守れ童貞(°д°) 巨乳だけが全てじゃない☆ 魅力的な家族はあやしい家族の巻
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俺は超ビックな映画スターかアラブの石油王の養子でもならない限り一生縁のなさそうなローカを歩いている。
まずはその感触……足の裏の踏みごごちがシルクのようです❤。
その名も、ザッ・赤絨毯!!
それはハリウッドスターが歩きそうな厚さ二十センチはあるだろうペルシャ絨毯も真っ青のフカフカの赤絨毯……何だか、遊園地のふあふあドームを歩いているような感じだ。
時折、何処までも続いていそうな宮殿のローカを俺が迷わないように先導するユーノの心遣いだろうか、こちらを気にかけるようにチラリと睥睨して見る――うむ、琴音ほどではないが、かなり可愛い顔をしている。
先ほど、かなり恐ろしい説明を聞いた、ユーノと一緒に歩かないと何かしらの餌と間違えられるらしい。
まぁ、突っ込み所満載だが……餌って何なのだ!そこのキミ、読んでばかりいないで助けてください(涙)逃げたくても餌にはなりたくないです。
何度か振り向くユーノ……何処となしか、振り向く度にとげとげしさがなくなっているような雰囲気が見える。
突然、ユーノは豪奢な扉の前で足をとめた。
それは、金・銀・プラチナの装飾が豪奢すぎて眩しい扉――リアル中世の王室みたいではないか……村長の家の博物館辞典で見た事あるような代物だ。
『パンが無ければケーキをお食べ……』そんなセリフが似合いそうな厳かな雰囲気。
中央にひときわ、深紅に光彩を放つ宝石……見たこともない大きさのレッドルビーだ。
扉の中央の深紅のレッドルビーにユーノの手を触れると、豪奢な扉がモーゼの十戒の海の如く、ゴゴゴッと音をなして開いていく。
扉の奥に垣間見える空間……
夏場の日陰のように少しひんやりとした白亜が基調の広大な空間、まるで、深夜の学校の体育館みたいな物静けさと広さといったところかな。
ちらりっとこちらを見たユーノは端正な相貌をくいっと軽く横に振る、間違いなく『早く入れ!』と言いたそうに合図を俺に送っているみたい――言語を使えよっと突っ込みたいが俺の心も思考もそんな余裕はない。
えっ、余裕がない理由だって?そ、それは……
ここに来るまで脚が埋まりそうな、ふあふあの赤絨毯をユーノに従って四十分程度は歩き、その時、時折すれ違う生き物?(デッカイしゃれこうべもいていたなぁ)は牛の顔のでかい生き物やカラスの顔に馬の身体、まさしく、全てが悪魔全書などに出てくる悪魔にみえた……みんな着ぐるみかな……などと空ぼけたくなる(涙)
――そりゃ、一人で歩いたら餌におもわれるな❤
そんな化け物達がユーノの通る道をそそくさと開けて、恐れ戦くようにローカの端っこで傅いていく。
単純なヒエラルキー的に、このユーノは化け物より化け物……クイーン・オブ・ザ・化け物ってことになるのだろうか。
あれこれ思考を巡らしている俺をキッと睨みユーノは再び入る様に促す。
部屋の中に入った俺……そこは、体感温度が少し低く、スカートを靡かせるようにひんやりとした空気が火照っていた両足を冷やしてくれる。
何故か仄かに香るソースのこおばしい香り……はっ、ここで襲われたら……そんな事がついつい思考によぎる。
気分はまな板の上の鯉状態だな……手の込んだドッキリである事を願っている。
「えっと……」
扉が閉まり、スカイブルーの髪を靡かせて振り返ったユーノは先ほどまでの傲慢不遜な態度とはうってかわり、急に目を伏せて、胸元で指を絡ませながらモジモジし始める。
その姿は夏祭りの縁日で純真な少女が全身全霊で勇気を総動員させて、初恋&憧れの男性にタコ焼きをお口にほうり込まれて『美味しい?』と聞かれ、口をモゴモゴさせらながら恥ずかしがる乙女回路全開っといった所である。
金曜日が大好きなジェイソン君なみの傲慢不遜&残忍極まる態度とあまりのギャップに少し戸惑ってしまう――まぁ、人生いろいろ……気にしないでおこう。
プライベートスペース……自室と言うには広すぎるが(俺の部屋は六畳一間なので♪)、一面を見渡してみた――手前の天蓋付きのベットが端っこのほうにあり、その周りに沢山のぬいぐるみがある――使用しているのはその一部のみらしい、後の空間は寂しげなモノトーン的の空間である。
「えっと、変態って言ってごめんなさい、決して悪気があって言ったわけではないのです」
物凄く可愛らしい声……先ほどまでの切っ先鋭い鉾を連想させる声とは魔逆。
軽く頭をさげて『ふあぁ』とスカイブルーの髪に空気が含まれて軽やかに舞いながら、両手を俺の首のうしろに絡ませて、かなり豊満で柔らかな双丘が俺の胸に当たり形を変えて体温を伝えてくる。
「リリン義兄様……えっと、ずっと夢にまで見ていました。お義母様に一人だけいる息子様の存在。いつか、兄妹仲良く暮らせる日をずっと夢見ていました」
その言葉と行動に胸がキュッと胸が締め付けられそうになった刹那……柔らく薄ピンクの唇が俺の唇にかぶさった。
突然の行動(ハプニング?)に戸惑う俺。
ユーノの瞳はうっすら潤んでいる……暖かく優しさをたっぷり含んだ潤んだ瞳。
ぎこちないキスが、深く想いの籠った熱を柔らかなくちびるに乗せている。
星の瞬きほどの刹那な出来事……俺はドキドキする拍動をおさえる様に手を自分の胸元にそえる……感触と想いが熱を帯びて心にまで伝わってくる。
トロンとした瞳、うっとりとした面持ちのユーノ――唾液がルージュのように艶やかな輝きを放ち、上品で煌びやかな唇が離れると――歩の暖かさの感触が残る唇をユーノは震える人さし指を優しく当てて歩の唇を愛おしく撫ぜる。
逢って間もない義理の妹との濃厚過ぎる接吻の意味……脳内を駆け巡る本能が思考よりも早く悟ったのか――背中から、いや全身の汗腺が開いたように滲むように大量の汗がどっぷりと出てきた。
「もう、お義兄様。そんなにいっぱい汗をだして。まだ、私を抱いていませんのに。夜は長いですよ☆いっぱい子作りしましょうね」
――やっぱりビンゴ!や、やはり、これもテンプレーション(誘惑)の力なのですかぁぁぁ――
言葉が見当たらない……脳内の思考と冷静さは皆無に等しく、本能の訴えと心の動揺に反駁したい行動が本部長に睨まれた平社員の如く、微塵も出てこない。
そんな歩をはにかみながら『クスリっ』と楽しげにユーノは微笑む。
「えっと……リリン義兄様……大切な質問を一つしても良いですか?」
しおらしい声、顔を真っ赤にしながら、キラキラと輝く瞳、モジモジと身体をくねらせている。
心の機微を悟られないように深呼吸を置く俺、ホームスティでの理解不能な訓練の成果だろうか、自然に心を取り囲んでいた緊張した包囲網が瓦解して脳内小人達が限定的だが元気に動き出す
勇気を振り絞ったようにユーノが真っ赤になった顔をこちらに向けてせきをきったように問いかけてきた。
「プルプルな巨乳とやきそば、どちらが好きですか?いえ、どちらと結婚したいですか?」
――はいっ?――質問の意味がわからない……だが、ユーノは真剣な眼差しがこちらを見ている、そんなに見られてもなぁ。
何だか答えによっては命とりますよ!的な要素も含まれているような。
個人的にはどちらとも興味がないのだが――二問一択……無難なほうで。
俺は唇の端をニッコリと釣り上げて微笑みながら「やきそば」と答えてみた。
凄く顔が綻んだユーノ――何故か、一瞬、踏んではいけない地雷を踏んだ感覚が走る。
「リリン、何故、巨乳ではないのですか」
かなり鋭い棘を含んだ声が俺の脳に直接響く――次の瞬間、理想的な答えに微笑んでいたユーノの後方の空間がうがり金色の輝きを放ち、蠱惑する甘い芳香が部屋一体に波及すると、長い白銀の髪がふわりと靡き、妖艶に身体にフィットしたパープルのドレスに見とれてしまう美女が姿を現した。
「お義母さま」
声と同時にユーノは素早く踵を返す。
不意だったのだろう、両手で口元を押さえて、少し肩を震わせながら、驚きをみせるユーノ。
まるで、パリコレモデルのように人の心まで魅了するほど歩き方でリリスは茫然と見とれている歩の傍で立ち止まる――しなやかな手が無抵抗な歩の後頭部を包みこむと、ぐいっと招き入れるように至極の豊満な双丘に抱き挟み込む。
青春真っ盛りの女の子のようなプリンプリンな張りが歩の相貌にジャストフィト!
プリン♪と撓む胸が俺を至極の世界へ……
や、柔らかくあたたかい――マイ・ラブリー・エンジェル琴音、パパ、最初から謝っておきます、ごめんなさい♪――脳内理性の天使達が堕天していく。
へへんっと大人びた身体とは裏腹に、悪戯果汁百二十%の子供っぽい笑みを満面に浮かべているリリス。
「リリン、ほら、巨乳って良いものでしょ♪」
喜びに満ち溢れた愛情がてんこ盛りに彩られた声――そんな、柔和な母親の笑みを零すリリスに、ユーノは拗ねたようにぷいっとくちびるを尖らせて端正な相貌をそむけている。
何だか懐かしい……国産はちみつのように濃厚で心を引き寄せる甘い香り……微かに記憶群の奥底に大切にしまってある記憶が連動するように心からほっとする。
無意識だった、歩の腕がリリスの腰に回るとぎゅっと母親に甘えるようにリリスに抱きついてしまっている。
「うふっ、甘えん坊さん、嬉しいな。もっと、いっぱい甘えていいからね。私のリリン」
表情が緩み、歩の上目使いの瞳に写ったリリスの容貌は子供にできあいする母親のそれがそこにあった。
うっとりしていた、俺の髪を愛しむようにそっと撫ぜて、『リリン♪』と何度も優しく呟きながら、愛情たっぷりにぎゅっと俺を抱きしめてくれる。
「お義母様、リリン義兄様をお放しください、私もまだ、堪能しておりませんので……」
歩を抱きしめているリリスの右肘をぐいっと掴み、リリスの瞳を見つめて、凛とした面持ちでユーノはしっかりとリリス見つめる。
大人しく、やんわりとした口調とは裏腹に、鋭い眼差し、ビシッ!とリリスの瞳を射抜き、凛然たる態度でもう片方の手で俺左肩を掴み、抱きしめられた子リスを奪おうとするように俺を引き離そうと力がこもる。
「ユーノ、貴方は愛情のかぎりを尽くそうとしている義母たる私をさし置いて、我が子、リリンを愛でるつもりか……」
――そのお言葉ドスがきいていませんかぁぁ――
放たれた言葉には戦意と殺気が入り混じっていた……歩を愛しむように抱きしめるリリス、そんなリリスから危ない鋭利な言葉が凛然としたユーノに投げかけられる。
あれっ、何だか、抱きしめられる力が優しいお姉さまランクから屈強な戦士クラスまでレベルアップしているぞって、い、痛いです……息もできないです……(涙)
口が柔らかな至福の感触に押しつぶされている……喋ろうにも世界中のもてない男性が羨ましがるであろう、柔らかな双丘にうずまってしまっているので至福と地獄が入り混じって……ああっ、酸欠の為、俺の眼差しの向こうで、ひよこの着ぐるみを纏った琴音がおいでおいでと川の向こうで呼んでいるぅぅぅ♪
「リリンお義兄様はおっしゃいました、やきそばが好きだと!結婚したいと、そこまで言われてしまっては婚儀した事と同じです。お義母様、慎みをもってお放しください、でなければ」
キラリ☆とユーノの瞳の魔性が溢れ出るように光りをおびる。
ひんやりとしていた部屋の雰囲気が川の分岐にさしかかったように色濃く変わる。
刹那……時間と空間が凍りつく……濃度の濃い瘴気がユーノを中心に渦を巻くように充満する、そして二本指を立て、右手を肩の位置まで上げる。
それに合わさるようにユーノの足元からおぞましい程のソースの香りが香ばしい沢山の麺が無尽蔵に溢れ出てくる。
「うふふ、本気でやるつもりですか」
妖艶な微笑みを浮かべたリリス……そっと、いとおしむように俺の顔を覗き込んだ瞬間……リリスの顔色が青ざめるようにすっと血の気が引く。
「しっかりして、リリン!」
死んだ貝のように窒息死しそうになっていた俺を揺さぶり「誰にやられたの」と真剣な眼差しで俺に問いかけるが……お前だよっ!と突っ込む元気もない――もう、意識がお花畑の中へ……あれ、ひよこの着ぐるみを脱ぎ捨てて、スクール水着を着た琴音が百人ほど川の向こうでおいでと招いている――行かなきゃ☆
はぁぁぁ、俺、村に帰りたいなぁぁ、と心に反芻させながらゆっくりと深い眠りについた。
どうも、回りは喧騒としている雰囲気だが……。




