはこれまた昔懐かしい立ち食い中華そば屋がある。
こんなに急いでなければ間違いなくちょっと小腹がすいた今の俺の胃袋にはベストマッチの店だ。
「ああ、この辺しばらく来れなくなっちゃうかなぁ」
おっかないお兄さま達から逃げているという状況にも関わらず、
彼の頭の中は美味しい食べ物の事でいっぱいだ。
それもそのはず、彼の走っているスピードがそこそこ早い。いや、結構早いのだ。
インターハイとか出たらきっといい成績を残せちゃうんじゃないかってくらい、早いのだ。
スーツと革靴のくせに。
それとまた、彼にとってこの新宿という街は庭だ。
高校生の時にこの辺りに引っ越してきてから、10数年間、昼も夜も遊んでいたのはこの街だ。
下手な組モノよりも、確実に熟知しているし、体が理解している。
「ここまでくれば、あとは……」
そんなフラグなセリフを吐いた神社の境内の裏手。
念のためのっそり表を伺うも、人影は、、ナシ。
よし。
茂みから抜け出し、月明かりが照らす参道に出た瞬間、
ズダーン
「え?」
何が起こったかわからなかった。
ただ、お腹が熱い。
お腹?いや、これはもっと上か?
あ、これ心臓や。
なんで関西弁なんやねーん
意識が徐々に遠のいていく。
--『魂魄吸引』
はじめまして、
タコさんです。
初めて小説を書いてみました。
異世界と付いているのにまだ居世界に着いていなくてすみません。
今後も頑張りますです!