恋する妹とアンドロイドの決意
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果てしなく澄んでいた、純粋を含んだ瞳にはキラリ♪決然たる光が宿っていた。
『てやんでぃぃぃ!!』と勢いよくジャージの左腕をまくりあげて血管の位置を探すが見つからない。
気合い一閃!!ペシペシッ!と腕の内側を叩いてみたら血管が浮き上がってきた。
六畳一間のミュウの部屋……アホ毛っぽいツインテールがいつも以上に揺れ、オレンジっぽい前髪もはらり、ミュウの右手には眩いばかりのエメラルドの輝きを放つ液体が入った一本の注射が握られている。
「ふふふっ♪、これを打てば、絶対に強くなれるはずミュン」
にやりっとドヤ顔……そんな言葉と態度とは裏腹に注射器を持つ右手は小刻みに震えている。
「う・さ・ぎ・♪お願いがあるミュン!!もし、私が私でなくなったら……その時は私を殺してほしいミュン」
ピカッっと幼さが残る相貌で眩しい笑顔を作ると傍らにいる美少女にお願いする。
これから起こる出来事を自分自身に空ぼけて、自分らしく前向きに――アクティブに思考持っていくために、弱気を霞ませるように窓越しの煌びやかな陽光を浴びる。
粋な声と魔逆にしおらしさを含んだ言葉の決意――無性に不安感を掻きむしり――ミュウの心に抱く影よりも深く、一切の光を拒絶した闇のようなミュウの黒の瞳に映し出されている美少女はとても厳しく喘ぎを色濃くにじませている。
「うさぎ……」
軽く舌を出したミュウ。
――あっ、緊張している時に舌を出す癖治ってないミュン
苦笑いを浮かべたミュウは注射器に目をやりながら柔らかな唇が言葉を紡いだ。
プルプルと小刻みに両肩を震わせ、可愛さ偏差値極上の雪野が視線をそらす……その唇はくっとかみしめられている。
「うさぎ?私の話を心して聞いているのかミュン」
小首を傾げて何か促すようにミュウはまた、ペロっと舌を出す。
こくり……少し頷いた雪野うさぎ……隠す事のない雰囲気、悔しくて悔しくて、発露した心の雰囲気を滲ませて握りしめられたコブシは両手に仄かに震えている。
そして、諦観したように語りかける。
「一つだけ聞かせて」
いつもの雪野の声ではない憂いを含んだ声色……切なさが溢れている。
「その注射の液体は……何?」
慎重に冷静を装い、雪野はいつもの聡明で麗しい仕草で軽く髪をかきあげて。
ただ、ほどよい膨らみがある胸元に添えられている左手は自分自身の心音を確かめるように、落ち着かせるように軽く握られた手。
一つ深呼吸をした雪野の心配そうな眼差し――隠しきれない想いが見え隠れしている。
「…………」
笑顔だったミュウの顔色が梅雨時期の空のようにどんよりと曇り始める。
無言のミュウは金魚のように泳いだ視線をそらし、最新科学の優秀な頭脳をフル回転させるが、想いに押し殺されて言葉がでない。
「どうして……そこまでするの……その注射の液体はミュウが未来から持ってきた、人類が破滅した原因を作った液体……ミュウでなくなる、一歩間違えたら……一生廃人、いや、本当のスクラップとしてこれからの長い命の時間を生きて行かなくちゃいけなくなるのよ」
感情がはじけた……
無意識にとめどなく涙が零れる。――語尾が強くなり、興奮して紅潮した頬をつたう涙がキラキラと輝いて落ちていく。
「…………」
――ありがとう……うさぎ……
言葉にならない想いが……雪野うさぎの気持ちが……
――凄くうれしい――
「ふふっ!」
おちゃらけた幸せそうな笑みがミュウの表情に宿っていた――だから、大丈夫。
吹っ切れたミュウは心配いらないとばかりに軽く肩を上げて、「心配なのだったら一つ約束する、今度、うきぎの為にクッキー焼いてやるミュン!約束ミュン、私は絶対に約束は守るミュン」
調子に乗ってきたミュウは更に言葉をかさねる。
「お兄ちゃん……歩は私の事を家族だって言ってくれたミュン。私を妹と言ってくれたミュン。だから家族を……たった一人の兄を取り戻すミュン、ここで恩を売ってあわよくば婚姻届に無条件で判を押させるミュン……はっ、近親相姦ミュン❤」
ぽっと耳まで真っ赤になったミュウに、一人身体を抱くようにギュッと力を込めて心配の眼差しを送っていた雪野は「私がうってあげるから……一回死になさい……」と小声で言うと瞳がジト目に変わる。
「ふふふっっ♪」
「ハハハッッッ♪」
至高の笑顔を作り出すミュウとお姉ちゃん顔をする雪野はお互いの顔を見合わせて笑い始めた。
わかり合えた事でミュウはほっと胸をなでおろし、静かに針先を腕に当てた。
プスっ――針は透き通るように白い肌をうがり押し出された液体はミュンの白い腕から浮き出る血管へドクドクしく浸食していく。
ドクン……心拍が弱くなっていく……心ごと呑みこまれるように……突然、意識が深い闇へて迷い込み、身体中の回路が急激に遮断され膝元からがっくりと崩れ落ちる。
駆け寄ってきた雪野の声ももう届かないほど神経回路も遮断されていた。
ただ……倒れこむミュウとは裏腹にミュウの意志は前例がないほどに激しく輝いていた……歩お兄ちゃんを再び取り戻す為に。




