大好きなアナタの心に届け
皆さま、はじめまして。かきくけ虎龍といいまするーっ。
色々な大賞に送っていますか゜どこも二次選考どまり。
なので皆さまの心の清涼剤になればとアップしました。
少し、昔の作品ですが楽しんでもらえれば僥倖です。
でわでわぁー。
すらっと引き締った脚線美から強いストライドがうみだされる。砂塵が飛び交う大地を蹴り上げて、砂埃舞いちり、波紋が乱れる水面に立ち止まった。
その額から流れ落ちる汗と血――端正な相貌で空を見上げる妙齢の女性の呼吸は荒く時折、体内から込み上げるように吐血をしている――だが、大切に抱きかかえる赤子を見る瞬間だけは慈愛に満ち溢れた微笑みが伺えた。
口元の血を拭い、妙齢の女性は深く息を整えると黒い瞳で再び空を見上げた。
瞳の先には果てしなく続く金色の光。
その輝きは空を覆いつくす金色の翼だった。
蠢く躍動感溢れる天使達の羽ばたく翼が大空を一寸の隙もないほど埋め尽し、艶やかな色彩を見せる。そして本来の青を覆い隠す。
――やはり、逃げきれない
妙齢の女性は苦虫を噛んだように眉をひそめて苦渋の色を浮かべた。
何万もの天使の視線は獲物を狙いすましたジャッカルのように女性を捉える。
圧倒的なプレッシャーや威圧感を多大に含んだ、眼力が鋭く射抜くように焦点をあわせている。
それは前置きもなしに隊列を乱す事無く突然、采は投げられた。。
空を覆う大天使団から放たれた百万本の光の矢。
それは力を纏い大気を切り裂き、泣き叫ぶ赤子を庇うように大切に小脇に抱えた女性に放たれた。
満身創痍の深手を負っている女性へと光の矢は流星の如く降り注いだ。
――神よ……全ての真理を司る唯一神よ
右手を掲げた女性が、深紅の槍を天に向いかざす、百万本の降り注ぐ矢は重力が反転したように空に舞いあがり天使の一団に襲いかかる。
混乱が起きていた――たった一人の女性を相手に天使達は戸惑いと恐怖の色を滲みだしていた。
――この子だけは、リリスの元へ
金色の太陽と乾いた砂漠が意匠の技で刺繍が施されたロープを翻し、天使の一団に向い、天使の歌声を凌駕する美しい声……その声を高らかに咆哮する!
振りかざされた深紅の槍は戦場に咲く一輪の真っ赤な薔薇のように孤高で神秘的な雰囲気を醸し出す――その神力に天使達は本能で感じ取るように道を開けようとする。最後の力を振り絞り女性は一点突破を図ろうとした刹那。
透き通った鈴の音がチャリン――と響いた。
湖面に広がる静かな波紋のように天使達にその音色が広がっていく。
そして、今までとは段違いの天使力が穿っていく空間から湧き出る様に現れる。
空を覆う天使と女性の間に凄まじい光質が噴きあげると、女性の汗腺からドっと脂汗が流れる、女性の視線の先には優雅に舞い六枚の翼と四つの顔が上級クラスの威厳を称える一体の天使が現れた。
「天の暁の明星とよばれし女神アスタルテよ」
空を切り裂く六枚の翼と四つの顔、四枚の翼で顔と足を隠し、二枚の翼で飛翔するセラフは光をおびた剣を振りかざしアスタルテと対峙する。
大気は震え、空を覆い尽くしていた大天使団は二人の戦いを静観するように沈黙していく。
アスタルテの漆黒を宿す黒い瞳には決意の想いが色が色濃く表れている。
「幾億の輝きが立ち憚ろうとも、我は罷り通る」
深紅の槍を天に掲げ、脇に大切に子を抱え、女神アスタルテは冷厳にセラフを一瞥するとその強大な力を包み隠さず、空を埋め尽くす大天使団に雄たけびと共に光の矢と化して襲いかかった。
――この子だけは……この子は私の映し身となる存在……たとえ命尽きようとも守ってみせる……だから笑って、どんなに苦しくても笑って……リリスの最後の子供……リリン
その夜、天を引き裂いた光は流れ星となって地上に舞いおりていった。
流れ星に願いを託す、地上界の人間達が住む世界へ。
空が突然暗くなる、その怪しげな宵闇はピクリっと心を震わせる。
人間達の住む世界へ――貴方の――住む世界へ――
◆
「パパぁぁぁ――」
お空に燦然と輝くお天道様もビックリするほどの、『にぱっぁぁ』とした純粋無垢な笑顔が胸をキュンとさせる美少女……いや、美幼女が俺のヒラヒラしているセーラー服のスカートの端をぎゅっと握りしめている。
『クリっっ☆』とした、みる者を虜にしてしまう大きな黒い瞳を興味津津にキョロキョロさせて、愛らしいおかっぱ頭で白い小袖姿の美幼女はテンションを上げて物珍しそうに喧騒した街並みを凝視して眺めている。
「良く聞くのだよ、琴音?村長に聞いたんだが、都会には沢山のしきたりがあるらしい」
「うん☆」
無邪気で可愛いお返事――さすが、我が愛しのハニ―。
「まずは都会ではお互いが抱きついてキスをしたら結婚しないといけない、厳しいルールがあるらしい」
にっこり微笑んでいる琴音に目線にあうように身体を屈めて、人差し指を唇に当てながら、しっかり注意を促す。
「じゃ、ことねはパパぁぁぁ☆と結婚するのぉぉぉ」
俺かなり相好崩れた――愛情たっぷり愛らしい琴音の髪に手を置いて撫でる……うっとりしながら琴音は頭を突き出してもって愛でろと催促してくる。
うぅぅぅ、琴音ぇぇ――先日、琴音は四百歳になったって言っていたけど愛に歳の差なんて障害にならないからねっ――と心の中心で愛を叫び、俺はかがんだ姿勢でぎゅっと琴音を抱き寄せた。
もしや、その光景を見てだろうか――衆人環視のカテゴリー男達の視線があちらこちらから俺達に注がれている。
とても気のせいとは思えないほどの熱いレベルだ。
そういえば……新幹線から在来線への通路や駅のホームに降りた時もそうだったが、やたらにカテゴリー男に属するやからがこちらを見てくる――田舎者だって俺の事を馬鹿にしている……様子でもない気がする……正直、うっとうしいがあまり意識しないように心がけた、都会からの挑戦状……もしや、これも『しきたり』なのかも?
今、俺と琴音がいる場所に着いてから、やたらと皇帝ペンギンのようなファッション(恐らく都会でははやっている服なのだろうか?……)とヘンテコなアクセサリーをつけた奇妙な男達が「ねぇ、今、暇?」や「俺と一緒に遊ぼう」「芸能界に興味ない?」などと声をかけてくる。
俺のハニ―(琴音)を狙ってきているのか!と思いにムッとして腕を組み威嚇しながら睨みつけたが更に軍隊ありのように寄ってくる男共……ただいま増殖中?
うむ……都会はМな男ばかりなのか?俺は黒いボンテージの女王様が持つと言う至宝!嗜虐至高趣味の持ち合わせはない。
遅ればせながらだが、俺の名前は高坂歩。あれっ、そこのキミ、セーラー服着ているからって女性とは限らないぞ!そして、けして、子ぼんのうパパではない――未婚者で元々は孤児院出身です――運よく跡取りがいない東北の旧家に引き取られ、大変に峻厳な教育の末に最後の試練として高校の夏休みを活かして大都会にホームスティすることになった。
そして、先ほどから、俺のひらりっと舞うスカートの裾をギュッと握ってキラキラさせた瞳で売店に陳列している紙パックのジュースを指差し「パパぁぁぁ、ジュージュー」欲しい欲しいとおねだりモードに入っているマイハニ―の名前は琴音、俺が台所で穴掘っていたら発見した壺から出てきた座敷わらし……らしい。
らしいと……といったのは昨年までの俺の記憶が断片的にすっぽりなくなってしまっているからだ――
村医者の言い分は俗世間で言う所の記☆憶☆喪☆失☆と言ったところだ。
何故、俺の事を「パパぁぁぁ☆」と呼ぶかは分からんが恐らくインプリンティングでも起きたのだろうと割り切っている。
に、しても……都会は凄い――緑いっぱいの育った村では考えられない、ドワーフの地底王国だろうか?地下に街がある駅――せっかちな人達で溢れかえる歩道、こ、これが大都会って奴なのか――こりゃ、うちの田んぼのオタマジャクシより多いぞ――などと少し感心。
たしか、待ち合わせ場所は駅前の大きな公園の中にある、今は懐かしい二宮金次郎の銅像の横、沢山のハトがホーホーと『餌くれ』と鳴いている大きな時計塔。
二人揃って無事到着はしたが――約束まで十分程度ある。
都会など、村に一台ある村長の家の白黒テレビでしか見たことのない不確定要素いっぱいの場所、もし都会の真ん中に険しい山があり、お腹を空かせて下りてきたイノシシなどと遭遇するのも恐ろしいので、村とかけ離れた文明の利器や珍しい物に興味深々の琴音をおちょくりながら静かに目立たずに待つことにした。
しかし、何故、この街の人間は俺達に視線を向ける――そんなに哀れに見えるのか!!――学生やサラリーマン達の変な感情が入り混じった視線が痛い――それになんだ、あの、男達のつぶやき声は――
「うぁぁぁぁ、マジ、可愛い」や「おおっ、あの子、超かわいい、お前いけよ」や「セーラー服を着た、て、天使だぁ」などと辺りがざわめいている、目がハートになっているおっさんもいる――怖いので俯いて無視をきめこむ。
「パパぁぁぁ☆、みかんジュージューおいちぃねぇ☆」
天真爛漫の琴音様☆俯いた俺を振り仰ぎ、パックのみかんジュースを両手で一生懸命もってストローをチュルチュル♪と力いっぱい吸い上げて恍惚度100%を全面に展開した満面の笑みを浮かべている?
ああっ、癒される――天涯孤独なこの都会で唯一、気が許せる仲間と心底思ってしまう、もう結婚しよう琴音?――駅を降りて十分たらず――もう、俺は都会の闇に精神が飲まれてしまったのか!!!などと懊悩していると。
「も、もしかして歩さんですか?」
都会の喧騒に咲く一輪の花のように俺の聴覚にたおやかな感じの女性の声が舞いこんでくる。
俺は重苦しい都会の闇に浸食された沈みがちの相貌をゆっくりとあげる。
そして、ふわりと空気が含んだスカートを翻して振り向くと、チェックパープルのワンピースに茶色っぽいベルトがポイント、ほわんっとした白のカーディガンに紺のベレー帽をお洒落に着こなした、可愛さ偏差値があれば一流大学間違いなしの美少女がニコリと微笑みながらも少し戸惑ったように俺達に声をかけた。
「はい、えっと、雪野うさぎさんですか?」
とっさに待ち合わせの相手の名前を呼んでみるとこくりと頷いてくれた。
おおっ、マーベラス?ついに友軍が来てくれた――都会の孤独は終焉を告げた――少し安堵の気持ちが心の中で弾けてしまい、俺は両手を胸元であわせて、ウルルンっと小動物のように瞳いっぱいに涙を溜めている。
そうだ!これからホームスティ先でお世話になるであろう、大切な人に粗相があってはいけない!
全力であいさつせねば!
俺は腕を後ろにまわして瞳を潤ませながら満面の笑みを浮かべた――そう……浮かべた途端、いつもの事なのだが……こちらに視線を向けていた男達が昇天したようにバタバタと倒れていく――な、何なんだ、いきなり……エロチックなビキニを着た死神の脳殺に負けて魂でもとられたのか?都会と言う場所は恐ろしい。
「あはは……歩さん、男性と聞いていたので探すのに手間取っちゃいました」
てへへっと微苦笑を浮かべた雪野は頬にキュートに指を当てて、軽く舌をだしす。そして、胸の前で両手を手を合わせて「ごめんね――」と可愛い仕草をする。
???……男性と聞いていた――というか俺、どっから見ても男――霊長類で雄に属しています――股にもしっかりとご立派についています――などと思考の片隅で葛藤している。
まぁ、都会の『しきたり』だろう。仕方がない、郷に入れば郷にしたがえ……だったかな?出来るだけ相手にあわせなければ。
とりあえず、「これからお世話になります、ふつつか者ですがよろしくお願いします」と言葉を紡ぐと感謝の心で破顔一笑――光彩陸離よろしく!と現在演出できる最高品質破顔――を全力でおこなう。都会の男にはオーバーキルなみに威力があるだろうか人だかりの山ができ、衆人環視していた男達のほぼすべてがその場で卒倒して躯になっている。
そして、雪野さんも驚いたように頬が紅潮している、マイ・スマイル♪笑顔って強いなぁと感心。
まぁ、なんにしても、都会と言う砂漠のような広大な世界で無事に雪野さんに逢うと重要かつ、重大な第一のミッションをやり遂げた満足感が俺の心を潤してくれている。
「おねたん♪あたち、ことねだよぉぉ☆」ジュースの紙パックをバスケットボールの選手のようにダンクシュートを駆使してゴミ箱にすてて、クルリと踵を返すと『トトトっ』と勢いよく突っ伏せるように琴音は雪野の脚に絡みついた。
「琴音ちゃゃゃん、かわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ♪」
琴音のきめ細やかで柔らかそうな黒髪をよしよしとしなやかな指でさらつかせて、愛玩動物のように愛でる雪野うさぎ。
マ、マイハニ―よ……俺にもプリーズと心で叫び、ついついジト目で雪野さんを見てしまった。
琴音も雪野さんを気にいったようだ?安心。
「では、行きましょう!」快活な雪野うさぎの透き通るような声音。俺のマイ・スイ―ト・ハニ―琴音ほどではないが、とても魅力的に感じる。
あれ――雪野さんが指を一度鳴らしての視線が上空にむいたぞ――これも都会のしきたり?などと思考を巡らせた刹那……俺は突然現れた黒服の集団に、はがいじめされて首元にチクリと注射針の痛みが走った。
「ぱぱぁぁぁ――」
意識が遠のく中――琴音の叫び声とヘリコプターのプロペラの音が意識の彼方から遠くに聞こえた……
楽しんでいただけましたでしょうか(☆∀☆)
私の拙い作品を最後までお付き合いいただきありがとうございます。
この作品は私の処女作になります。
少しだけ思い出深く、パソコンの片隅で眠らせておくことが寂しかったので投稿することにしました。
楽しんでいただけましたら嬉しいです。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。