4話 どこに居ても
「もう、やめて――」
不意に出たその一言で目覚める事が出来た。
また殺された。なんなんだ。一体全体。これはどういうことなんだ。
夢なのか現実なのか全くわからない。今の今まで俺はあの茶色の化け物に殺されていた。刃物で滅多刺しにされ、拳で殴られていたのだ。その感触だってある。その時の感情も残っている。それは夢だから? それとも現実だから?
夢だ。
夢に決まっている。
なぜなら俺は生きているからだ。
俺は殺されていない。生きている。それが最大の証明だ。生きているから、殺されてもいないし、死んでもいない。すべて俺の脳みそが作り出した幻想だ。痛みと感触はリアリティを出すためのスパイスだ。
それにしてもリアルな夢だった。
「ははっ……」
乾いた笑いだ。どうした。嬉しいだろ。生きてるんだから。俺は生きている。あの化け物に殺されていない。生きているんだ。いいじゃないか。それで。なのに。それなのに。なんでこんなに怖いんだ。
ベッドの上で縮こまって体をぎゅっと抱きしめる。寒い。体から血が抜けて、どんどん動かなくなっていく感覚が怖い。刃物が体を犯していく痛みが怖い。頭蓋が拳で破壊される衝撃が怖い。
怖い。怖い怖い怖い。
生きてるなんてそんなのどうでもいいんだ。
俺は殺してくれと思ってしまった。この苦しみから逃げれるなら死にたい。そう思ってしまったんだ。一瞬でも生から手を離したと思うと、俺の命がどうにも軽く感じられた。こんなに簡単に手放してしまう命なのか。そんなに小さいものなのか。
俺は今後くるしい事があると、構わず命を捨ててしまうほど愚かな人間だったのか。何故、夢の中でも抵抗しようとしなかったのか。
やれよ。もっとしがみ付けよ。たった一回の人生だろ。負けると分かっていても戦えよ。もっと泥臭く生きれないのかよ。ダセェ。頑張らないとかそんなんじゃなく、格好悪い。
「簡単に言ってくれるよ。そんな事できると思ってるのかよ」
あの化け物を簡単に言うと倒せってことだろ。可能なのかよ。
――武器も無しに。
ああ。無理無理。不可能。素手で殺せるなんて思わない方が良い。ずる賢く、狡猾にやらないとダメだ。
「何考えてるんだろ。夢なのにさ」
時計を見ればまだ二時だ。寝てから全然経過していない。
確かに怖い夢だった。でもそれだけだ。実害はほとんどない。
ちょっと怖かったけど、生きているなら、収支はゼロだ。それでいい。何でもいいから生きることが大事だ。
「寝よう」
ひと眠りすれば楽になる。この暗澹たる気持ちも霧散して、朝には気分よく起きれるだろう。
目を閉じるとすぐに眠気はやってきた。流石に二時は眠いって。
――ジリリリリリ。
耳に飛び込んできたのは、耳元に置いてある目覚まし時計の音だ。
早っ。
もう六時半かよ。さっき二時だったんですけど。
時計を止めて、二度寝をする。それが俺流。
もう一度目を閉じる。――ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。
タオルケットを撥ね飛ばして、勢いよく飛び起きた。あいつ。アイツの声が……!
「な、なーんてね……」
いる訳ねーっつーの。
部屋を見渡してもあるのはいつもの俺の部屋。変わらない俺の部屋だ。
「クソッ……。ケチがついた」
タオルケットを被り直して、もう一回目を閉じた。
ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。
うっさい。うっさいって。うるせーんだよ。何回笑ってるんだよ。頭の中で何度でも殺される時に笑っていたあの化け物の声が甦る。笑うたびに、刺され、殴られ、殺された。一発攻撃されるたびに、俺の体がびくんっと跳ねる。痛みが全身を貫いて、早く死にたいと懇願する。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。やめろ。うるさい。寝れないじゃないか。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。やめてよ。耳を覆った。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。お願いします。口を閉じて。もうこれ以上嗤わないで。ブッヒョッヒョッヒョッヒョ。ああ。ああ。あああ。
俺は、殺された。
後悔に暮れる間もなく、殺された。
まりの事も思わず、ただ殺してくれと願った。痛い。だから殺してくれと。
まり。まり。まり。俺を助けてくれ。なんでこんな感覚を味合わないといけないんだ。キツイ。心が引き裂かれそうだ。
言ってやろう。
「俺は何度も殺されている……?」
夢の中で? それとも現実で? 判断が付かない。俺は知っている。
三十分後、お袋が俺を『梓! 早く下りてきなさい!』と呼ぶ。これはいい。
しかし問題は後だ。明日の天気を見て、親父が『明日は雨みたいだな』と言うだろう。そして妹が『えぇー、面倒』と返答する。
その後、俺のトーストの食べ方を見て、妹が『……兄貴さ。それやめてって言ってるじゃん。私へのあてつけ? ダイエットしてんのに、そんなに糖分多いもの目の前で食べないでよ』と言うに違いない。
テレビでは○○議員の政治資金問題を繰り返し報道しているだろう。
それから流れる様に時間は過ぎ去り、まりと合流する。
特に思いつく事はないが、宿題の事を聞かれるだろう。
聞き覚えのある会話を何度でも行い、学校へと行く。
既視感のある景色を見ながら、教室へと至り、自分の席に着く。
教師が来て何もないと伝え、教室を出ていく。
生徒たちは貴重な隙間時間を使い、友と語らう。
俺は二人に挨拶され、石井の方に行けばゲームの話をされる。他愛ない会話――やはり聞き覚えのある――を行い、数学の時間となる。
教師は数分遅れる。しかし別段何も言わず、授業が始まる。
俺は三十分後に猛烈な腹痛に襲われ、トイレに行かせてくれと言うだろう。
そして右のトイレも左のトイレに行っても、化け物に出会い、殺される。
これが今まで見た、夢の一連の大まかな流れだ。
判断を付けるしかない。これは夢? それとも現実?
この世界が夢か現実かなんて、だれが証明できるのだろう。
夢かもしれない。現実かもしれない。
それでも生きるのなら、最善を尽くすべきだ。
嫌な予感がする。だから未然に自分の身を守り、どうにかする。
それでいい。思い過ごしだったのなら、それはそれで別にいい。
第一声。
親父が呟くかもしれない『明日は雨みたいだな』で判断しよう。
それを言ったら、今日は学校を休む。
そう決めると気が抜けた。
ああ。これで安全だ。夢か現か分かる。分かるか? わかんないだろ。俺が夢を見ているか現実に存在しているかなんて、証明のしようがない。
アホらしいかも。だって良く分からない夢で、俺は学校を休もうとしているのだ。
ま、いっか。
一日くらいサボったって。
そうして惰眠を貪っていると、やはり「梓! 早く下りてきなさい!」というお袋の声が階下から聞こえた。
嫌な予感だ。これは悪い兆候だ。
一字一句違わず、俺の予想が当たっている。
俺は起き上がって、少しだけ待つ。
一分後に妹の部屋の扉が開く音がした。妹が階段を降り、一階へ。
「同じか」
まあここまでは別にどうと言う事はない。毎朝同じようなことは行われている。
俺は制服に一応着替え、一階に降りた。
リビングでは家族が全員そろい、それぞれ食事をしたり、その準備をしたりしている。
何食わぬ顔で席に着くと同時に、親父の口が開くのがスローモーションで見えた。
体が震えた。
「明日は雨みたいだな」
言ってしまうのか、その一言を。
なんだって言ってしまうんだ。その一言は流れる様に「えぇー、面倒」という妹の答えを引き出す。
同じだ。全く同じ。夢の中の会話を繰り返している。まるで機械仕掛けで動いているようだ。もはや肉親と思えない。プログラムされた機械同然に見え始める。
まだだ。
終わっていない。最後の関門だ。
この長い会話を言えるか? 妹よ。一字一句違わず、お前は俺に文句を言うのか? それなら、もう俺の決心は固い。
俺はトーストにジャムを塗った。これでもかと。いつも以上に塗った。誰が見ても塗り過ぎだと言う位塗った。ジャムがトーストからはみ出している。どうだ。これで、お前はどう言う? さあ。さあさあさあ。
妹がトーストを見た。次いで俺に向かって険しい顔を向けている。
「……兄貴さ。それやめてって言ってるじゃん。私へのあてつけ? ダイエットしてんのに、そんなに糖分多いもの目の前で食べないでよ」
愕然とした。言っちゃうんだ。その言葉。一字一句違わずに。そうなると、さ。だめじゃん。終わりじゃん。ほとんど確定してない?
「ちょ、どうしたの。顔真っ青なんだけど」
「いや……。なんでも、ない……」
「それはないでしょ。体調悪いなら休んだ方がよくない?」
奥の台所からお袋も来た。
「あら、本当に青いはね。どうしたの? 気分でも悪い?」
俺が違う反応をすると、やはり機械のように同じことは繰り返さない。目の前にいる人たちは、肉親で、生きた人間なのだと実感できた。
「……ちょっと、気分わるい、かも。今日は休む」
「そう……。まあ、お母さんは今日仕事だから面倒見れないけど、ちゃんと休むのよ?」
言われなくてもそうさせてもらう。
俺は一口だけパンを食べて、珈琲を飲んだ。苦みが眠気をブッ飛ばしたが、それで変わる顔色と気分じゃない。
席を立って、自室に戻った。
ベッドに倒れ込んで、スマホでまりに連絡を取った。
無料通話アプリで『今日休む』とだけ、連絡しておく。これで俺を待つ事も無いだろう。
眠ろうとしたらすぐに『大丈夫?』と返信が来た。『大丈夫。別に何ともない』『そう。なら安心』
ちょっとの連絡だ。簡素だ。だけど、既視感の無いこのやり取りに、心底安心した。ああ。これは現実なのだと。正夢ではない。俺は夢から解放され、自由になったのだと思った。
実際体調が悪い訳では無い。親父と妹が俺の夢と同じことをのたまうものだから、俺の未来を予想してしまってちょっと青ざめてしまっただけだ。
「だけってこともないだろ。重症だ」
結局俺は夢の通りになるのが怖くて、学校を休んだのだ。青ざめたというのも一種の防衛本能に近い。命の危機かもしれないと思って、体が勝手に青ざめたのだろう。
パソコンを取り出し、起動させる。
今日は暇になってしまった。特にする事も無い。親がいる前で堂々としているのも、病気の身だと思われている立場では少し困る。
親父も妹もすでに家を出て行ったようだ。
あとはお袋がパートに出ていくのを待とう。誰もいなくなったら、朝食を再度食べながらテレビでも見ていよう。
パソコンでいつも巡っているサイトに入り、情報を閲覧する。クスッと笑ったり、新しいゲームの情報などを手に入れる。
そうしてグダグダと時間を潰していると、お袋も家から出て行った。「ゆっくり寝てるのよー!」
はいはい。別に眠い訳でも何でもないんだって。
お袋が出て行ってたっぷり一分は待った。戻ってこない事を確認して、自分の部屋を出た。
一階に降り、リビングへ。
適当に菓子パンを選び、コーヒーを淹れて、ソファーに埋もれた。
「はぁぁ。今日どうすっかな……」
意味のない休暇になってしまった。
夢が怖いからと言って休む必要性などなかったようにも思える。学校に行ったところで、親しい奴もいないし、楽しい事も無いからどっちでもいいけど。
テレビを付けて情報番組を垂れ流す。
やはり今日一番のニュースは○○議員の不法献金問題のようだ。連続してずっとその情報を伝えている。俺が懇意にしているネットのサイトでも、その話題が上がっていた。
日常であまり関わりのない事だが、こうやって取り上げられているという事は、大変なことなのだろう。
「大臣になってまでそんなチャチな金が欲しいのかね」
大臣なんてこの国のトップだ。一番は総理とか天皇とかだろうけど、それでも絶大な権力があるだろう。それでもなお、はした金のためにその地位を失うのだ。勿体ない事をする。俺ならその立場に固執するために、変なことはしない。目立ちもせず、かといって何もしないと目を付けられるので、程々に仕事をするだろう。
自分でも嫌になるほど、小さな人間だと思う。
ふと、テレビに映る時間が目に入った。
九時十五分。
学校の授業が始まってから、三十分が経過している。
夢の通りなら、この辺りで腹痛が起きているはずだが、そんな前兆すらない。快調そのものだ。やはり、夢は夢だ。困ったものだ。これではやはり学校はサボった事になって――。
テレビの画面が突然切り替わった。
「臨時ニュースです。都内で殺人事件が同時多発的に発生しているとの情報が入りました。いや、また情報が……。全国……!? し、失礼しました。訂正します。都内だけでなく全国同時多発的に殺人事件が発生しているとの情報が入りました。テレビをご覧の皆さまは至急戸締りをして、絶対に外に出ないでください」
テレビのアナウンサーは必死にそのことを伝えてくる。重要な情報が無い。犯人は誰だ? いや、そうじゃない。同時多発的なら犯人も糞も無い。犯人も複数いる。実行者は全国に散らばって、それぞれ殺人をしている?
「なんだそりゃ――!?」
バリガシャーンみたいな音がして、俺は音のした方を見た。まるで、ガラスを思い切り割ったかのような音。
そいつは、また現れた。
「なんでだよ。もう……」
茶色の被毛。下顎には二本の牙が天を突くようにそびえている。筋骨隆々で日本人離れしたその体格。全身筋肉におおわれており、ほぼ裸。手には錆びた茶色の刃物もっている。
そのいつもの夢で見る化け物は何気なくガラスを粉砕して、家の中に侵入してきた。
「じ、情報が入りました! 続報ですっ! 殺人を行っているのは、人間ではありません。人型の――なんていいましょうか、化け物。そう、化け物です。画像。画像ありますか? ある? 出してください。速く。一刻も早く。――見えますでしょうか? 特徴的なのは茶色の毛と二本の牙。まるで猪です。そう猪の化け物。皆さん。気を付け――きゃあああああ。な、なんでその化け物がそこに!? だ、誰か、警察を――」
そこで番組は途絶えた。
俺はゆっくりその化け物を見た。
テレビに映っていた画像と同じだ。
俺が毎度毎度夢でうなされる原因を作る化け物だ。
猪野郎。そう名付けよう。簡単過ぎか。でもそれがいい。こいつに大層な名前なんていらない。猪野郎で十分だ。
猪野郎は家の中にさも同然のように入り込んできた。硝子を踏み砕き、俺を見据えながら一歩一歩距離を詰めてくる。
何をしても俺を殺したいようだ。
俺はすぐに立ち上がって逃げようとした。なんか昨日は倒せとかそんな事を思っていたようにも思えるけど、実際問題無理だろう。勝てない。
武器。
武器がいる。
何をするにも、こいつは俺を殺そうとする。
こいつは人間じゃない。殺したところで何の罪にもならない。
台所に行こうとしたところで、猪野郎の蹴りが俺の懐に直撃した。
「ごっほっ……!」
台所に行くどころか、壁に叩きつけられ、頭を強く打ってしまった。目の前が歪んで見えなくなっている。頭がボーッとする。くそ。どうなった。俺は倒れている? それともギリギリ座っている? どっちだ?
やばい。分からない。自分の事すら分からない。
猪野郎が来ている。威圧感が凄い。殺気が凄い。ビシバシ伝わってくる。俺を殺したいと心底願っているのが、ひしひしと感じる。
俺は両手で壁を支えにしながら立ち上がり、台所に何とか向かう。
一歩一歩、確かな足取りで。
しかし猪野郎がそれを簡単に許すわけもない。
猪野郎は俺の後頭部を思い切り、錆びた刃物で叩きつけた。ガゴーンと良い音がした。衝撃が後頭部から全身を貫いて、びくびくっと体が勝手に震えて、台所のシンクに上半身から思い切り突っ込んだ。
ドンガラガシャーンと洗い物を吹っ飛ばした。皿が何枚も床に落ちて割れた。破片が制服のズボンに当たった。色々な物が落ちた。コップが落ちた。まな板が落ちた。箸が落ちた。
――包丁が落ちた。
それが目に入った。
見えた瞬間、何もかも吹っ飛んだ。痛みも忘れて、それを掴んで、猪野郎の懐に突っ込んだ。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
腰だめに包丁を構えて、そのまま猪野郎の胸のど真ん中に包丁を突き刺した。猪野郎の全身がぶるぶるっと震えた。「ブガァァァァ……」と弱々しい声になっていく。
俺は包丁を捻じって、半分引き抜いて、もう一回思い切り刺す。刺す。刺す。
「ずぁぁつ! どらぁっ! どぐらぁぁぁああ!!」
猪野郎が倒れた。俺は覆いかぶさる様にして、乗っかった。包丁をまだ刺す。執拗に刺す。これでもかと刺す。猪野郎の動きがどんどん悪くなる。死んで行っている。もうこいつは瀕死だ。
「ごぁぁぁっ! 死ねよおおおぉおお!!」
胸を指すのをやめて、喉に包丁を差した。グチャグチャに搔き回し、器官を粉微塵にするまで徹底的に刺し貫く。喉を刺す。包丁で刺す。死ぬまで刺す。
「俺をっ! 何度もっ! 殺しやがって――!?」
がくんっと体が勝手に傾いた。
途端に体中に力が入らなくなっている。いや、またかよ。
腹だ。
腹に錆びた刃物が刺さっている。
「ブッヒョッヒョッヒョッヒョ………………」
弱々しい笑い声で、猪野郎が笑った。
「あがぁっ……。クソッ……。しまったぁ……」
こんな風にへまをするなんて。反撃されるとは、思わなかった。いや、思いたくなかったのだ。死んでくれという希望的観測を押し付けていた。
「あぁぁああ……」
死んでいく。何かが抜けていく。血だ。それもあるが、生命力がどんどん抜けていく。
猪野郎はとっくに死んだ。最後の力を使って俺を攻撃したのか。
窮鼠猫を噛む。鼬の最後っ屁。
やられた。追い込み過ぎたのだ。
やるなら一発で仕留めるべきだったのだ。
俺は死んだ猪野郎に折り重なる様にして、倒れている。
動けない。
どんどん腹から血が流れていく。痛みもすごい。
眠い。
眠るよ。俺。
まり。
会えなくて、ごめん。