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恐ろしき能力と愛するがゆえにの巻

こんばんわ、作品も佳境に入っております。

楽しんでいただきましたら嬉しいです。

     ◆

外国人観光客に大人気❤金閣寺を彷彿させる成り金御用達の輝くゴールド・地味だけどいぶしチックなシルバー、金銀の装飾がプトレマイオス朝のクレオパトラで有名な古代エジプトなみに煌びやかに荘厳な雰囲気を醸し出している。


とんでもなく広い……いや、サバンナのように広大なローカをぐりぐり眼鏡を頭に乗せた猫をチョコンと肩に乗せてミュウはシューマッハもビックリのフルスピードギア全開で気炎をあげながら駆け抜けていく。

ハイスペック機能搭載のそのスピードはボルトも真っ青であろう。


「うちのポロっちい宿舎とはえらい違いミュン、福の神様が五百人ぐらい住んでいそうミュン!お金は不公平に存在しているミュン、百円ショップが友達の私には理解できない贅沢ミュン」


ちらりっと荘厳な廊下を睥睨しながらも、芸術大好きっ子のミュウは言葉とは裏腹に感心していた。


金銀細工ばっちりの豪華絢爛な装飾に『ぱふぅぅ』と感嘆入り混じった吐息を漏らしながらミュウは肩にしがみつき乗っかるグルグルメガネ猫を見た。

こちらも眼鏡越しにうっとりと豪華絢爛な装飾を眺めている面持ちがうかがえる――良い物を理解するとは!うむ、三毛猫っぽい猫なのになかなかやるミュン――などとミュウが猫にも感心する。


突っ走るミュウの先が左右に分岐する。


ミュウの高速チックなおみ足が孤を描き突き当たりを左に曲がろうとした時、『ニャア!!』と猫が鳴く……。

急ブレーキをかけて、『くいっ』と立ち止まったミュウはグルグルメガネ猫を降ろして問いかける。


「うるさい猫ミュン!どっちがいいミュン?」と問いかけると、猫は右足にゴロゴロと懐いてくる。

「わかったミュン!」


グルグルメガネ猫が軽やかにミュウの右肩に飛び乗ると再びタ―ボエンジン全開的にミュウはいきなりのトップギアで右ローカを遠野のカマイタチのように鋭く走る。

距離にして五キロ、三十程度の重厚な扉を蹴り破りながら突っ走っていた時、突然、前置きもなくグルグル眼鏡猫がひょいっと肩から飛び降りる。


「ミュン!!」


突然のグルグルメガネ猫の飛び降りに面を食らったミュウも両脚を踏ん張って『ききぃぃぃっ』と慌てて、急ブレーキ!

行儀よく座るグルグルメガネ猫の真ん前の扉がとても気になるご様子。

そこは、特別に目をひく重厚かつ繊細なギリシャ彫刻を彷彿させる扉が、アンドロイドと猫一匹の前に場違いのようにそびえ立つ……高さにして五メートルはあるだろう。


アンドロイド&猫は気がついていた――扉の向こう側の次元が違い過ぎるプレッシャーを。


「足がすくんでも、這いつくばってでも行くミュン!私とお兄ちゃんの禁断の愛に国境も人種も機械もないミュン!四の五の考えないミュン、障害はぶち破るミュン!!唸れ!熱い想い!瞳からレーザー!」


そのキラキラした瞳にはいつも以上に力がこもる。深紅に染められた眼差しに超ド級のエネルギーが収縮していく。

シャキーンとチョキをした手を目元に構えた刹那!深紅に染まった瞳から神々しい七色に光彩する必殺レーザーが扉に襲いかかる。


ドカーン!


凄まじい風圧と破片をまき散らし、ミュウと猫の通り道が開かれた。


「うにゃ?この扉は見かけだおしミュン!脆い欠陥住宅ミュン!地震の時は怖いミュン――だけど、天上のベニヤ板とブレーカーがすぐに落ちる私の部屋よりは良い所ミュン(涙)」


――ミュウ……自分の言葉にそんなに凹むな――


部屋に踏みはいったミュウの瞳に映し出された――巨大なホールの中央にとても質素な古い木のベビーベッド……麻布が敷き詰められ、木製の簡素な椅子に座り、うっとりと陶酔するようにベビーベットを見つめるリリスがいた。


吹き飛んだ扉など意にかえさず、リリスはボ―っと微笑みながらベビーベットを眺めている。


「あの時の子供達ね……遊びに来たの……」


ツインテールを妖怪アンテナのようにピコピコと揺らしたミュウが一歩踏み出そうとした刹那、振り向くそぶりも見せずにそっと呟いた。


「ダイナマイト乳女!プリプリ乳を揺らしてお兄ちゃんを誘惑するなんて許さないミュン。リベンジミュン、肩のこらない貧乳の素晴らしさ、思い知らせてやるミュン!そのバスト、半分よこすミュン!少しだけ羨ましいミュン。私もプリプリになりたいミュン!はっ……今は先に素直にお兄ちゃんを返すミュン」


ぴしっ!とリリスに指をさしながら、せきをきったように支離滅裂ぎみに言い放つと、江戸っ子のように勢いよくたんかを押し通す。

ただ、言葉とは裏腹にその、圧倒的な圧力に仄かにその手はわななき震えている……止めようのない恐怖感を掘り起こすほど、振り向きもしないリリスから、絶望的なほどの力量の差がヒシヒシと伝わってくる。


「昔ね……太古の昔のお話」


誰に言うのでもなくリリスは虚空に向かい語り始める。


「天使に脅迫された事があるの……天使は天の御使いであって必ず、私達にとっての正義の味方じゃないの」


その言葉は何処か哀愁が漂っている。


「若かった私は一人目の旦那に酷い事されて、必死に逃げて紅海沿岸にたどり着いた。それは良い場所だったわ、そして、私は自分を見失い、沢山の男達と夜を共にしたの……。みんな、私に子供を孕ましては逃げて行った……」


時間を越えたような何か遠い目のリリスは更に淀みなく言葉を紡ぐ。


「だけど、沢山の子供は私の宝だった……そんな私を心配してくれたのはアスタルテって言うしっかり者の女の子だった、私の頬を引っ叩いて、『自分の身体を大切にしなさい』と言うのよ、私が人から心配されるなんて、可笑しくなって大笑いしたわ……涙が止まらないぐらい…」


瞳が潤んでいたリリスの頬にキラリと涙が流れる。


「流石の私も男を絶ったわ。しっかり者のアスタルテは私に最大限の協力をしてくれた。沢山の子供達のおしめを一緒に洗濯したり、果実をとりに行ったり、楽しい生活だった、そして、事件が起きたの。私の前に天使セノイ・センセノイ・セマンゲロフと言う当時の私にとっては、とても強大に感じた三人の天使が一人目の旦那の頼みで私を連れ戻しに来たの」


木製の簡素な椅子にどっぷりと背中をあずけて、微笑んでいるリリスからは全く戦う意志が見受けられない。


「私は必死に抵抗した……けど、当時の私は無力でとても神の意志の代行者である天使に対抗する手段はなかったの、私の目の前で子供達が殺され、連れさらわれた……その後、アスタルテは両手いっぱいにフルーツを抱えて私の家に来て惨状を見た。私のたった一人の親友……アスタルテは直ぐに武器を持ち、天使の後を追った」


少し、嗚咽混じっているリリスはミュウ達に振り向いた。


「その時、初めてアスタルテは本当の姿を見せた……『天の曙の明星』と謳われた、偉大な女神。そして、彼女は単身、七層からなる天界に乗り込んでいった、そして、満身創痍で私の元に一人のリリンを抱きかかえて戻ってきた。アスタルテの命と引き換えに。彼女は私に抱きかかえられながら息を引き取った」


リリスは静かに微笑んだ。


「当時の私は無力と無知……本当に生きる価値などなかった。私は過去に肉体の関係があったサタンの力を借りてアスタルテの魂をわが子リリンと融合させたの……そして、私も強大な力を手に入れた、ただ、リリンとアスタルテの融合には悠久の時間と地上と言う場所がどうしても必要だった……そして、やっと私に時がきた……リリンは私の子供であり、私のかけがえのない親友」


すっと立ち上がったリリスは「だから、貴方達は死になさい……私とリリンの邂逅を邪魔立てする者よ」と優しく言葉を紡ぐと次元を切り裂くほどの圧倒的な威圧感がミュウ達を襲う。


美しい髪が靡いた――リリスの柔らかな指先が一瞬キラリと光彩を放つ……

一瞬ミュウの顔色が青く染まる、そして表情が消える……グルグルメガネ猫をぎゅっと胸元に抱きかかえて大地を蹴り上げた引き締った脚がネコ科の動物のようにしなやかに飛ぶようなストライドでリリスの放った光との間合いをとる。


光彩放たれた光の先では、グゴゴゴゴォォォ――白璃石の床が粒子に咀嚼されたように砂煙をあげて残骸になっていく。


「…………す、凄いミュン、ドリフのコントより凄いミュン」


頬が引きつる、リリスを軸にして距離をたもち、グルリと回り込みながら七色のレーザーが深紅の瞳から放たれるが、背筋がぞっとするほどの威圧だけでレーザーまでかき消される。

社会的にも現世的にも魂ごと、抹殺されそうな眼光にミュウの思考は逡巡している。


思わず言葉が零れる……下唇を噛みながら苦々しそうに吐き出す。


「この、ひねくれ者ぉぉぉ、いつまでらくしているのかミュン!早く、戦うミュン、馬車馬の如く働くミュン!一人でダメなら数で勝負ミュン」


太陽に向かって水鉄砲討って水浸しになる気分……悔しそうにミュウは欠伸する猫を睨みつける。

リリスの純白のたおやかな指先が幾度も輝く度に魔界の業火や黒き雷光が召喚されミュウに襲いかかる。


「馬鹿ミュン、こんなの避けることなんて、ケーキ焼くより簡単ミュン、お兄ちゃん、助けたら責任とってもらうミュン」


デガラビアを連想させる業火が幾重に、跳ねるように肢体を弾ませるミュウ、煤こけた壁面を蹴り上げて横跳び……仕組まれたように床から突然の業火が頭を抱え込んだミュウを包みこむ。

その、暑さは温熱シップを全身に張られてグルグル巻きにされて刻み込まれて鳥の餌になったほどの衝撃がミュウの痛覚を刺激する。


「あぁぁぁぁつっっっっいぃぃぃぃぃミュュュュュュュン」

疑わしげな眼差し、リリスの妖艶な眼差しから放たれる、その表情には怒気を含んだ端正で透き通る美しさが宿り悩ましい。

艶やかな唇から『九梶……』と言葉が零れる。

きめ細やかな前髪をすっとかきあげて、見下すように顔を少し上げてどす黒い魔界の業火を睨みつけた。


「私がカツラだったら髪の毛がキャンプファイヤー並みに燃え上がっていたミュン!未来の髪の毛をなめるなミュン!この、お詫びにお前、三日三晩、私におやつ渡すミュン、真打ち最後に登場なんか言ったら浣腸しながら百回は下痢になってお尻バーニングしてトイレで死んでこいミュン」


ミュウの視線の先には、瞳は艶やかで劣情感を抱かせる魅惑の瞳、すらりと伸びた手は人の魂に呼び掛ける様な魅惑の雰囲気を醸し出していた。

しなやかな肢体が優雅に宙を舞う、ホワンと優しく広がるパープルの髪が辛うじて彼女だと面影を残している。

ペロリと唇を舐めた美女、女性らしく引き締った脚から跳ね跳ぶようなストライプを刻み、刹那にリリスに迫る。


「…………!」


リリスの相好が初めて曇る――二人の間に一メートルも満たない距離でお互いの磁場を引き裂くほどの強大な力がぶつかり合い、波動が四方の壁を突き破る。


「ふふふ……さすがは九梶の縁者、」


すっとリリスの姿が美女の視界から消えると、天上から綿雪ほどの白き薄片が舞い散り、聳える闇空まで突き抜けた空洞から狙い澄ましたように漆黒の炎を身にまとった大蛇が牙をむき出し地面ごとそぎ取るように美女一瞬で呑みこんだ。


撒き上がる白き砂塵が渦を巻くように月の光を浴びプリズムのようにキラキラと大気に舞いあがる。

部屋を蹂躙する漆黒の炎の化身である大蛇のはらわたを内部から引き裂くようにプラチナの光彩が大蛇の下腹から溢れ出る、月の光を称えたような銀の大鎌が黒き炎を切り裂き、苦悶する黒炎の大蛇のはらわたを引き千切りだす。


「このはらわたは塩漬けにもできぬ、珍味には程遠い……」


黒く汚れた大蛇の血をすくい、たおやかな指でそっと魅惑の唇をなぞる、血に染まった唇はルージュの煌めきを錯覚させる。


「リリス、茶番はよろしいでしょう、私の旦那を素直にさしだしなさい、差し出せば貴方の事はお義母さんとよんでさしあげます」


含み笑いを浮かべるが瞳は真剣そのもの……


「ふん、私は反対ミュン、巨乳反対ミュン!いくらメロンおっぱい星人になってもお義姉ちゃんとは呼びたくないミュン」


灰塵と化した部屋で煤まみれのミュウは少し荒げた息とともに不機嫌そうに軽口で自己主張。


「ふふふ、私はミュウの減らず口は好きだよ、だから私のフィアンセを助け出す役だけは、譲ってあげるよ。早く行け」


パープルの髪を靡かせた美女、今日子は目線を正眼から微動だにせず、ミュウを促す。

私は足手まとい……ミュウは現状を理解していた。


「わかったミュン。壮絶パワー―アップした私でも乳の大きい奴には歯が立たないミュン。美味しい所だけ頂くミュン!お兄ちゃんが気を失っていたら婚約書類に無理矢理、ハンコを押させるミュン、今日子、恨みっこなしミュン」


踵を返すと瓦礫で埋め尽された部屋をミュウは全力で翔り始める。

溶けた扉を跳ね跳ぶと少し後ろを振り返る。

そこには空間が歪みはっきりとしない視界の中でリリスと今日子のお互いの武器が火花と紫電を散らしてせめぎ合う。

ミュウは後ろ髪惹かれる想いだったが、今できる事、それは一心に絨毯の敷き詰められた廊下を走り抜ける事だけだった。


いかがでしたか?

ホームシティも新作のたんぽぽ荘も感想・ご意見お待ちしております。

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