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強者の雄叫び、能力開放で・・・っていやーっ、味方まで殺す気なのですかーっ!の巻

          ◆

高濃縮された閃光が縦横無尽く空間を蹂躙して、堕天使に囲まれている今日子に襲いかかる……そして、避けきれなかった一本の光が矢の如く、ぐっさりと左腕を貫いた……


「あぅぅ、痛いですぅぅぅ、むにゆぅぅぅぅぅ」


小さな身体に衝撃と激痛が神経に雷を落とし思わず尻尾の毛が立つ。

吹き出る鮮血を今日子はぺろっと舌舐めするそして、人さし指でルージュのように唇に彩った。

前を見据えた表情を浮かべた今日子は右腕を突き出し、ぺろっと軽く血の色に染まった舌を出すと、ふあふあしている琴音お気に入りの尻尾が蛇を連想する型となり地獄を焼き尽くす程の業火を纏う。


ぐぉぉぉぉぉ――


猛々しく燃え上がる業火。

堕天使を呑みこんだ業火は全てが灰塵と化すまで消える事はない。

白雲の如く白く繊細な細腕にルビーのように澄んだ鮮血が滴りおちる、痛みで引きつった面持ち、右手で傷口を押さえ、今日子はきぃっと睨みをきかせながら後方に飛ぶ。

無限ループとも思える堕天使の猛攻は再び、今日子に牙をむける。

どす黒い霧を吐きだした堕天使が今日子に襲いかかるが、七色のレーザーが黒霧を貫き堕天使の腹部串刺しにする。


「血、痛そうミュン、無理をせずに今日子はいったん下がるってお兄ちゃんの事はきっぱり諦めるミュン」


からかうようににへっと微笑んだ――超絶孤軍奮闘しているミュウが今日子と堕天使の間に割って入る。

ミュウと堕天使を挟むローカには二人のド級の強さに屈してしまった、無数の肉片が埋め尽くすように転がっている。


「しんぱぁいは、むようですぅぅぅ、ミュウこそぉ、あきらめてどんぐりでもたべているほうがぁぁ、似あっていますよぉぉ」


お互いに毒を吐きあう二人、まだまだ大丈夫そうである。

尻尾で器用に全身を覆い、後ろからでもはっきり分かる、ミュウのアホ毛っぽいツインテールを見つめる

左腕から滴りおちる鮮血を今日子は再び、ペロリと舌で舐めとる、艶やかな唇は深紅のルージュを纏ったようにキラキラしている。

激しい動きから乱れたとは思えない華やかなパープルの髪を軽く掻き分け、グリグリメガネを掛け直す。


「あううぅ、わたしぃの能力をぉぉ解放しますぅぅ」


今日子はポケットから毒りんごではなく、深く淀む小さな箱を取り出した。

ぞくりっ――嫌な予感がミュウの背筋に氷点下の警告をはっする。


「おいでませぇぇぇ、わたしぃぃの本当の身体ぁぁぁ」


手のひらにチョコンとのった小箱がプルプル震えている。

禍々しい小さな箱が少しずれて開くと――モクモクと高濃縮された妖気が溢れだす。

それは水につけたドライアイスのように多大な妖気が津波とかして溢れだし廊下一帯を飲み込んだ。

高濃縮の妖気は廊下を浸食、妖気を浴びたダ天使は細胞が分裂するように無数の血飛沫を上げる、次々と堕天使を飲み込んでいく。


「けむりぃぃぃ!こっちにくるなミュン!!」


湯けむり殺人事件どころではない、殺人的要素をふんだんに含んだ、妖気の煙を目の当たりにして汗腺からシャワーのように冷や汗が吹き出す。

ミュウは血相を変えて命がけアスレチックジャンプのように屍を踏みながら全力で食堂付近まで撤退する。

白い妖気だった煙が化学反応を起こすように金色へと移り変わっていく収縮していく。

そして、朝霧が晴れるようにうっすらと視界が開けてくる。

右の足元がもぞもぞする――ミュウは視線を下げる。


「ミュン!!」

「にゃゃゃゃぁぁぁ」

「なんで、メガネをかけた猫がいるミュン」


驚き指数が急上昇した反応をミュウが見せると、足元に毛並みの良いメガネをかけた子猫がグルグルと甘い鳴き声を奏でて、すり寄ってくる。

ぽか~ん……ミュウは堕天使達の攻撃に構えながらも子猫に瞠目してしまった。


「お前、なかなか、毛並みがいいミュン……後で、猫まんまあげるミュン」


堕天使を鋭くにべつけながら軽口を叩くミュウを見上げる猫は『ニャー』と一声鳴くと、何処か不機嫌な表情を浮かべる。

凍てつく殺気……憎しみとも悔しさを併せ持った感情が渦巻く殺気を孕みミュウはローカに蠢く堕天使を一瞥する……大気すら凍りつかせそうな威圧が届いたのか、者どもであぇぇぇ状態であった堕天使の侵入が出玉終了よろしくとばかりに、ピタリっと止まり、目視では六体の堕天使がミュウと対峙している。

全てを見通すように澄んだミュウの瞳に映し出される空間に今日子の姿は写っていない。


グリグリメガネがトレードマークの今日子の姿は霧のように消えている……ただ、足元に眼鏡をかけた一匹の猫が不謹慎にも欠伸をしている……

ミュウと堕天使の間に凄まじい緊張感が走っている。

先に沈黙を破ったのは堕天使だった。

クイィィィン――と両手にサーベルのようなしなやかな青白く輝く触手を伸ばし、六体の堕天使が漆黒の翼と機械音を絡ませてミュウに飛びかかってくる。


「うぁぁぁ、一人タコ怪人ごっこかミュン、火星人ゴッコにしてもお前達、キモいミュン!」


青白く輝くサーベル状を紙一枚の距離でかわすと少し引いていた左手がスピードに乗り堕天使の胸元に突き刺さりゴポっと生温かい心臓を握りつぶす。

引き抜いた左手からどす黒い返り血が頬を色づかせると、構わずに正面に指を広げて両手を堕天使に突き出した。


「超パワーアップしたミュウ様のド級必殺技をおみまいしてあげるミュン、感謝するミュン」


突然、ローカ内の大気が圧縮していく。

風色が変わった……空気が一点に集まっていく感覚……その刹那……

ぐごごごごぉぉぉ――渦を巻くように堕天使達の周囲の空間に亀裂が入り籠の中の鳥のように逃げ場を無くす……それはもう……まな板の上の鯉状態である。

空間から空気が抜かれ、圧縮された空間の圧力に耐えられず全身からどす黒い血が噴きあがる。

そして、鋭利な刃物で引き裂かれたように堕天使の肉片がグシャっとローカ一面に散乱する。

距離をとっていた堕天使は辛うじて、惨事をのがれると狼狽して更に距離をとるように闇色の翼を広げて駆けだしていく。


「逃がさないミュン」


堕天使のボディースーツからどす黒い光が放たれる。


「ミュン!!!」

「にゃぁぁぁぁ」


どす黒い光の先に時空磁場が動いた……。

次の瞬間……ローカ静寂を取り戻していた。

ローカには誰が掃除するのか!と頭を悩ませるほどの朽ち果てた堕天使の屍だけが無残にさらされていた。


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