古えの神の力、邂逅と誓い・・・琴音・・・あいしてるの巻
皆さま、如何お過ごしですか?
さて、終盤を迎えましたこの作品ですがお楽しみいただけているでしょうか?
沢山の要素が絡んできていますが飽きずに読んでいただきましたら幸いです。
◆
「おいたん、わたし、こと、の、おとで、ことねぇっというのぉぉ☆」
それは、太陽もしり込みするほどの輝きだった。
にぱぁぁぁ!と迸るほどの暁を超えた煌々と眩しい微笑み……ずっと待っていた、過ぎ去った星霜――心の奥で日の出を待っていた、魂の記憶は無垢によみがえる。
琴音と初めてあったあの瞬間……
転生した魂を感じたあの瞬間。
心は荒波を越えた、……その奥にある迷いのない凛とした意志が瞳を熱くして……熱さから込み上げた想いは瞳から滂沱の渦となって流されていった。
『ごめん……守れなかった……』
運命の日……神の気まぐれがあるのであれば祝福に変わったのかも知れない……俺は寂しくて……ただがむしゃらに土を掘っていた。
衝動的行動に記憶にない……はげ……はげ雷帝……いやいや、かみなり様のように怖い義父やミミズクをみみずと言い間違えただけで引っ叩くDVな義母に引き取られて、俺は幸薄いマッチ売りの少女のような生活を送っていた。
補足だが、義母は女の子と思い勘違いして俺をもらったらしいので、俺の服はフェミニンチックな服しか着させてもらえなかった。
養子の俺はますおさんよりも反抗できる立場ではなく、また――捨てられる、雨に晒されて食べるものもなく、泥にまみれて生きてきた毎日……どれぐらいの月日をすごしたのかなぁ。
『ごめん……守れなかった……』
言葉だけが反芻している。
キミと……巡り合えた瞬間……輪廻の存在を凄く感じた。
俺は傍観者のように夢をみているようだった。
乾燥した砂ほこりが舞い上がり、略奪や強姦があちらこちらで行われている。
少年はしきたりを守った為に約束に間に合わなかった。
神が示しき、しきたりと約束……
服は引き裂かれ、銃で撃たれた太腿は生々しく大地に身体を預けている。
「ごめん……純潔、守れなかった……ごめんね……貴方と一緒にな……」
消え入りそうな声……俺は悔しくて……
銃声の響く荒野の街は人の欲望が渦巻き、正義など微塵もない世界が乱立していた。俺の胸に身体を預けた昔は天使であったブロンドの少女。
ポタリ、ポタリと俺の擦り切れた衣服に深紅の血がまだら模様を描いていく。
溢れだす血――透き通るほどの白い太腿に開いた弾穴……
銃で撃ち抜かれ、動けなくなった華奢な肢体……その魅惑の肢体は複数の荒くれ者に強姦されていた。
土色の顔、土汚れたブロンドの少女の瞳から頬に一筋の涙が通る。
それは安堵だったのか……力無く微笑み……動かないくちびるで何かを言った。
涙が止まらなくなった……冷たくなっていく体温、濁っていく瞳孔、助けてください、彼女を、お願いします、神様。
願いは願うものではなかったのかもしれない。
……少女の瞳の弱弱しい光彩は露と消えて、眠る様に深く眼差しを閉ざした。
もう、くちづけでは目覚める事のない最後の眠りについたのだ。
ガシャャャャャャャン――
何かが砕けた――俺の心で――目に見えない何かが。
その刹那……頭部に衝撃が走る――
ドフっ――脳漿や血飛沫が辺りに散乱する……流れ弾が俺の頭を打ち抜く。
普通の人間なら即死だろう……パッドエンディングだな。
そう、普通なら……
少女の背中と脚に両腕を入れて抱えあげた俺は天を見上げた。
其の瞳は、誰よりも透徹した瞳は空を超えて天を睨んでいた。
「魂は渡さない……しきたりが何だと言うのだ、私は……」
…………懐古にノスタルジアに俺に語る……断片的に残る記憶群……
「ことねぇ☆一人ぼっちなの」
人さし指をお口にくわえで身体を揺らしながら子リスのように可愛らしい仕草。
ああっっっ、変わらない顔立ち……
甘えるように上目使いで見上げてくる琴音の魂の色……俺は初めて神の慈悲を信じた。
俺はすっと琴音を手繰り寄せた。
ぐっと――あの時、抱きしめきれなかった分も強く抱きしめた。
「ずっと……悠久と感じる転生……やっと、巡り合えた」
「ううぅぅぅ、いたいよぉ」
精一杯ぱたぱたと腕を振り、ぷうぅっと膨れたほっぺが可愛い――「俺は歩……高坂歩、……琴音、俺と結婚してほしい」
無意識に言葉が零れる。
幼女の瞳に大きく涙が流れる……
「あれぇ、おめめからみずがでたぁぁ☆」
恥ずかしそうにそっと俺の胸元に顔をうずめた――今度は一緒になろうね――俺の思考にふっと響く声が木霊した。
…………コ……エル……
何か揺れる様な……引き戻される世界に気が付きゆっくりと瞼を開いた。
豪奢な天蓋付きベットに羽毛よりもふんわりとした布団の上で俺は大の字で寝転がっていた。
「招かざるネズミが来られたようです。こちらの時空移動を逆手に取って神聖なるリリス様の居城に侵入するとはファンタジスタで蒙昧無知な客人です」
その言葉は何処か冷めた口調だった。
備え付けられたランプの灯がアザエルの感情に呼応するように一瞬だけ炎が大きくなると、後ろで束ねた光沢のある紅桜の髪の美しさを幻想的にいっそう映えさせている。
右目が金色、左目がエメラルド色の美少年――アザエルが屈託のない笑みを浮かべて燕尾服の佇まいをなおして軽くお辞儀をする。
「俺、眠っていたのか……」
「はい、ユーノ様に深い眠りに落ちるように法をかけられました。もう、無
条件に襲いたくなるほど可愛らしい寝顔でした、ごちそうさまです」
俺の言葉に、微笑みをもらして、きょとんとした雰囲気を見せたアザエルだが、直ぐに佇みを直して、慇懃に答える――ってごちそうさまって何ですかぁ?
とっさにふあふあの布団で貞操を守る乙女のように身体を隠すと、何だか、エロゲ―のワンシーンにでそうな襲われた女の子な気分……☠
「リリン様はどうかおくつろぎください。こちらに、お飲み物と猿の脳みそ風プリンとゴリラの陰毛唐揚げをご用意いたしました」
机に並べられたゲテモノスイ―ツ❤――食えるかぁぁぁ!お飲み物はいったい何なのだ、ここだけ説明が無いだけに中身が気になります♪
変に葛藤している俺に一礼して、アザエルは扉に向かい歩きはじめる。
「家賃も支払わずに地球の上に仮住まいしている、侵入者どもを一掃してまいります」
アザエルの言葉に俺の意識が反応する。
「誰が侵入してきた?」と扉に歩くアザエルに問いかける、「ポンコツアンドロイドと愛玩きつねが一匹です」と抑揚のない声で簡素に答える。
アンドロイド……きつね……もしや、あいつ達か――脳裏に浮かぶ彼女達との想いで……心に熱いものが込み上げてくる。
……と言う事はマイ・スイート・ラブリーエンジェル❤琴音も来ている!と俺の脳内ラブ琴音小人サミットが満場一致で可決した。
俺は紅桜の髪がふわふわと揺れるアザエルの後ろ姿を凝視した。
「一掃ってお掃除するって事?殺すって事かな?」
アザエルは後ろ姿でもわかるほど無言でこくりと頷くと振り向き、怪訝な眼差しで俺を見る。
「リリン様が今、お立ちのこの場所はエデンの覇者であらせられるリリス様が住まう宮殿、不法侵入の輩は死と魂を贄によって初めて許されるのです」
黒魔術かい!ニヒルすぎる……やはり堕天使属性は伊達じゃないな。
「そいつら、リリスの息子である俺の仲間でもか……」
発する言葉に無意識に怒気が籠る。俺の質問にアザエルは軽く肩をすくめた。
「リリン様、それは尚更です、他世界の者は……人類とは我が主、リリス様にとって苦しみ続ける対象、リリス様名言集に救世主が現れる日まで人間を苦しめつづける、などと言われております。まぁ、私的には救世主が現れても苦しめ続けていただきたいのですが。リリン様、よろしければリリス様のベストセラー書籍をプレゼントいたしましょうか?」
脳内で何かの線がプツリとキレた、大切な仲間を抹殺しようとしている。
冷淡すぎる返答に俺は布団から起き上がり睥睨してぐっとアザエルと距離を縮める。
「そのように美しいお顔を近づけられては……」と鷹揚に微笑み、何故か頬を紅潮させながらアザエルは空ぼける。
今、こいつを止めなきゃ、だがどうやって止める?……悔しくてぐっと拳を握る……俺は自分の無力な非力さに非憤したくなる。
俺にはテンプレーション(誘惑)の力を持ち合わせただけのちっちゃな存在の人間……こんな、BL好きの超異次元チックな化け物達と渡り合う手段なんか持ち合わせていない。
懊悩と葛藤が心と脳と魂を包み込んで俺自身が混沌に陥りそうになる。
そんな、もがき苦しむ混沌の中におもわぬ僥倖……福音が鳴り響いた……それは何かのたがが外れたように意図して内部より……魂より発せられた。
『貴公が私を欲するなら』……暗欝な心の底辺からだろうか困惑した思考を突き抜けて魂に響く柔和な声音。
『私と共にあれ……』――誰だろう……いや、誰でもいい……大切な仲間達を……俺の最愛の人を……魂の欠片が俺と言う人格媒体を通じて俺に語りかけてくる――
俺は望んでしまった……この、全ての状況を打破できるのなら……
身体から蒸気が上がり、俺はその場にふさぎこんでしまう、身体が……いや、全神経が俺の中の何かに浸食されていく感覚が肌をなぞるようにはっきりと魂に伝わってくる。
その刹那……精神が引き裂かれるような錯覚、反応を共有するように小刻みに身体が震える――そして、胸が熱い……心臓の拍動が上がってくる、苦しいほど吐き気がする、両腕を掻きむしるように抱え込んだ俺はついに膝元からその場に崩れ落ちる。
俺の頬に床の感触があるが、その感触も徐々に薄れていく。
「やはり、リリン様はとても面妖であられますな……」
不敵な笑みを浮かべたアザエルはペロッと舌をだしていやらしく唇を舐めた。
「リリス様が出産された唯一の雄とは……そう言うことですか……」
ふわりっと右手を掲げると百戦の猛者であろう切っ先鋭い眼光がそのオッドアイに宿る。
冷めたようなにび色に輝く空間のうねりが俺とアザエルを取り囲み、周囲の空間を圧縮するように歪み、元の形を無くしていく……そう、二人だけの世界、亜空間フィールドが形成されていく。
「私とて、勝手は天界の精鋭軍であるグリゴリにて『神が如き強者』と崇められし者……リリン様は『天から堕ちし暁の力』と思っていましたが、まさか……だとは……魅了させられるはずです……見せていただきましょうか」
すぐそこにアザエルは居るはずなのに……言葉が上手く聞き取れない……意識が遠のいていくと言うより、揺れて、だぶつくと言う感じだ。そして、込み上げてくるあたたかく強大な……いや、とても凶悪で危険な何かが、身体中の血液を浸食してくる。
痛みも快楽もない、黒くも白くもない無が俺を支配していく。
完全に自由が奪われた……俺の意識は籠の中の鳥のように身動きがとれなくなっている。
無意識に二本の足でたちあがった、俺ではない俺が……凛子した姿が颯爽感に溢れ美しい。
「ふふふっ、私を侮るか……男の尻を追いかける弱き堕天使」俺の言葉……俺ではない俺の言葉が口元から零れると無意識に俺は破顔してしまう。
「ふふふっ……虜になるほど美しい、私の心をこれほどまで揺さぶる……レメクの娘、ナアマ以来ですよ。ほしいです、リリン様……貴方のお尻がとてもほしいです」
――欲しいのは俺のお尻かよぉぉぉ!――
青くほのめく紫電がアザエルを取り囲み背には扇のような翼が禍々しく、左手には灰色に鈍く輝く大きな剣が握られている。
「とても、ほしいです……リリン様……いや、アスタルテの転生よ」
クスっ……俺は笑っていた(囚われの俺は笑えないですぅぅ(涙)……人は極限の状態になると笑いがでると言うが……この度はその類ではなさそうだ。
俺は慧眼した瞳を浮かべ、軽くセーラー服をはたいて、ポンっと唇に曲げた人さし指を乗せた。
「今宵は楽しい夜になりそうです。リリス様のお尻は私が頂きます」
――アザエル、絶対に初心わすれてないですかぁぁ(驚)――
天を割るが如き紫電が俺の身体を貫こうと襲いかかってきた。
こんな、瞬間でも永遠に感じる、僅か、ほんの僅かだが……記憶がよみがえる……いや……もう一人の俺と共有すると言う感じだ……そして、思いだしたこと……が二つ……
私の魂の欠片は太古の昔にアスタルテと呼ばれていたこと。
夢に出てきた過去の……金髪の少女の名前を……神の命により破壊の天使として舞い降りた疫病をふりまく名もなき天使……コトネエル……そして、私の為に……。
読んでいただきありがとうございました。
まだまだ拙い文書ですが新作のたんぽぽ荘や僕は底にいる、えんま家の人々とともにご愛顧いただけましたら幸いです。
感想などもお待ちしております。
この作品にかぎらずご要望やこんなキャラクターを出して欲しいなどのご希望がありましたら、感想に書いていただけましたら嬉しいです。




