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助けてあげたんだからね(☆∀☆)

    ◆

静かな湖面は月の白銀を美しいまでに描写していた。

静かに広がる波紋……湖の畔の岩場にミュウの衣服と『訪問販売お断り』プリントされているウエストショルダーがポツリと無造作に転がっていた。

辺りを見回しても第二施設のメンバーに襲われた痕跡はない。仮に襲われてもミュウなら撃退しそうだが。

緊迫した空間、焦る俺の心を押さえながら必死に冷静になろうと辺り一面を見渡す。

何だか、湖面にプクプクと弱弱しい泡が湖中から上がっている。

俺は考えるよりも早く、ジャージを脱ぎ捨てて、一糸まとわぬ姿で湖に飛び込んだ。

ピンと冷え切った水……体温が奪われる……月の光だけで照らされている水中、透明度は高いものの瞳をしっかりと開けるとひりひりと目が痛い。小さく助けを呼ぶような感覚が研ぎ澄まされた感覚に捉えられる。まるで俺とは別人の感覚のような錯覚を受ける。

直感を信じて進む、そこには幾多の透明なピアノ線のような糸が幾重にも重なり合った中心にミュウが絡まって動けなくなっていた。

口から吐き出される空気の玉が徐々に小さくなり、顔色は真っ青な上に瞳の焦点が合わずにまどろみの世界に引き込まれている。

俺は糸からミュウを引き離そうとするが全く切れる所か動く事もない。

もがく力も残っていないのだろうミュウはただ茫然と焦点が合わない瞳で寂しそうに俺を見つめている。

――死んじゃだめだ!頑張れミュン!直ぐに助けるから

俺は必死に糸を引きちぎろうとするが、手が鋭い刃物で切られたように傷を負い、鮮血が水中を染める。

かっとミュウの瞳が少しだけ力強く意志をおびると、『必死に私を見捨てろ!』と最後の力を振り絞り俺に伝えようと青ざめた唇を動かす。

痛みを感じないようなそぶりを見せながら俺は必死に糸を切ろうとするが少しづつ酸素が不足していく。

意識が僅かだが朦朧としていく……何かが俺の中で語りかけてくる。

とても優しい……懐かしい声だ。

遠い、果てしなく遠い世界を見る様に俺の意識が遠のいていく。

ただ、何故かとても安堵感が漂っていた……。


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