花-Flower-
目覚めると一面のお花畑だった。
ーここは、夢?
白い花は答える。
「夢であって、現実。曖昧なところ」
なんだか居心地がよくて
風も吹いていなくて、私は辺りを見渡す。
ー雑草も生えてる。
黄色い花は答える。
「そうよ、雑草だけど、ちょっと違うの。」
私は息を吸って、吐いて。
深呼吸をして、雑草に手を伸ばして。
引きちぎった。
ただ、花だけにしたくて。
ー花だけにしたくて。
赤い花は答える。
「嫉妬の為の、無実の犠牲ね?ありがとう」
ずっと、自分を囲んで話している花たち。
色とりどりの花たち。
可愛くて、綺麗で、愛しくて。
雑草だけは。
ー雑草だけは。
青い花は答える。
「雑草も一生懸命、生きていたのに?」
その時何かが変わった気がした。
あたりに散らばった。
雑草だった、生きていたものたちを
拾い上げて私は土へ還して。
花に言う。
ー弔いの唄を。
黒い花は言う。
「残念だけど、此処に風はないから。」
目を閉じて、そっと。
手をかざして。
嫌いな、私の嫌いな太陽に手をかざして。
風がないなら、私が風に。
ー私が風に。
瑠璃色の花は言う。
「器用で、不器用。一つ得ては、失う。」
花は、素直だ。
そう言って、私は太陽を手で覆って。
空から太陽を隠して。
ー風に。月を。
灰色の花は言う。
「夜だ、酸素がなくなるよ。君、危ない」
最後の酸素を吸って。
私は、唄う。
弔いの唄を。
自分の為だけに犠牲にした。
雑草のために。
花たちは一斉に、光合成をやめる。
酸素はなくなる。
花だけの世界。
ー私も花なら、ここで生きていけた。
虹色の花は言う。
「貴女も花でしょう?よく、見てごらん」
自分の姿を見つめ直して。
溜息をついて。
そばにあった、ハサミを手にして。
この世界に一つ、一本、一人だけ。
咲いていた。
紫色の花を
根っこから抜いて。
細かく、切り刻んで、土へ還すこともなく
私は意識を手放した。
「さようなら、また来てね」
「彼女は来ないよ、きっと」
「さあ?どうだろうね?」
「どうだろう、わからないね、わからない」
「でも彼女は結局花だからーーれーまで。」
「そうだね、ーーーるまでは逃げられない」
ーそんな、花たちの声も知らずに。