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しきたり×雪のお姫様は前門の虎、肛門は狼ファック・・・いやぁーっ

今、世に名高き伝統芸能、土下座外交の真っ最中である……

畳の上にピッシャリと折りたたみそろえられた両足、ピンと伸びた背筋、深ぶかしく頭をさげる動作、まさに三位一体が織りなす国宝級のハーモニー、そんな歩を仁王立ちしてやんごとなき女王様のように見下す雪野……塵芥な気分です。

「私に対してのセクハラの理由がおおよそ、わかりました。玄関に九梶の眷属が使う、転移の法の痕跡が見えます。だからと言って……うほん……は、裸で抱き合っていいとは……」

チラリっと視線をあげると蒸気を吹き出すぐらい真っ赤に染まった相好……やはり、雪娘は体温が低い分、沸点が低いのだろうか。

いかんいかん、俺という奴は!パジャマまでお借りしているのに……不埒な事を考えてはいかん。

補足だが、俺が気付いた時は薄ピンクのヒラヒラしたネグリジェぽいパジャマを雪野により着せ替え人形よろしくっと言う風に着せていただいていた。

「ごめんなさい。素直に反省します」

人間、素直が一番……深ぶか頭を下げていた身体をあげて、雪野と向き合う。

屈託のない笑みを浮かべて雪野を見つめる。

ぽぉぉぉ!!

破顔した歩の相好……その超絶クラスの破壊力は雪野の心をぶち砕くほどのテンプーション!!

「うほん、本当に反省をしているのですね」

半眼冷めた視線をぶつけられると思いきや――物凄く真剣な眼差し――形の良い眉をきりっと寄せて俺は誠心誠意、本心で雪野の問いかけに大きく頷く。

あれっ?何故か軽く目を伏せて『おほん』とわざとらしく空咳を一つ、雪野がパチパチと目を瞬かす――どうしたのですが?急な変貌ぶりは♪

「では、何故、セクハラを遥かに超えた、ド級の強姦魔のようにハレンチすぎる姿で襲うように私の唇を奪ったのですか?キスをしたのですか?ちゃんと、……そのぉぉ、男として責任をとろうとおおもいですか?」

胸の前で、手を絡ませモジモジしながら雪野はチラリっとこちらを見てくる。


――せ、責任っていったい――


記憶を司る脳内ライブラリーの小人職員達が雪野との出来事を洗いざらい調べたおすが、犯罪者のように襲いかかった記憶など全く出てこない。

「私もと・て・も!不本意ですが……我がクリエティアでは皇女が唇を許す相手は、添い遂げる相手でなければならないのです。私はクリエティア第三皇女としてしきたりに従うつもりです」

少し、眉を寄せながらもちゃぶ台の前で優雅に腰を落として、急須に茶葉をいれてポットからお湯を注ぐ。

その一つ一つの動作がとても品が良く生まれ持った気品がかもしだされている――そして何故か口元にうっすら微笑みを感じるのですが。

「歩さんも雑誌付録についている超合金合体ロボのように固まらずにリラックスしてください。今後についてゆっくり話し合いましょう」

手際良く、ゴリラの形をした湯のみを二つ取り出し、あったかいお茶を注ぐ、その湯気や香りはほっとした雰囲気を醸し出している。

ちゃぶ台に置かれた湯のみをとり、口元へ運ぶ……芳潤な玉露の風味が口内いっぱいに広がる。

「本題に入ります、貴方はいったい、誰が好きなのですか?今日子とは裸の付き合い、ミュウは最近、貴方に対して乙女チックによそよそしいですし、私は……」

話をきるように『おほん』と咽をならすと雪野は意を決したように強い眼光で歩を正眼する。

「私は貴方の事が好きなのか?どうなのか?……良く解りません……ただ、好意や親近感はとてもあります。入隊された当初はどうでもよかったのですが、今はもし、結婚するならと言われるのでしたらお受けしても良いです」

お茶をすすりながらしみじみと話す雪野……内容がオーバーキル並みですよ―。


――も、もしや、雪野にまで俺のテンプテーション(誘惑の能力)にかかってしまったのか!――


間違いなく雪野は良家のお嬢様といった感じた(実際はもっと凄いクリエティアの皇女様らしいが……)凄く気品がある雰囲気の雪野……何故か俺とおそろいの薄ピンクのネグリジェっぽいパジャマだと言うのに知的な雰囲気が色濃く感じさせられる、そして日頃は感じない妖艶さも今は滲ませている。

ふぁぁぁっと芳香するフレッシュなオレンジのパフィーム……連戦の理性、感覚がマヒして理性が踏ん張りきれないかもしれない……

「貴方はいったいどうしたいのですか?八方美人的解決方法はなしです。私はしきたりに基づいて対処しますので」

軽く腕を組んだ雪野――とてもエレガント。

凜としながらもゆっくりとして鷹揚のよい言葉……どうしたのですか!両肩からモクモクと出ている本気オーラ、威圧感をふんだんに感じますよー♪高貴なお生まれの雪野さんが本気で迫ってきている凄味をひしひしと感じます。

「えっと……もし、もしもですね、雪野さんと結婚しないときはしきたり的にはどうなるのですか?」

超絶にドキドキしている(生命の危機感を感じて)俺の渾身の問いかけに一瞬だけ氷点下を越えて異次元級の冷淡な視線を感じたが、くすりっ――雪野の口元に恐ろしくも不敵な笑みが浮かぶ。

「えっと、歩さん。想いの人がおられるのですか……」

軽く小首を傾げてオーロラが見えそうな冷めきった眼差し……背筋もぞっと凍ります――怖いです。

超低音ボイスゥゥゥ!!裏切ったら恨み節ですよみたいなお皿割っちゃったみたいな、怨恨がおきそうな恐い声――原始的な生命保存本能は時に理性を凌駕する!無意識に人類補完計画が如く、防衛本能が自己安全のために首を横にブルブルと振ってしまう、心……弱気……俺――命、大切。

「い、一応、きいてみたいなぁぁぁと思いまして」

ピクピクと頬が引きつり&上擦った声……緊張の為、筋肉が収縮して手にもっている湯のみがガタガタと小刻みに震えてしまっている、けっしてアルコール中毒症ではありません☠

「うほん、心の準備はよろしいですか?」

軽く髪をかきあげた雪野。物凄く真剣な顔で歩をじっと見つめる。

可愛さ偏差値一流大学クラスの力量がじっと見つめてくると心なしか照れてしまう。

「しきたりでは……皇女と偽りの誓いをたてし時は、その身を永久凍結させて、意識を残したままかき氷マシーンですりおろしてしまう……とても残忍で残酷な死刑がまっています♪にこっ☆」

ひぃぃぃぃぃぃ――ざ、残酷すぎるぅぅぅ、しかも最後のにこっ☆は何か確信犯的ではないかぁぁぁ!!!

「恥ずかしいですが、初夜に着てほしい下着があればリクエストしてくださいね、良く考慮いたしますので」

目線を下げてぽっと赤くなる雪野。

目線をさげてすっと青くなる歩。

「しきたりで結ばれなくなるような……そのぉ、回避的処置みたいなものはないのですか?」

勇気をだして聞いてみると、再び氷点下の視線が歩を貫く。

そんな事聞いて、もう、殺してしまいますよ!的に表情が険しくなる。

「一応……皇帝より認証された工程をふんで、納得のもとに皇女と戦い、その皇女が負けを認めれば、その類ではなくなります」

その言葉の節々に『何を聞いているの?浮気は即死刑ですよ!』と思われる成分がふんだんに含まれて冷厳でいらっとした雰囲気が充分に伝わりました……あれっパジャマのフリルの裾がカッタ―のように鋭く凍り始めているのですが……もしや、殺人……いや制裁の道具でもつくるのでは?

「雪野さん……恋愛とはやはり、お付き合いして愛を育んでいくものでは……」

「恋愛と結婚は違います……まして、私の婿になるお方は常に凛々しく、聡明でなければいけません……カンナギお兄様のように」

どうしたのだろう?一瞬、雪野の視線が記憶の彼方を見ているように遠くなる、何かを思い出したように、寂寥感を含んだ瞳が鮮明に表れる。

『はっ』と気がついて佇まいをなおして再び向き合う雪野。

ガタァァン――

玄関口の扉が勢いよくノックもなしに開く。

「キッチンの砂糖が品切れミュン。砂糖のとりすぎは糖尿病まっしぐらミュン!うさぎ1少し太ったミュン!だから今からケーキを焼く、私に隠し砂糖をよこすミュン」

悪態をつきながら元気よく入ってきたミュウ……その手には『彼氏のハートをゲットだぜ!ケーキの作り方入門書』と書かれた書籍をがっつりと持っている。


――?


『やっほい!』と元気はつらつの上に極上のパワフル全開で入ってきたミュウの動きが一瞬フリーズする。

ピコピコとアホ毛っぽいツインテールを揺らしているミュウがちゃぶ台ごしに向かい合う二人を見て驚愕する。

「似合い過ぎるくらい、お、おそろいミュン……うさぎはともかく……歩お兄ちゃん……凄い似合っているミュン!!可愛いミュン」

『やっほいっ!』とミュウはしなやかに飛びあがると☆ターゲット・オン☆うまく、戸惑いを見せる歩の胸元にギュと抱きつき満面の笑みで頬をすりよせる。

「すっごい、可愛いミュン!!お兄ちゃん今夜は一緒に寝ようミュン!!ああっっ、危ない近親相姦ミュン。いけない伝説は始まるミュン」

プシュ―と一人絶賛興奮中のミュウ……変な方向にフラグあがっていますよぉぉ。

「お兄ちゃん?」

『お兄ちゃん』の言葉に過敏に反応する雪野、問いただすような視線を歩にぶつける。

「えっと、ミュウとは、そ、そう、俺の義妹になったのだよな」

歩に飛びついて子猫のように甘えているミュウに微笑みながら言葉を促す。

どんっ!と両手でちゃぶ台を叩き、込み上げる程の想いを乗せてミュウが開口する。

「そうだミュン。至高な程に気高く、深淵よりも深く愛し合っているミュン。大入浴場での甘いひと時が忘れならないミュン。ああっ、至福の時間、裸で抱き合う美男美女……その後はエッチな方向をキープしながらご想像にお任せするミュン」

――こらぁぁぁ、何がエッチな方向だ!エロゲ―のテンプレじゃないのだぞ!

熱弁をふるうミュウの顔も真っ赤だが、俺を親の敵のように睨む雪野は違う意味合いで真っ赤になっている。

即座に動こうとした俺の行動を遮断するように足元からパジャマが凍りついている。

「えっと、歩さん、ご説明を受け賜わってよろしいでしょうか?」

とても慇懃だ……言葉を一歩まちがえれば化学反応が起きてしまいそうな……

「歩お兄ちゃん?どうしたのかミュン。顔色がお空のようにスカイブルーっぽい真っ青になっているミュン」


――ミュウ、そんなに颯爽とした爽やかな色ではありません……――


「ご説明を……」

厳かな雰囲気を含み、がぶり寄る雪野……鼻と鼻が当たっています。

「ミュュュュュン!近寄りすぎミュン!!離れるミュン、津輕海峡ぐらい一気に離れるミュン!!!」

割って入ろうとするミュウを意にかえさず、雪野はまったくぶれる事なく歩を凝視する。

「二人の世界をつくるなミュン、ハレンチミュン、フレンチの親戚ミュン!!甘ったるいミュン。そんな、歩お兄ちゃんはミディアム程度に焼いてやるミュン!!」

一歩下がったミュウのパシッと歩をロックオンする。瞳が血をほっするような深紅に染まっていく。

「瞳からレーザー!!」

輝く閃光……あれっ、今一瞬、天使の羽根が生えた琴音が沢山舞い降りてきたような……まるでフラ○ダースの犬のラストシーンみたいだぁぁ……そして、再び、遠い世界へ意識が遠のいていくのだった。


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